心房細動(AF)の発生や維持には,心房におけるリエントリーとともに,肺静脈起源の巣状興奮が重要な役割を果たしている.肺静脈壁内には左心房から連続する心筋組織(myocardial sleeve)が存在しており,その線維走行は複雑で,局所の伝導遅延や途絶をもたらしてリエントリー発生の基質を形成する.また,肺静脈心筋は早期後脱分極(EAD)や遅延後脱分極(DAD)によるトリガードアクティビティも発生しやすい.迷走神経緊張に伴う活動電位の短縮に交感神経緊張に伴う細胞内Ca
2+過負荷が加わると,late phase 3 EADタイプのトリガードアクティビティが発生する.DADをもたらす筋小胞体からのCa
2+放出には,CaMK IIによる筋小胞体Ca
2+放出チャネル(リアノジン受容体)の過リン酸化が関与している可能性が示唆されている.また,近年の遺伝子工学の技術を用いた発生学的研究により,左右非対称性シグナルを作り出すPitx2転写因子が肺静脈心筋の形成に重要な役割を果たすことが明らかにされた.Pitx2はGWASによる心房細動関連遺伝子の探索結果からも注目されている.
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