心電図
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31 巻, 5 号
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Editorial
原著
  • 祖父江 嘉洋, 渡邉 英一, 山本 真由美, 佐野 幹, 針谷 浩人, 奥田 健太郎, 尾崎 行男
    2011 年 31 巻 5 号 p. 459-466
    発行日: 2011年
    公開日: 2015/06/10
    ジャーナル フリー
    心室内伝導障害を伴う左心機能低下例では,両室ペーシングによる心臓再同期療法(CRT)を行うと予後が改善する.しかし,心房細動(AF)では労作や心不全の悪化などにより心室応答が速くなると心室ペーシング率が低くなるため,洞調律に比べて効果が低い可能性がある.本研究ではCRT施行例を洞調律およびAFの2群に分けて,心エコー図指標の変化と予後を比較した.対象は両室ペースメーカ植込み基準を満たした38例(年齢61±11歳,洞調律24例,AF14例)である.両室ペーシング率は2群とも95%以上であり有意差はなかった(p=0.84).AFで房室結節アブレーションを必要とした症例はなかった.CRT施行前に比べて施行6ヵ月後の左室収縮末期容積は両群とも有意に減少し(洞調律 −16±39ml,AF−26±38ml),その減少量は両室ペーシング率と有意な相関を認めた(r =−0.42, p<0.01, n=38).心不全による入院と心臓死をエンドポイントとし,平均25ヵ月の観察を行ったが,2群間でエンドポイント発生率に差はなかった(洞調律10例,AF7例, log-rank検定p=0.87).心不全に合併したAFではレートコントロール薬によって心室応答を調整し,高い心室ペーシング率を維持することで洞調律と同様のCRT臨床効果が得られる可能性が示唆された.
症例
  • 佐々木 健吾, 森 俊平, 菅野 博童, 鈴木 智博, 千葉 健, 門馬 竜一郎, 尾越 登, 筬井 宣任, 金子 海彦, 滝澤 要, 井上 ...
    2011 年 31 巻 5 号 p. 467-475
    発行日: 2011年
    公開日: 2015/06/10
    ジャーナル フリー
     植込み型除細動器留置症例において,T波オーバーセンシングはR波とのダブルカウントの原因となる.この事象は,ときに不適切作動によるショック通電の誘因となることが報告されている.また,心室再同期療法施行症例において,同じくT波オーバーセンシングが原因で両室ペーシング率が低下した症例も報告されている.症例は70歳,男性.拡張型心筋症に伴う慢性心不全に対し,両室ペーシング機能付き植込み型除細動器が留置された.留置3ヵ月後のデバイスチェックで不適切作動によるショック通電および両室ペーシング率の低下が認められた.心内心電図記録,ペーシングサマリーの解析により,T波オーバーセンシングが双方の原因であることが判明した.右室感度の調整では回避できず,周波数フィルターの調整により,T波オーバーセンシングは消失した.以後22ヵ月間,不適切作動によるショック通電,両室ペーシング率の低下および心不全入院なく経過している.
  • 安田 潮人, 古川 陽介, 仲村 尚崇, 深田 光敬, 小田代 敬太, 柳 統仁, 小池 明広, 丸山 徹, 赤司 浩一
    2011 年 31 巻 5 号 p. 476-484
    発行日: 2011年
    公開日: 2015/06/10
    ジャーナル フリー
    症例は34歳の男性.夜間に動悸を認めたため前医を受診し,心房細動(AF)と診断された.初回はピルジカイニドで除細動できたが,2回目の夜間心房細動はピルジカイニド投与後に心室細動(VF)へと移行したため電気的除細動を行った.VF直前には下方誘導(II,III,aVF)のST上昇と徐脈で顕在化する左胸部誘導(V3~V6)のJ波を認めた.当院転院後の諸検査からは器質的心疾患は否定的で,心室遅延電位は陽性であった.ピルジカイニド負荷試験(1mg/kg)の結果から下側壁誘導の早期再分極パターンを伴ったBrugada症候群と診断し,植込み型除細動器(ICD)の植込み術を行った.無投薬下ではICDが作動したためシロスタゾール(200mg)とベプリジル(100mg)の併用療法を行ったところ,以後ICDは作動していない.本例はBrugada症候群と早期再分極症候群の複雑な関係を考えるうえで貴重な症例と考えられた.
心電学マイルストーン
心電図講義
第19回頻拍症カンファランス
  • 有田 眞
    2011 年 31 巻 5 号 p. 523-533
    発行日: 2011年
    公開日: 2015/06/10
    ジャーナル フリー
    心房細動の原因として,肺静脈内の心筋から生じる局所放電が強くかかわっており,同部が高周波カテーテルアブレーション治療のよい対象であることはよく知られている.われわれは1960年代に,ウサギの大静脈,マウスの肺静脈には心房から伸びた心筋が進入していることを突きとめ,そこからの収縮や細胞内活動電位を記録している.興奮伝播ならびに組織学的検討の結果,これら静脈内に存在する心筋線維の自発放電(多くは撃発活動)が,頻拍性心房不整脈の原因となりうることを指摘した.
