心電図
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31 巻, 2 号
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Editorial
第27回日本心電学会学術集会 シンポジウムより 心房細動治療の“そもそも”:治療する目的は? そのための標的は?
  • ―傾聴と支援を主眼とする外来の実践を通して―
    小田倉 弘典
    2011 年31 巻2 号 p. 127-133
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/02
    ジャーナル フリー
    心房細動(AF)診療においては,患者の意向や感情を重視した意思決定が重要である.傾聴と支援を主眼とするAF外来が,意思決定において有用であったので報告する.対象は過去6年間の当院初診AF患者212例である.AF外来実施前の103例(非実施群)と後の109例(実施群)を比較した.AF外来は,患者の解釈モデルを聞き取るチェックシートと,ベネフィット,リスクを記載した補助的説明文書を用い,医師と看護師により約60分の予約制で実施した.両群間でAFの種類,年齢,死亡率,脳梗塞,大出血の発症率に有意差はなかった.小出血(非実施群14%,実施群5%),ワルファリン拒否(非実施群11.3%,実施群5.2%),カテーテルアブレーション拒否(非実施群70%,実施群30%)は非実施群が有意に多かった(p<0.05).レートコントロールへの移行(非実施群33%,実施群62%)は実施群で有意に多く,3ヵ月後のAF特異的QOL評価法3は実施群(51±8点)が非実施群(43±8点)より良好であった(p<0.05).患者の不安や疑問に対し傾聴し支援することが,意思決定に有用と考えられる.
  • 杉浦 伸也, 藤井 英太郎, 千賀 通晴, 土肥 薫, 中村 真潮, 宮原 眞敏, 伊藤 正明
    2011 年31 巻2 号 p. 134-139
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/02
    ジャーナル フリー
    【背景】AFFIRM試験やJ-RYHTHM試験などの大規模臨床試験の結果から,心房細動(AF)に対する薬物的リズムコントロールの限界が明らかとなった.そもそも抗不整脈薬には心機能抑制作用が少なからず存在するため,抗不整脈薬を用いないリズムコントロールのレートコントロールに対する優位性については不明である.【目的】持続性・永続性AFに対する拡大肺静脈隔離カテーテルアブレーション(ABL)後,抗不整脈薬が心機能に与える影響について検討した.【方法】対象は当院にてABLを施行した持続性・永続性AF43例である.ABL後,3ヵ月間の短期抗不整脈薬併用療法を行い,3ヵ月後に抗不整脈薬を中止した31例をGroup A,3ヵ月以降も抗不整脈薬を継続した12例中,持続性AFに移行した症例を除いた8例をGroup Bとし,ABL翌日,3ヵ月後,6ヵ月後に心エコー,BNP値を測定し比較した.【結果】Group Aでは,左房径(翌日43±6 mm vs. 6ヵ月後41±9 mm ; p<0.05),E/E'(翌日11.2±5.6 vs. 3ヵ月後9.7±5.8 ; p<0.05,6ヵ月後8.2±3.4 ; p<0.005),BNP値(ABL前日138±102 pg/mL vs. 3ヵ月後68±81 pg/mL ; p<0.001,6ヵ月後75±93 pg/mL ; p<0.001)が有意に改善した.Group Bではそれらの指標に有意な変化がなかった.【結語】持続性・永続性AFに対する非薬物的リズムコントロールは薬物的リズムコントロールに比して心機能改善効果が得られる.
