心電図
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11 巻, 1 号
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  • 池主 雅臣, 相沢 義房, 田村 真, 庭野 慎一, 江部 克也, 般崎 俊一, 柴田 昭
    1991 年 11 巻 1 号 p. 1-9
    発行日: 1991/01/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    持続型心室頻拍例 (VT) で抗不整脈薬投与前後において, VT-QRS波形の変化, 頻拍起源, 頻拍周期, および電気生理検査時の誘発モードの変化を比較し, 投薬後に出現する異なるVT-QRS波形の意義を検討した.投薬後に脚ブロック型または前額面電気軸が明らかに変化した11例を対象とした.投与後には無投薬時と明らかに異なる26個のVTを認めた. (1) QRS波形と起源: 6例では各々のVT起源が同定でき, うち4例は左右の心室に, 2例は右室の離れた2ヵ所に起源を認めた.この起源移行に伴い, 脚ブロック型が変化した. (2) QRS波形と頻拍周期: 投薬後はVT波形の変化に拘らず頻拍周期は延長した. (3) 誘発モード: 誘発モードは投薬前後で比較し得た10VTのうち5VTで簡易化し, 2VTでは困難化した.
    【結論】 (1) 脚ブロック型の変化は主に両心室間の起源移動であった. (2) 新たなVTが異なる起源から容易に誘発される場合は, その起源への催不整脈作用も考えられる. (3) 複数起源例では, 各々の起源に対する薬効評価が望まれる.
  • 松井 由美恵, 唐川 正洋, 中森 久人, 栗本 透, 岩坂 壽二, 稲田 満夫
    1991 年 11 巻 1 号 p. 10-17
    発行日: 1991/01/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    左前下行枝一枝病変による初回前壁中隔梗塞21例の下壁誘導ST変化について検討した.下壁誘導ST低下を示した例 (ST低下群) は12例, ST低下が小さい, もしくはなかった例 (ST非低下群) は9例であった.ST低下群ではST非低下群に比してI・aVL, V1~4のST上昇の和 (ΣST {I・aVL} , ΣST {V1~4} ) は有意に大であり, 再疎通後にはΣST {I・aVL} , ΣST {V1~4} の減少とともに下壁誘導ST低下も軽減し, reciprocal changeと考えられた.とりわけI・aVLのST上昇と下壁誘導ST低下には強い相関がみられた.ST非低下群ではΣST {I・aVL} , ΣST {V1~4} が小さく, reciprocal changeが小さいと考えられた.しかし, 左前下行枝がapexを越えて下壁の一部を灌流する症例はST非低下群に多く (6/9例) , うち3例で下壁誘導STは上昇を示し, 下壁誘導のSTが低下を示さなかった要因として, 下壁梗塞の合併によるreciprocal changeの相殺も考えられた.
  • 萩原 秀紀, 斎藤 大治, 松原 堅, 山成 洋, 原岡 昭一, 井原 敬子, 白木 照夫
    1991 年 11 巻 1 号 p. 18-27
    発行日: 1991/01/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    20~81歳の健常成人262名の体表面心臓電位図を用いて, 健常人のisointegral map (area map) の性差, 年齢差について検討した.
    1) QRS, QRSTおよびSTT area mapは左前胸部から左側胸部にかけての広い範囲で, 男性が女性に比べ有意に大きかった.
    2) STTおよびQRST area mapは男性では若年群が高齢群に比べ左前胸部で有意に大きかったが, 女性では差が認められなかった.
    3) 以上より, area mapを用いた体表面心臓電位図の検討には性差, 年齢差を考慮することが必要であると考えられた.
