心電図
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7 巻, 1 号
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  • ―心疾患合併の有無による差異―
    太田 壽城, 水野 嘉子, 小川 昭二, 横井 正史, 魚住 善一郎, 岡本 登, 岩塚 徹
    1987 年 7 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 1987/01/31
    公開日: 2010/12/10
    ジャーナル フリー
    器質的心疾患を伴わない心室頻拍22例と器質的心疾患を伴う心室頻拍31例のホルター心電図所見を比較検討した.
    年齢, 性, prematurity index, vulnerability index, 心室頻拍の頻度, 心室頻拍の連発数については両群間で差がなかった.
    しかし, 疾患群では非疾患群に比し, 右脚ブロックパターンや多源性のQRS波形が有意に (P<0.05) が多く, 心室頻拍のR-R間隔のバラツキが有意に (P<0.05) 大きかった.
    平均2.1年 (2ヶ月~8年間) の経過観察において, 心室頻拍によると考えられた突然死の症例は肥大型心筋症を有する1例のみであった.
  • 坂口 泰弘, 小西 登, 日浅 義雄, 村田 吉郎, 籠島 忠, 石川 兵衞, 寺柿 政和, 韋 晴明, 小林 清亮, 岡田 了三
    1987 年 7 巻 1 号 p. 7-15
    発行日: 1987/01/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    WPW心電図波形をもつ3剖検心の連続切片法による組織学的検討により, 全例に一本ずつ副束の存在を確認した.
    症例1は66歳, 男性で, B型WPW波形にQRS左軸偏位を合併した前, 側後壁梗塞を伴う高血圧性心肥大であり, 右心室前壁に斜めに走行するKent束一本を証明した.Δ波は副束の位置とよく相関したが, 左軸偏位は左脚前放線支配域での虚血との関連が推測された.
    症例2は17歳, 女性でB型WPW波形を示すEbstein奇形であり, 右心室後側壁にKent束一本がみられた.Δ波の形は副束の位置で理解されるが, QRS波形は異常高位をとる調節東経由の逆行性右脚伝導による修飾が考えられた.
    症例3は68歳, 男性でA・B中間型WPW波型に一過性に左軸偏位と不完全右脚ブロック型のQRS波形を示す高血圧および心筋炎による肥大心で, 中隔右側後方にKent東一本が発見された.中隔右側の早期興奮波が, 中隔の左側の左脚後放線を右側よりも早く興奮させると一過性にQRS波形が変わる可能性が示唆された.
  • 安保 泰宏, 渡辺 佳彦, 中野 博, 高亀 良治, 三ツ口 文寛, 永井 弘, 金子 堅三, 宮城 裕, 野村 雅則, 水野 康
    1987 年 7 巻 1 号 p. 17-27
    発行日: 1987/01/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    急性後下壁心筋梗塞に合併する右室梗塞の診断につき, 体表面電位図の有用性を検討した.対象は急性後下壁梗塞に右室梗塞を合併した18例 (右室合併群) と後下壁梗塞単独の28例 (下壁単独群) である.departure index〔 (症例の電位―正常群の平均電位) /正常群の標準偏差〕をもとにQRS, ST departure mapを作製し, QRSではdeparture indexが―1.5以下, STでは+1.5以上の占める面積をdeparture areaとした.QRSの検討で, 右室合併群のdeparture areaはQRS開始後20msec時で最大であり, 下壁単独群に比し有意 (p<0.001) に大きかった.両群は20msec時の左前胸部下方のdeparture areaの有無とその広さで鑑別可能であった.STの検討では, V4Rに相当する右前胸部誘導のST上昇は右室合併群に特徴的であり, 両群のdeparture areaの出現領域にも差を認めた.departure mapは急性後下壁心筋梗塞に合併した右室梗塞の診断に臨床上有用な方法と考えられた.
  • 金沢 芳樹, 鈴木 文男, 沖重 薫, 池野 文昭, 平尾 見三, 久保 一郎, 比江嶋 一昌
    1987 年 7 巻 1 号 p. 29-40
    発行日: 1987/01/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    基本刺激として, 心房・心室同時刺激を用いた心房期外刺激 (AE-AVSP) 法が房室伝導に与える影響および心室期外刺激 (VE-AVSP) 法が室房伝導に与える影響につき, それぞれ通常の心房期外刺激法および心室期外刺激法による場合と比較検討した.