総説
  • 網野 真理, 吉岡 公一郎, 古澤 佳也, 小林 義典, 伊苅 裕二, 猪口 貞樹, 児玉 逸雄, 田邉 晃久
    2011 年31 巻2 号 p. 140-149
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/02
    ジャーナル フリー
    心臓突然死の主要な原因である心室頻拍・細動の予防,治療には,様々な薬物や,カテーテルアブレーション,植込み型除細動器(ICD)が用いられている.しかし,低い有効性や重大な副作用,QOLの低下,医療経済への大きな負担などの問題があり,十分な対策になっているとは言い難い.重粒子線照射は,我が国で1994年から開始された深在性がんに対する放射線治療法であり,その高い有効性と安全性が注目を集めている.われわれは,ウサギを用いた実験で,心臓を標的とした単回の重粒子線照射が,心筋細胞間の主要なギャップ結合蛋白であるコネキシン43(Cx43)の発現亢進をもたらし,その作用が1年以上にわたって持続することを発見した.Cx43の発現亢進は正常動物の心室のみならず,心筋梗塞後の心室でも認められ,梗塞部の伝導障害と再分極不均一性を改善するとともに,心室頻拍・細動の誘発を抑制する効果があることが判明した.今後,心臓への重粒子線照射は,虚血性心疾患や心筋症などの心室不整脈発生基質の改善における革新的な治療法として発展する可能性を有している.
原著
  • 鎌倉 令, 山田 優子, 岡村 英夫, 野田 崇, 相庭 武司, 里見 和浩, 須山 和弘, 清水 渉, 相原 直彦, 上野 和行, 鎌倉 ...
    2011 年31 巻2 号 p. 150-157
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/02
    ジャーナル フリー
    ベプリジルの至適投与量,ならびに安全かつ有効な血中濃度域を見いだすために,不整脈に対してベプリジルを投与した112例(男性80例,女性32例,年齢64.3±12.5歳)の血中濃度を測定した.測定には高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法を用い,臨床的特徴,心電図指標などを対比し,不整脈抑制効果と副作用の発生状況を評価した.平均投与量は128±34 mg/日,平均血中濃度は751±462ng/mlであり,200mg投与群では有意に高い血中濃度(1,093±721ng/ml)を示した.平均観察期間899日で,心房頻脈性不整脈109例中14例が洞調律を維持し,57例で自覚症状が改善した.改善例の血中濃度は非改善例に比べ有意に高かった(866±541ng/ml vs. 622±329ng/ml, p=0.006).副作用としてQTc延長>0.48秒を10例に,徐脈を6例に認めたが,それらの濃度は副作用のない群に比して有意に高かった(QTc延長vs.副作用なし : 1,086±471ng/ml, p=0.005,徐脈vs.副作用なし : 1,056±522ng/ml, p=0.03).Torsade de pointesを呈した例はなかった.【結論】日本人のベプリジル至適投与量は150mg/日以下,症状を改善し,かつ副作用が出現しにくい血中濃度域は600~1,000 ng/mlと考えられた.
  • ―音声認識ソフトウェアAmiVoice(R)を用いた検討―
    杉山 裕章, 今井 靖, 鈴木 健樹, 永井 良三
    2011 年31 巻2 号 p. 158-164
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/02
    ジャーナル フリー
    【背景】音声認識システムを用いた文字入力の有用性は,すでに放射線画像診断分野を中心に示されており,電子カルテなどにも応用されているが,循環器分野における意義は不明である.【目的】循環器検査の1例として,ホルター心電図の判読結果に基づくレポート作成における音声入力の有用性を検討する.【方法】ホルター心電図判読レポートを電子ファイルとして作成した278症例(年齢65±16歳,男性137例)で検討した.レポートは,キーボード入力(KB群,139例)または音声認識ソフトウェア(AmiVoice(R))を用いた音声入力(AV群,139例)で作成し,両群間でその所要時間などを比較した.各レポートには有意所見数に応じたレベルを付帯し,レベル別での解析も行った.【結果】両群間で年齢・男女比やレポート文字数およびレベル分布に有意差は認められなかった.所要時間はKB群に比してAV群で有意に短く(883秒vs. 764秒,p<0.001),同傾向はレポートのレベルに関係なく認められた.【結語】ホルター心電図判読レポート作成において,時間効率の観点から音声認識システムは有用である.
