心電図
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38 巻, 4 号
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Editorial
総説
  • 加藤 武史, 八重樫 貴紀
    2018 年 38 巻 4 号 p. 257-268
    発行日: 2018/12/21
    公開日: 2019/02/08
    ジャーナル フリー

    心房細動における左房内血栓形成の機序として,左房内血流うっ滞,左房内皮障害,血液凝固能亢進の3要素(Virchowの三徴)が知られているが,血液凝固能亢進の機序は不明である.われわれは,凝固関連分子の主要産生臓器である肝臓がこれに関与しているとの仮説を立て検討した.まず,肝生検を行った非アルコール性脂肪性肝炎症例から心房細動例と洞調律例を抽出し,DNAマイクロアレイ法を用いて肝組織の遺伝子発現プロファイルを比較検討した.ヒトの心房細動群と洞調律群の間で肝臓における遺伝子発現プロファイルは有意に異なり,BioCartaで定義されている354のパスウェイのうち,外因系凝固経路が最も著明に変化していた.次に,SDラットにおいて高頻度心房ペーシングを行う心房細動疑似モデルを作成し,その肝臓・末梢血球・左房・脾臓における遺伝子発現を検討した.その結果,高頻度心房ペーシングラットの肝臓においてfibrinogen, prothrombin, 凝固第X因子, antithrombin Ⅲの発現が増加していた.高頻度心房刺激による肝臓のfibrinogen産生亢進機序の一部は,末梢血および肝臓内でのIL-6/STAT3経路の活性化を介していた.これらの知見は,心房細動とそれに関連する塞栓症の病態形成において,心肝連関が存在することを示唆する.(心電図,2018;38:257~268)

  • 山形 研一郎, 相庭 武司, 清水 渉
    2018 年 38 巻 4 号 p. 269-276
    発行日: 2018/12/21
    公開日: 2019/02/08
    ジャーナル フリー

    Brugada症候群(BrS)患者においてSCN5A変異は15~20%に同定されるが,変異の有無が予後に与える影響は十分に解明されていない.そこで当研究では,日本国内14の施設から集められたBrS発端者415例(男性403例,97%,平均年齢46±14歳)に対して,SCN5A変異の有無と臨床的特徴および心イベントとの関連を調べた.SCN5A変異陰性症例〔SCN5A(-), n = 355〕と比較してSCN5A変異陽性症例〔SCN5A(+), n = 60〕は初回失神年齢が若く(34歳 vs. 42 歳,p= 0.013),加算平均心電図で遅延電位(LP)陽性率が高く(89% vs. 73%,p= 0.016),心電図上P波幅,PQ間隔,QRS幅の延長が見られた.平均72ヵ月の経過観察期間中に,心イベントはSCN5A(+)群でより多く認められ(p= 0.017,log-rank),多変量解析でも心肺停止の既往とならびSCN5A変異を有することは,心イベントを予測する有意な因子であった(Hazard Ratio = 2.0, p= 0.045).以上の結果から,SCN5A遺伝子変異はBrS患者の重要な心イベントの予測因子となることが示された.(心電図,2018;38:269〜276)

症例
  • 佐々木 憲一, 櫛引 基, 舘山 俊太, 鈴木 晃子, 今田 篤, 藤野 安弘
    2018 年 38 巻 4 号 p. 277-285
    発行日: 2018/12/21
    公開日: 2019/02/08
    ジャーナル フリー

    症例は83歳女性.動悸時の心電図から発作性上室頻拍と診断されカテーテルアブレーション目的に当科に紹介された.心臓電気生理検査中に誘発された頻拍(頻拍周期:470msec)はslow-fast型房室結節リエントリ性頻拍(s/f AVNRT)に矛盾しない所見で,解剖学的および電位指標に基づき遅伝導路(SP)に対する高周波通電を行った.通電後,jump-upは消失し頻拍は誘発されなくなったが,イソプロテレノール(ISP)持続静注下(0.5µg/分)で心房頻回刺激を行うと,頻拍(TX)が誘発された.TXの心内波形はs/f AVNRTと酷似しているが,ISP負荷時のみに出現しており,房室接合部頻拍(JT)との鑑別を要した.心房期外収縮(PAC)に対するTXの反応を解析したところ,①ヒス束(H)の不応期に生じたPACにより頻拍周期は短縮した,②H不応期前に生じたPACによりTXは停止せず持続したという2点が判明した.①はs/f AVNRT,②はJTを示唆し矛盾する所見だが,②はPACに対する二重心室応答と考え,TXをs/f AVNRTと診断し,SP通電を継続した.最終的に,ISP負荷下でも頻拍は誘発不可能となった.術後3ヵ月を経過したが,再発は見られていない.(心電図,2018;38:277〜285)

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