    結果: (1) 房室伝導: AE-AVSP法により, His-Purkinje系 (HPS) 伝導正常の9例および軽度のHPS伝導障害の4例の計13例全例で房室結節の伝導改善をみた.より高度のHPS伝導障害を有する他の4例では, ほとんどそれがみられず, 房室結節伝導時間の改善度は前者が後者に比し有意に大であった. (2) 室房伝導: VE-AVSP法により, HPS伝導正常の5例および軽度のHPS伝導障害の4例の計9例中8例で, 室房伝導の改善をみた.より高度のHPS伝導障害を有する他の2例でも室房伝導の改善をみたが, その程度は軽度であった.
    以上の結果は, 房室結節不応期のpeeling back現象により説明可能であると考えられた.
  • 中沢 潔
    1987 年 7 巻 1 号 p. 41-48
    発行日: 1987/01/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    ホルター心電図や心電図モニタには, 単極胸部誘導類似双極胸部誘導が用いられる.しかし, この記録は, 単極誘導と波形, 電位が異なり, 時に, 単極誘導に見られないST偏位が記録され, 臨床診断を困難とする場合がある.著者はこの原因が, 双極誘導の不関電極電位の影響であることを明らかにした.次に, 単極誘導と近似した双極誘導を得るために, 中心電極とほぼ等電位の点を体表上に求め, V7R付近にそれを見出した.その部位の電位を平均化して, 一層低電位とし, さらに安定化するため, 導電性の大型電極を貼付した.これを不関電極とする双極誘導は, 健常者のみならず, 諸種の心, 呼吸器疾患患者においても, 単極誘導と極めて近似した心電図記録を得ることが出来た.これを, 仮に, eV誘導と名付けた.
  • 高瀬 凡平, 栗田 明, 里村 公生, 荒川 宏, 中村 治雄, 水野 杏一
    1987 年 7 巻 1 号 p. 49-55
    発行日: 1987/01/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    当院第1内科にてトレッドミル運動負荷テストを施行した1753例よりWiensらに従いchronotropic incompetence (CI) 群24例を選び出し, この群と年齢, 性がマッチし, 心拍数が運動によって正常に増加するnormal response (NR) 群28例の計52例を対象とし, トレッドミル運動負荷テストとほぼ1週間以内にHolter DCG及び, 約1カ月以内に冠動脈造影を施行し, CI例の日常生活における心拍数の変動, 心室性期外収縮の重症度や冠危険因子, 冠動脈の狭窄度につき分析した.その結果, CI群は運動負荷時のみならず日常生活においても活動時の心拍数の増加はNR群に比べ有意に緩徐であった.
    また, 心室性期外収縮の重症度には有意の差は認められなかったが, 冠動脈罹患頻度はCI群において高く, かつCI群で冠動脈造影所見で有意の狭窄を有しなかった症例の冠危険因子の合併率は高かった.
    なお, プロプラノロールと硫酸アトロピンを用いて調べたCI群のintrinsic heart rateは, 同年代の年齢別予測心拍数に比べ有意 (p<0.01) に低値であった.かかる症例の予後を明らかにするためにはprospectiveなより詳細な多施設問の研究が必要であると思われる.
  • ―陳旧性前壁中隔梗塞を用いて―
    石川 富久, 林 博史, 渡部 真司, 山田 芳司, 宮地 恭一, 矢部 誠太郎, 外畑 巌, 岩田 彰, 鈴村 宣夫
    1987 年 7 巻 1 号 p. 57-63
    発行日: 1987/01/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    健常成人120名 (正常群) のQRS期体表面電位図を用いてKarhunen-Loeve展開を行い, 基底ベクトルを求めた.これらの基底ベクトルに対する正常群の展開係数の時間的推移を同じ基底ベクトルを用いて計算した19名の前壁中隔梗塞症 (前壁梗塞群) のそれらと比較検討した.第一基底ベクトルは, 前後方向に向かう心起電力を示唆し, その展開係数は, 正常群ではQRS初期で正の高値を示したが, 前壁梗塞群では有意に減少した.第二基底ベクトルは, 右肩から左胸部下方へ向かう心起電力を示唆し, その展開係数は, 正常群ではQRS中期に正の高値を示したが, 前壁梗塞群では同時期に有意に減少した.