  • 栽原 伸一郎, 井上 博, 戸田 為久, 碓井 雅博, 杉本 恒明
    1991 年 11 巻 1 号 p. 28-34
    発行日: 1991/01/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    麻酔開胸イヌで陽極のtrain刺激による心室筋興奮のsummationとinhibitionについて検討した.刺激の出力は低電流 (閾値の2倍) と高電流 (15mA) とし, 心室不応期 (ERP) を測定し, 単一刺激による強さ・時間 (S-I) 曲線も検討した.陽極刺激のS-I曲線には12頭全例でdipが存在した.高電流刺激では全例にsummation (単一刺激に比べてERPが短縮する現象) を認め, 低電流刺激でも陰極刺激とは異なり92%にsummationが認められた.S-I曲線のdipに影響するリドカイン (70~140μg/kg/分) は, summationの程度に影響を与えなかった.低電流刺激ではsummationの他, 12頭中25%にinhibitionが認められたが, S-I曲線のdipの閾値がtrain刺激の出力より高い3頭中2頭でinhibitionを認めた.リドカインによりS-I曲線が右上方に移動するとinhibitionの出現率は増加した (25%と80%, p<0.05) .陽極train刺激では陰極の場合と異なる反応を示し, 陽極刺激によるsummationとinhibitionはS-I曲線のdipの影響を受ける.
  • 本間 健太郎, 八巻 通安, 池田 こずえ, 久保田 功, 殿岡 一郎, 立木 楷, 安井 昭二
    1991 年 11 巻 1 号 p. 35-45
    発行日: 1991/01/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    陳旧性心筋梗塞患者75例につき体表面電位図を記録し, そのAQRST分布について主成分分析を行なった.因子負荷量については第一~第三主成分とも双極子性の分布を示した.第一主成分では, 背部下方で極大, 前胸壁上方で極小, 第二主成分では, 右腋窩で極大, 左腋窩で極小, 第三主成分では, 前胸壁中央に極大, 背部中央に極小を示した.回帰分析にて主成分得点と左室駆出率との相関を求めたところ, 前壁心筋梗塞群ではZ1と0.45, Z2と―0.71, Z3と0.51であり, これら3主成分得点を用い重回帰分析を行なったところ重相関係数0.83という良好な結果が得られた.下壁心筋梗塞群では前壁心筋梗塞群ほど良好な相関は得られなかった.Ventricular Gradientを表わすとされるAQRSTから抽出された主要成分は左室局所壁運動異常との関連が示唆された.
  • 永吉 広和, 高瀬 凡平, 栗田 明, 西岡 利彦, 丸山 寿晴, 上畑 昭美, 菅原 博子, 里村 公生, 水野 杏一, 中村 治雄
    1991 年 11 巻 1 号 p. 46-52
    発行日: 1991/01/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    虚血性心疾患 (IHD) 症例19例および健常者 (NL) 例13例に24時間ホルター心電図を施行し, ホルター心電図より求めた心拍数変動 (SD) とIHD重症度および予後との関係, 無症候性ST降下とSDとの関係につき検討した.NL群では加齢とともにSDが低下したのに対し, IHD症例ではSDと年齢との間に有意な関係は得られなかった.SDはNL群56±13msec (平均±標準偏差) , mild IHD群49±7msec, severe IHD群48±15msec, IHD with death群23±7msecとIHDの重症度が増すに従って低下する傾向を示し, SDは左室駆出率と有意な正の相関が得られた.ホルター心電図検査後2ヵ月以内に死亡したIHD with death群のSDは, 他群に比べて有意 (p<0.05) に低値であり, 全例30msec以下であった.一方, 無症候性ST降下とSDの間には明らかな関係は得られなかった.以上より, ホルター心電図より求めたSDは, IHD症例の重症度および予後を検討する上で有用な指標となり得ることが示唆された.
  • ―ホルター心電図による検討―
    佐伯 知昭, 榊原 有作, 早野 順一郎, 山田 彰, 鈴木 賢治, 藤浪 隆夫, 杉浦 正佳
    1991 年 11 巻 1 号 p. 53-57
    発行日: 1991/01/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    弁膜症および先天性心疾患を有さず, 洞調律を基本調律とする640名 (2~93歳) において, 心房期外収縮の出現率および出現様式と, 年齢および疾患との関係を24時間ホルター心電図記録より検討した.対象を10歳ごとの8群に分けて検討したところ, 心房期外収縮の出現率は性別および糖尿病や高血圧, 心電図上の虚血性変化の有無とは関係なく高齢群ほど高かった (p<0.0001) .また心房期外収縮を有する者の中では, 発作性心房頻拍 (4連発以上の心房期外収縮) を有する者の割合が高齢群ほど大きかった (p<0.0001) .これらの結果より, 心房期外収縮および発作性心房頻拍の出現率は加齢とともに増加し, この増加は性別および糖尿病や高血圧, 心電図上の虚血性変化の有無とは独立であることから加齢現象として捉え得ることが示唆された.
