心電図
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43 巻, 4 号
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Editorial
総説
  • 鈴木 啓資, 園田 桂子, 草野 研吾, 堀江 稔, 大野 聖子, 八木 哲夫
    2023 年 43 巻 4 号 p. 225-234
    発行日: 2023/12/22
    公開日: 2024/01/11
    ジャーナル フリー

    心室中隔欠損(VSD)は小児において頻度の高い先天性心疾患である.一方Brugada症候群(BrS)は心室細動や突然死を引き起こす遺伝性疾患で,中年に多く小児では稀である.日本人不整脈コホートでは20歳未満でBrSと診断された患者は36人おり,うち5人(14%)がVSDを合併していたため,われわれは彼らの臨床像や遺伝的背景を検討した.VSD合併BrS患者は,VSDのない群と比較すると早期にBrSと診断されていた(4.0±4.6 yrs vs 11.5±5.1 yrs,p=0.004).BrS患者36人中15人にSCN5A変異を同定したが,VSDを合併した5人は全員がSCN5A変異を有しており(R367S,R533*,R893C,W1345C,G1743R),すべて機能喪失型変異であった.VSD患者で右側胸部誘導のST上昇が認められる場合には,BrSを疑い遺伝子検査を含む適切なスクリーニング検査を行う必要がある.

  • 小松 雄樹
    2023 年 43 巻 4 号 p. 235-241
    発行日: 2023/12/22
    公開日: 2024/01/11
    ジャーナル フリー

    心筋梗塞後に反復性に生じる心室細動は,生命予後に悪影響を及ぼす致死性不整脈である.血行再建,抗不整脈薬,人工呼吸管理下での深鎮静や,循環補助装置挿入による全身管理等の様々な治療にもかかわらず,心室細動が抑制されない場合,カテーテルアブレーションが緊急避難治療となりうる.心筋梗塞後に発症する心室細動の多くは,虚血で障害された左室中隔のscar border zoneのPurkinje networkを起源としていることが確認された.心室細動が治療抵抗性の場合,できる限り早急に行うアブレーション治療が多くの症例で奏功したが,心室細動が抑制されない症例の多くは院内死亡に至った.急性期に心室細動が抑制され,生存退院できた場合,長期観察期間においては心室細動の再発は少ない一方,生命予後に関しては心臓血管死と非心臓血管死を同程度に認め,心不全やその他合併疾患の管理が重要であることが示された.

  • 柳下 大悟, 庄田 守男, 萩原 誠久
    2023 年 43 巻 4 号 p. 242-253
    発行日: 2023/12/22
    公開日: 2024/01/11
    ジャーナル フリー

    心臓再同期療法(CRT)には30~40%のノンレスポンダーが存在する.左室リード位置がその一因とされ,左室電気的興奮遅延部位への留置が推奨されるが,瘢痕組織による局所伝導障害によってCRT効果は減弱する.われわれは左室ペーシング刺激からQRSまでの時間(S-QRS)が局所瘢痕組織による電気的遷延を反映し,CRT効果の予測因子であることを報告した.本研究ではS-QRSがCRT患者の予後に関連するかを検証した.対象はガイドラインに準拠してCRT植込みを行った連続82症例(LVEF 26.7±6.3%,QRS幅158.7±31.0msec).先行研究に倣い,Short S-QRS群(SS-QRS;<37msec)とLong S-QRS群(LS-QRS;≧37msec)に分類した.一次エンドポイントは総死亡,二次エンドポイントを総死亡および心不全入院とした.両群間においてQRS幅やQ-LV時間に有意差はなく,S-QRSはSS-QRS群25.9±5.3msec,LS-QRS群51.5±13.7msecだった(p<0.01).平均44.5±21.1ヵ月の観察期間で総死亡は24名(29%),二次複合イベントは47名(57%)に発生した.いずれのエンドポイントもLS-QRS群で累積イベント発生率は有意に高く,S-QRS≧37msecは総死亡(ハザード比:2.6,p=0.03)および二次複合イベント(ハザード比:2.4,p<0.01)の独立予測因子だった.S-QRSはCRT患者の予後規定因子であり,適切な左室リード留置部位の有用な指標である.