    基底ベクトルの電位分布パターンおよびQRS期におけるそれらの寄与の大きい時間帯より, 健常人から得られた第一基底ベクトルは心室中隔, 左室前壁, 第二基底ベクトルは左室前, 側壁の興奮と深く関係すると考えられた.これらの基底ベクトルの寄与度の経時的変化を見ることにより心筋病変の局所診断が可能なことが示唆された.
  • 齊藤 崇, 三浦 傅, 田村 芳一, 千葉 裕一, 湯浅 伸郎, 金澤 知博
    1987 年 7 巻 1 号 p. 65-78
    発行日: 1987/01/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    急性心筋虚血時における心電図R波変動の成因について, イヌを用い, 局所心筋機能, 細胞外K濃度, 心筋組織ガス分圧およびpHの変動より多面的に検討した.左冠動脈前下行枝4分間閉塞時, 虚血部心表面心電図R波は一過性減高の後増高に転じる2相性変化を示した.この2相性のR波変動は, 心筋内伝導時間 (IMC) の2相性変動に一致をみることより, 急性心筋虚血時R波変動にIMCが強く関与することが示された.R波減高相に一致するIMC短縮相は, 虚血部局所心筋長の急激な延長相に一致し, このとき細胞外K濃度の上昇は明らかでないことから, IMC短縮は虚血時左室壁異常運動に伴う急激な壁伸展菲薄化が主因を成すと考えられた.一方, R波増高相は, IMC延長相に一致したが, このとき細胞外K濃度は有意の上昇を示し, K濃度上昇による心筋内伝導速度低下, 細胞膜内外のK-gradientの低下がIMC延長を介してR波増高を生じると結論される.
  • 石川 欽司, 金政 健, 大里 修一郎, 大貝 俊弘, 小田 明夫, 小川 巌, 清水 稔, 香取 瞭
    1987 年 7 巻 1 号 p. 79-88
    発行日: 1987/01/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    心筋虚血でST上昇, 下降に区分される機序を対側冠動脈病変の有無から検討した.雑種犬35頭で左冠動脈前下行枝 (LAD) を灌流し, この流量を平均18.4±1.8から5.3±1.4ml/minまで減らしたとき, 心表面心電図111個中109個ではST上昇, 2個でST下降が起った (実験A) .このとき左廻旋枝 (LCX) には虚血部へ血流供給をしたと考えられる代1賞性血流増大があった.LCXにcritical stenosisを作った後でLAD流量を15.5±1.5から6.2±1.2ml/minへ低下させたとき, 111個中11個にST下降がみられるようになった.この際, 大動脈圧とLCX流量は低下し, globa lischemiaが生じた (実験B) .実験Cでは, LADとLCX間の血流供給を遮断する目的で自由壁を絹糸で縫合した後に, LAD流量を漸減すると, 90個中48個にST下降がみられた.Aでは大幅な血流低下で初めて貫壁性虚血, ST上昇となり, 対側から副血行のないB, Cではわずかの血流低下で心内膜下虚血が起り, ST下降がみられ易くなったと考えられた.
  • 三羽 邦久, 久保 茂, 門田 和紀, 神原 啓文, 河合 忠一
    1987 年 7 巻 1 号 p. 89-97
    発行日: 1987/01/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    症例は53歳, 男性, 高血圧の既往がある.自然発作中の心電図変化は, II, III, aVFでST上昇, また, 発作によってはII, III, aVF及びV4-6でのST下降がみられた.心臓カテーテル検査中, 冠動脈造影前に胸痛発作がおこった。心電図にはII, III, aVFとV1-4で同時にST上昇がみられ, I, aVF, V6ではST下降がみられた.この間, V2でR波の消失, II, III, aVF, V3, 4でR波減高, V1-3でのT波の陰転, 電気的交互脈, short run, R on T現象, 多源性心室性期外収縮など, 種々の不整脈が観察された.発作はニトログリセリン2錠の舌下により寛解し, 発作後の冠動脈造影では正常冠動脈を呈した.この発作中, 経時的にベクトル心電図が記録され, QRS環後半部は前下方へ圧排され, open QRSを作り, STベクトルは前下方へ向かいダラダラとT環に移行するという特徴的な虚血性変化が認められた.多枝同時攣縮例は珍しく, また, 重篤な合併症を伴いやすく注意を要する.
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