  • 長田 満, 佐藤 健司, 小森 貞嘉, 田村 康二
    1991 年 11 巻 1 号 p. 58-64
    発行日: 1991/01/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    再灌流不整脈の発生要因の一つに酸素フリーラジカルが関与しているという観点から, 再灌流時に低酸素灌流を行ない, 再灌流不整脈に対する抑制効果を, ラジカルスカベンジャー (superoxide dismutase+catalase) , およびアロプリノールの効果と比較し, 検討した.スカベンジャー灌流では, 再灌流不整脈の発生は抑制されたが, 発生した不整脈の停止効果はなかった.また, アロプリノールには, 明らかな効果は認められなかった.これに対して, 低酸素灌流では, 再灌流不整脈の発生抑制効果とともに停止効果も認められた.このことから再灌流不整脈の発生, 持続には, 酸素フリーラジカル以外の因子が関与していると考えられた.
  • 山成 洋, 白木 照夫, 井原 敬子, 戸川 潤一郎, 草地 省藏, 辻 孝夫, 松原 堅, 斎藤 大治, 原岡 昭一
    1991 年 11 巻 1 号 p. 65-73
    発行日: 1991/01/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    運動負荷後の左軸偏位が心筋虚血の部位や程度を反映しているか否かについて検討した.対象は負荷心筋シンチ上前壁または前壁中隔領域に虚血が出現し, かつ冠動脈造影上左冠動脈主幹部または左前下行枝近位部に有意狭窄を認めた12例である.負荷後に平均電気軸が著しく左方へ移動した6例をLAD群, 著しい左方移動を認めなかった6例をNAD群と分類して2群間で比較検討した.LAD群では平均電気軸は, 21°±39°から―60°±14°へ, NAD群では43°±22°から48°±30°へ変化した.負荷心筋シンチでは全例で前壁中隔領域の虚血性変化を認めたが, 中隔領域のExtent Scoreは, LAD群がNAD群より有意に大きかった.また中隔領域のExtent Scoreと負荷前後の平均電気軸移動角度の間には有意の正相関が認められた.しかし軸偏位以外の心電図変化には両群に明らかな差は認められなかった.以上より, 負荷後の左軸偏位は心室中隔の広範な虚血と関連があり, 重症冠動脈病変を示唆すると思われた.
  • ―洞機能と対比して―
    元山 幹雄, 村山 正博, 武者 春樹, 坂本 静男, 伊藤 博之, 小野 彰一, 板井 勉, 岡村 哲夫
    1991 年 11 巻 1 号 p. 74-79
    発行日: 1991/01/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    運動後回復期の洞機能と房室伝導機能の差異を比較し, 房室伝導機能の特徴について検討した.洞機能については洞調律, 第I度房室ブロックのRR間隔により, 房室伝導機能については心房細動の平均RR間隔, 第I度房室ブロックのPR間隔により検討した.対象は心房細動群13人, 第1度房室ブロック群10人, 正常洞調律の健常群15人である.運動負荷はBruceプロトコールによるsymptom-limitedのトレッドミル運動負荷心電図である.心房細動群のRR間隔, 第I度房室ブロック群のPR間隔は回復期2分で90%以上の回復率を示したが, 洞調律群, および第I度房室ブロック群のRR間隔の回復率は約75%であった.運動後回復早期における房室伝導機能の回復は洞機能に比べ速やかであり, 回復早期における迷走神経トーヌス亢進が房室伝導機能に優位に作用した可能性が示唆された.