原著
  • 木田 博太, 菊池 佳峰, 大谷 昇平, 青木 梨香子, 玉木 芹, 岡田 華奈, 佐藤 伸宏, 上野山 充, 川崎 真佐登, 渡部 徹也, ...
    2023 年 43 巻 4 号 p. 254-260
    発行日: 2023/12/22
    公開日: 2024/01/11
    ジャーナル フリー

    心臓植込み型電気デバイス(Cardiac Implantable Electronic Device:CIEDs)の遠隔モニタリングの導入件数は増加しているが,遠隔モニタリング実施後に何らかの理由で遠隔モニタリングを中止し,従来の外来観察に変更せざるを得ない,“遠隔モニタリング脱落”の現状に関する報告は認めない.本研究では,遠隔モニタリング脱落の現状を明らかにし,その予測因子を検討することを目的とした.対象は2018年1月から2021年9月までに当センターにて,CIEDs新規植込み,交換症例のうち,他院にてフォロー予定の症例,遠隔モニタリング導入済みの症例,遠隔モニタリングの導入を希望されなかった症例,主治医と担当技士にて遠隔モニタリングの導入維持が難しいと判断された症例を除外し,遠隔モニタリングを新規導入した336例〔年齢:77(70,82)歳,男性:52.7%,ペースメーカ:69.6%〕を後方視的に検討した.遠隔モニタリング開始後に何らかの理由で遠隔モニタリングを中止した症例を抽出し,遠隔モニタリング脱落の関連因子を検討した.336例のうち28例(8.3%)が遠隔モニタリングを中止した.理由として,電源・設置場所に起因した通信不良:11例(39.3%)が最も多かった.脱落群は継続群と比して,有意に高齢〔83(74,88)vs 76(70,81),p=0.001〕で,女性の割合が高く(71.4% vs 45.1%,p=0.013),交換症例の割合が高かった(46.4% vs 18.8%,p=0.001).多変量解析では,年齢(Odds比:1.04,95%信頼区間:1.00-1.09,p=0.044)と交換症例(Odds比:3.73,95%信頼区間:1.64-8.44,p=0.002)が脱落と独立した関連を認めた.遠隔モニタリング新規導入症例において8.3%で脱落を認め,その理由として電源・設置場所に起因した通信不良の頻度が最も高かった.高齢症例や交換症例は脱落のリスクが高いことが示唆された.

Communication
  • 佐藤 伸宏, 木田 博太, 谷 正司, 高垣 由佳, 菊池 佳峰, 上野山 充, 川崎 真佐登, 渡部 徹也, 島本 茂利, 山田 貴久
    2023 年 43 巻 4 号 p. 261-267
    発行日: 2023/12/22
    公開日: 2024/01/11
    ジャーナル フリー

    心臓植込み型電気デバイス装着患者に対する放射線治療によって装着デバイスの誤作動が発生する恐れがあり,日本放射線腫瘍学会と日本循環器学会にて対応ガイドラインが策定されている.われわれは,多職種(循環器内科医,放射線治療医,臨床工学技士,診療放射線技師,看護師)が横断的に関与し,さらにガイドラインをより簡潔にした『心臓植込み型電気デバイス装着患者に対する放射線治療対応プロトコル』を作成した.プロトコルの運用開始とともに放射線治療中の心電図モニターの異常と,デバイスに記録されたノイズ・リセットなどの不具合イベントを評価項目として,その安全性について評価した.2020年8月から2022年3月までに,対応プロトコルに基づいて放射線治療を実施した心臓植込み型電気デバイス装着患者13症例を対象とした.合計239回の放射線照射中に,いずれの症例も心電図モニターで機器の誤作動は認めず,照射後のテレメトリにおいても不具合イベントは検出されなかった.今回作成した心臓植込み型電気デバイス装着患者に対する放射線治療対応プロトコルは簡潔ながらも,その安全性が高いことが示唆された.

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