心電学マイルストーン
心電図講義
循環器フォーラム2010 -不整脈薬物治療フォーラム-
  • 平尾 見三
    2011 年31 巻2 号 p. 199-201
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/02
    ジャーナル フリー
    心不全では,心筋の線維化とギャップ結合機能低下によって興奮波伝播速度の低下と不均一化が存在する.そのためNaチャネル遮断作用を有するI群抗不整脈薬はその陰性変力作用によりかえって心不全を悪化させる危険性があり,使用すべきでない.陰性変力作用が少なくKチャネル遮断作用を有するベプリジル,アミオダロンなどの使用が推奨されるものの,基本的には,心不全例ごとに左室収縮能や合併する疾患を考慮し,最適な薬剤を選択することが重要である.この際,遅延造影MRIによる左房線維化の量的評価を含めた病態の把握が薬剤選択の決定に有用な可能性がある.
  • 庭野 慎一
    2011 年31 巻2 号 p. 202-204
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/02
    ジャーナル フリー
    SOLVD,CHARMに代表される複数の大規模臨床試験のサブ解析において,心房細動(AF)が左心機能低下例の予後不良因子であることが示されている.そこで,当施設における心不全例を対象に再入院イベントとAFとの関連について検討した.再入院イベントは29.3%で認められた.多変量解析において,AFは再入院イベントの独立したリスク因子であった.ただし,データ集積期間を3期間に分けて同様の検討を行うと,1996~1999年および2000~2003年では,AFが再入院イベントの独立したリスク因子であったのに対し,2004~2009年では,AFは有意なリスク因子ではなくなっていた.近年はup-stream治療が広く施行されており,予後不良因子としてのAFの意義は低下している可能性がある.
  • 庄田 守男
    2011 年31 巻2 号 p. 205-207
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/02
    ジャーナル フリー
    原則として薬物治療が第一選択となる心房細動(AF)治療において,カテーテルアブレーション治療が著しい進歩を遂げている.しかしながら,心不全などの基礎心疾患を伴うAFに対するカテーテルアブレーションの有用性が確立されておらず,最近報告されたヨーロッパ心臓病学会(ESC)の「心房細動管理ガイドライン2010」においても積極的に推奨されていない.ただし,個々の症例においてはカテーテルアブレーション治療による洞調律維持が劇的な効果を示すこともあり,今後のさらなるデータ集積によってAF治療におけるアブレーションの位置付けが変化する可能性も考えられる.
  • 栗田 隆志
    2011 年31 巻2 号 p. 208-210
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/02
    ジャーナル フリー
    心房細動(AF)を合併した心不全患者に対する心臓再同期療法(CRT)の有効性は,十分な房室伝導の抑制により改善すると考えられる.したがって,薬物治療あるいはアブレーションによる房室結節の抑制を積極的に行う必要がある.CRTによる心不全の改善は心房に生じたリモデリングを回復させ,AFの発生を抑制する可能性がある.また,自験例を対象とした検討から,AFは拡張型心筋症におけるelectrical storm(ES)発生のリスク因子であり,これに併せて加算平均心電図の陽性所見の有無を確認することで,ESの発生を正確に予測可能であることが示唆された.
  • ーWeb版心房細動治療(薬物)ガイドラインー
    加藤 貴雄
    2011 年31 巻2 号 p. 211-212
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/02
    ジャーナル フリー
    我が国では超高齢社会の到来に伴い心房細動(AF)の発症率が上昇し,AFに対する適切な治療の重要性がこれまで以上に高まっている.そこで日本心電学会では,「心房細動治療(薬物)ガイドライン(2008年改訂版)」に準拠した薬剤選択を,日常臨床で適切かつ迅速に行うための補助ツールとして「Web版心房細動治療薬選択ツール」を開発中である.本ツールでは,年齢,性別,AFの種類,発作の起きる時間帯,使用中の薬剤などの患者情報を入力することで,ガイドラインで推奨されている治療法と使用できる薬剤が自動的に表示される.現在,1年の試用期間を終えて概ね好評を得ており,治療選択肢の是非や表示方法などについて改良を重ねている.本稿では開発の目的や使用方法の概略を紹介する.
  • 三田村 秀雄, 杉 薫, 清水 渉, 池田 隆徳, 渡邉 英一, 高橋 尚彦, 高月 誠司
    2011 年31 巻2 号 p. 213-216
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/02
    ジャーナル フリー
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