  • ―電気生理学的所見を中心に―
    田村 真, 相沢 義房, 佐藤 政仁, 鈴木 薫, 相沢 雅美, 船崎 俊一, 宮島 静一, 江部 克也, 庭野 慎一, 石黒 淳司, 池主 ...
    1991 年 11 巻 1 号 p. 80-88
    発行日: 1991/01/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    他剤無効性の持続型心室頻拍に対するアミオダロン (以下AMD) の抗不整脈効果を電気生理検査 (以下EPS) により検討した.対象は持続型心室頻拍12例と心室細動1例で, 4例に失神の既往があった.全例コントロール状態のEPSで頻拍が誘発され, プロカインアミドやジソピラマイドなどの単独および併用投与で予防効果は認めなかった.AMDの投与量は11例で400mg/日を1週間, その後200mg/日を1週間投与し, 1例で400mg/日を2週間投与し, 1例で800mg/日をプロカインアミド1.5g/日と2週間併用投与した.副作用による投与中止例はなかった.2例で投与期間中にVT発作が頻発した.残り11例でEPSを施行し, 4例でVTは誘発不能となった.自然再発VTを含め予防効果を認めない9例中7例で15~120msecのVT周期の延長を, 2例で55~105msecのVT周期の短縮を認め, AMDは必ずしもVTレートを低下させないと考えられた.投与中再発を認めず, EPSでも誘発されない例を有効と判定すると, AMDのVTに対する予防効果は13例中4例, 31%に認めた.
  • 定永 恒明, 小川 聡, 楊 志成, 佐伯 公子, 三谷 和彦, 古野 泉, 佐藤 吉弘, 加藤 浩嗣, 中村 芳郎
    1991 年 11 巻 1 号 p. 89-95
    発行日: 1991/01/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    両側交感神経刺激の刺激条件を変化させた際, 左室局所有効不応期 (ERP) ならびに血行動態諸指標の反応性の変化について検討した.麻酔開胸犬9頭で, 左室前壁心外膜6点にプランジ電極を刺入しS1-S2法によるERP, 同時に血圧, R-R間隔, 左室dP/dTを測定した.交感神経刺激には両側頸部迷走神経幹および星状神経節切断の上, 両側ansae subclaviaeより電気刺激を加えた. (1) 刺激幅4msec, 刺激強度4mAを一定として, 刺激周波数を1, 3, 5Hzと段階的に増加させた場合, (2) 3Hzまたは5Hzで30分間の連続刺激を施行した際の上記諸指標を計測した.結果: (1) 1, 3, 5Hz刺激ともERPは有意に短縮したが, 1Hzに比して3, 5Hz刺激による変化はより大であった. (2) 30分間連続刺激時のERPの短縮率は3Hz刺激では安定していたが, 5Hz刺激時には30分までに刺激効果は低下し, 刺激中止後20分経過しても反応性は完全には回復しなかった. (3) ERPとR-R間隔の変化は相関した.
  • 山本 直人, 鈴木 文男, 縄田 浩子, 大友 建一郎, 佐藤 正, 原田 智雄, 田中 一司, 平尾 見三, 比江嶋 一昌
    1991 年 11 巻 1 号 p. 96-105
    発行日: 1991/01/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    房室結節リエントリー性頻拍 (AVNRT) 例においてdual AV nodal pathways (DAVNP) の存在は通常, 心房期外刺激法によって得られた房室伝導曲線が不連続性を示すことによって証明されるが, 心室期外刺激法 (VE法) によって得られた室房伝導曲線が不連続性を示すことによっても証明されることがある.しかし大多数のAVNRTにおいてVE法により不連続な室房伝導曲線を得ることは困難であることが多く, これは室房伝導が良好でありfast pathway (EP) の逆伝導が途絶しないためと考えられる.今回我々はretrograde DAVNPの存在がVE法によっては証明されず心室頻回刺激法 (RVP法) によって証明された4症例を経験した.VE法ではなくRVP法によりslow pathwayの逆伝導が示された機序は, 刺激周期の短縮に伴いHis-Purkinje系の機能的不応期がFPの有効不応期よりも短縮したためであると推論された.
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