  • 井川 修, 新 博次
    2011 年 31 巻 5 号 p. 534-540
    発行日: 2011年
    公開日: 2015/06/10
    ジャーナル フリー
    心房細動(AF)の持続に伴う構造的リモデリングは,左房を中心とする構造的変化として認識される.肉眼的にみたこの構造的変化の主体は,左房のバルーニングであり,左房後下壁で最も顕著に認められる.とりわけ,その変化は左下肺静脈下部領域に著しく,AFの進展に伴い左房右側後下壁へ波及する.一方,構造的変化の改善(リバースリモデリング)が認められる場合もある.非弁膜症性永続性AFを有していた剖検症例における左房後下壁,とりわけ左下肺静脈下部領域の肉眼的構造的変化は,同部位のバルーニングと,光を透過させるほどの壁の菲薄化である(translucent area).その断面の組織像には壁厚の減少とともに,心筋厚の減少,間質の線維化,心筋細胞の萎縮,心筋細胞の断裂(不連続性),心筋層の単層化などが認められる.注目すべきは,その所見のなかに萎縮した心筋細胞機能を代償していると考えられる肥大した心筋細胞を認めることである.この萎縮と肥大の混在(モザイクパターン)の割合は症例ごとに異なり,萎縮・肥大の割合がリバースリモデリングを起こす可能性と相関し,肥大した心筋細胞優位の症例,つまり代償反応が豊かな症例はリバースリモデリングの可能性が大きいことが推測された.
  • 横山 勝章
    2011 年 31 巻 5 号 p. 541-548
    発行日: 2011年
    公開日: 2015/06/10
    ジャーナル フリー
    不整脈発症と自律神経に関する研究の歴史は長い.1920年ごろにはすでに,心臓自律神経の刺激による心房細動(AF)発症が確認されている.1990年代後半にAFが肺静脈起源の電気的興奮(PV firing)をトリガーとして発症することが明らかになり,以後臨床におけるAF治療が大きく発展を遂げた.その治療対象であるPV firingは,以前より自律神経活動との因果関係が実験的に証明されていた.特に心房心外膜側に局在する自律神経節がAF発症に深くかかわるとされ,今後新たな治療戦略のひとつとして注目を集めている.本稿では,内因性自律神経系,特に自律神経節のAF治療における重要性について述べる.
  • 本荘 晴朗
    2011 年 31 巻 5 号 p. 549-559
    発行日: 2011年
    公開日: 2015/06/10
    ジャーナル フリー
    心房細動(AF)の発生や維持には,心房におけるリエントリーとともに,肺静脈起源の巣状興奮が重要な役割を果たしている.肺静脈壁内には左心房から連続する心筋組織(myocardial sleeve)が存在しており,その線維走行は複雑で,局所の伝導遅延や途絶をもたらしてリエントリー発生の基質を形成する.また,肺静脈心筋は早期後脱分極(EAD)や遅延後脱分極(DAD)によるトリガードアクティビティも発生しやすい.迷走神経緊張に伴う活動電位の短縮に交感神経緊張に伴う細胞内Ca2+過負荷が加わると,late phase 3 EADタイプのトリガードアクティビティが発生する.DADをもたらす筋小胞体からのCa2+放出には,CaMK IIによる筋小胞体Ca2+放出チャネル(リアノジン受容体)の過リン酸化が関与している可能性が示唆されている.また,近年の遺伝子工学の技術を用いた発生学的研究により,左右非対称性シグナルを作り出すPitx2転写因子が肺静脈心筋の形成に重要な役割を果たすことが明らかにされた.Pitx2はGWASによる心房細動関連遺伝子の探索結果からも注目されている.
  • 熊谷 浩一郎
    2011 年 31 巻 5 号 p. 560-569
    発行日: 2011年
    公開日: 2015/06/10
    ジャーナル フリー
    肺静脈は,心房細動(AF)開始のトリガーとしてのみならず,AFの持続にも関与している.慢性AFに対し電気的除細動を行うと,ただちにAFが再発することがある.その際の再発部位もやはり肺静脈が圧倒的に多い.これはAF持続中にも肺静脈からの発火が反復的に,あるいは持続的に起こっていることを示唆する所見といえる.さらには,リエントリー機序も関与している可能性がある.しかし,ヒトで肺静脈のリエントリーを実証した報告はなかった.そこで,われわれはバスケットカテーテルを用いて,肺静脈の電気生理学的特質を検討した.また,肺静脈の興奮伝導パターンを解析するために,肺静脈のactivation mapを描出した.AF自然発生時のactivation mapでは,局所群発興奮が肺静脈—左房接合部で伝導ブロックをきたし,進出部位と進入部位を介する肺静脈—左房接合部リエントリーが形成されていた.肺静脈内でもリエントリー回路が形成されていたが,このリエントリーは数回転しか持続せず,不安定リエントリー回路であった.このように,肺静脈内と肺静脈—左房接合部は,不応期短縮や異方性伝導などの電気生理学的特質をもつため,リエントリー形成の基質となり,AF持続に強くかかわっていると考えられる.
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