心電図
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42 巻, 4 号
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Editorial
総説
  • 外山 淳治, 辻 幸臣, 李 鍾國, 渡邉 英一, 鈴木 頼快, 鈴木 孝彦
    2022 年 42 巻 4 号 p. 203-211
    発行日: 2022/12/23
    公開日: 2022/12/24
    ジャーナル フリー

    健常心電図左側胸部誘導のQRSとT波は,ともに上向き同方向性を示す.このうちQRSの波形は,心筋細胞間を伝播する興奮電流によるが,これに反してT波のそれは,伝播性ではない心室局所の再分極により支配される.この再分極の成因となる主なイオン電流系は,Kチャネルだけでも9種類あることに加え,個々のチャネルの詳細な役割が十分に解明されていないため,T波については経験論的な積み重ねによる病態の把握に留まっている.本総説においては,薬剤性QT延長,cardiac memoryや心不全などの現象・病態における心室再分極過程の変化について,チャネルの生成・分解のサイクルと心筋細胞膜上でのチャネル密度の動的平衡の観点から考察を行った.短いライフサイクルでのチャネルの動的制御機構とその破綻に至るメカニズムの探求が,心電学研究の新たな展開をもたらし,その成果として,心臓病態の解明へとつながることが期待される.

症例
  • 伴田 峻吾, 藤林 幸輔, 小坂 彩華, 高間 俊輔, 中川 透, 藤岡 央, 梶波 康二
    2022 年 42 巻 4 号 p. 212-217
    発行日: 2022/12/23
    公開日: 2022/12/24
    ジャーナル フリー

    植込み型除細動器とリードの組み合わせにより,同一リードを用いてもペーシングのリードインピーダンスが異なる場合がある.また,ショックリードの状態把握について,微小電流を用いたパルス放電によるインピーダンスを用いる機種や,コイルと心室先端電極を含めたリードの導通テストを用いる機種があり,デバイス製造各社で統一されていないのが現状である.症例は,高インピーダンスリードを植込み型除細動器の初回植込み時より使用され,電池消耗のため2回の機種変更が行われた.使用された計3種類の植込み型除細動器間ではリードチェックの導通経路がそれぞれ異なり,測定値に違いを認めた.ペーシングリードのインピーダンス高値からリード断線が疑われたが,機種変更にて同一リードを継続して使用可能であることが判明した症例を報告する.

  • 伊勢田 高寛, 花澤 康司, 末永 明啓, 小林 弘幸, 嶋 清志, 栗林 伴有, 豊福 守
    2022 年 42 巻 4 号 p. 218-225
    発行日: 2022/12/23
    公開日: 2022/12/24
    ジャーナル フリー

    心室頻拍のカテーテル治療中,手技中に頻拍が誘発されなかったり,循環動態が破綻すると心室頻拍の起源の同定が困難なことはよく経験される.そこで,術前に心臓MRIにおけるガドリニウム遅延造影(late gadolinium enhancement:LGE)や心臓CTにおけるヨード遅延造影(late iodine enhancement:LIE)を行い,心筋瘢痕巣を同定することで心室頻拍の起源を推定する方法が報告されている.しかし,LGEが頻拍起源の同定に有用なものの,スライス厚が大きく撮像に時間がかかり,デバイスが挿入された状態や撮像中に期外収縮が発生すると良質な画像が得られないという問題点がある.一方でLIEも解像度が悪く,鮮明な画像を撮ることが困難であった.この症例報告では,320列Area Detector CTを用いてSubtraction Myocardial Image for Late Iodine Enhancement(SMILIE)という新しい画像処理方法を行うことで心室頻拍の起源を術前に推定し,カテーテルアブレーション時に有用であった症例を報告する.

Communication
  • 押方 翼, 湯澤 ひとみ, 安里 奈美樹, 山口 康太, 中村 友美, 髙橋 智宏, 石井 和行, 田邉 健吾, 池田 隆徳
    2022 年 42 巻 4 号 p. 226-232
    発行日: 2022/12/23
    公開日: 2022/12/24
    ジャーナル フリー

    不整脈におけるカテーテルアブレーション(CA)の症例数は全国的に増加してきており,CA業務に携わる医療従事者には高い知識と技術が求められる.当院のCA業務における教育体制はメンター制度を用いており,経験症例30症例で心房細動業務を単独で遂行することを初期研修の目標にしている.しかし,当院における教育体制の問題点として,安全で適切に業務を遂行できる力量があるかの判断基準が曖昧であることや,限られた期間内で指導し育成するのが困難であることなどが挙げられていた.そこで,業務マニュアルの再整備や考課制度の構築,研修カリキュラムの明文化を行い,振り返りシートを活用することにより,初期研修の目標を達成させることが可能になった.今後も知識力の向上と幅広い技術力を身に付けるため,この教育体制を拡充させ,不整脈診療を支えるチームの一員として,今後もさらなる発展を目指し,良質な医療を提供していきたい.

連載 不整脈学研究ノススメ
  • 近藤 秀和
    2022 年 42 巻 4 号 p. 233-236
    発行日: 2022/12/23
    公開日: 2022/12/24
    ジャーナル フリー

    4回目となる本稿では,現在筆者が若手とともに推し進めているトランスレーショナル研究の一端を紹介する.当講座では,心臓血管外科と協力し県内多施設のコホート研究を実施しており,臨床での疑問点に対して,多数の臨床検体を用いて基礎的に検証している.基礎的研究から得られた結果が,真に臨床症例のその後のアウトカムと関係があるかの追跡調査も行っており,非常に興味深い研究が多数遂行中である.コホートを利用したトランスレーショナル研究の取り組みやすさについて述べる.

連載 今さら聞けない心電図波形塾
  • 高安 幸太郎, 井上 耕一
    2022 年 42 巻 4 号 p. 237-240
    発行日: 2022/12/23
    公開日: 2022/12/24
    ジャーナル フリー

    QRS波形は心室の心筋の脱分極の総和により形成されるが,その振幅の増高・減高は心電図でも重要な所見の一つである.振幅は,①心起電力の大きさの異常,②心臓周囲組織の導体としての伝導率の異常,③Internal cancellation効果(極性が反対の電位同士が打ち消し合って電位が低く記録される現象)の減弱,などで変化する.振幅が増高する疾患としては心肥大が最も多く,不良な予後と関連するため,振幅の増高・減高は臨床上も重要である.ほかにも,後壁心筋梗塞や脚ブロック,顕性WPW症候群などでQRS波が増高しうる.減高に関しては疾患特異性が低いが,その他の随伴する心電図異常である程度の診断は可能である.振幅の異常は特異度が高く,見逃しがないように注意したい.

学会レポート
臨床心電図解析の実際―どこをどうみるか―
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