心電図
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39 巻, 4 号
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Editorial
総説
  • 堤 健
    2019 年 39 巻 4 号 p. 247-260
    発行日: 2019/12/23
    公開日: 2020/09/12
    ジャーナル フリー

    QRS内に発生する高周波成分に関しては,いまだその発生原因や臨床的意義が確立されたとは言い難く,現在においても心電図情報のmysterious subjectsの一つである.QRS区間内に発生する高周波信号は,さまざまな病態におけるミリメーターレベルの脱分極異常についての情報を含んでいる可能性があり,高周波解析により新たな非視覚的心電情報がもたらされることが期待される.筆者は2000年頃より心電図学者としての立場から,QRS波の周波数解析の問題に取り組んできた.そこで,今後この方面に興味がある心電図研究者のために,周波数解析に関する総説を書くことを企図した.本稿では,近年,フーリエ変換法に代わる周波数解析法として期待されているウェーブレット変換法の応用を中心として,①周波数解析の歴史,②ウェーブレット変換の臨床応用,③高周波発生機序解明の一手段としてcomputer simulationの応用,という三つのテーマを概説する.

  • 八木原 伸江, 渡部 裕, 南野 徹
    2019 年 39 巻 4 号 p. 261-272
    発行日: 2019/12/23
    公開日: 2020/09/12
    ジャーナル フリー

    心筋の主要なナトリウムチャネルの遺伝子であるSCN5Aの変異は種々の不整脈の原因となる.SCN5Aの発現量の変化が不整脈基盤形成に関与する可能性があるが,SCN5Aのプロモーター領域や調節領域のvariantが不整脈発症に関与するのかは不明であった.今回われわれは,種々の不整脈症例1298例に対し,SCN5Aのプロモーター領域と調節領域の遺伝子解析を行い,29例に26種類の新規のSCN5Aプロモーターのrare variantを同定した1).クロマチン免疫沈降シークエンスのデータと,今回同定されたvariantを比較すると,多数のrare variantは転写因子結合部位に位置していた.ルシフェラーゼレポーターアッセイを用いて機能解析を行った結果,rare variantは野生型に比しプロモーター活性が低下していた.また,イントロン1に存在する調節領域内に,心房細動と関連するvariantを同定した.以上の結果より,SCN5Aの転写量の変化が種々の不整脈発症に関与する可能性が示唆された.

  • 山本 雄大, 牧山 武
    2019 年 39 巻 4 号 p. 273-282
    発行日: 2019/12/23
    公開日: 2020/09/12
    ジャーナル フリー

    カルモジュリンは普遍的に発現しているCa2+センサータンパクであり,3つの異なる遺伝子(CALM1-3)によりコードされている.近年,これらCALM遺伝子の変異によって先天性QT延長症候群(congenital long-QT syndrome:LQTS)やカテコラミン誘発性多形性心室頻拍(catecholaminergic polymorphic ventricular tachycardia:CPVT)などの致死性不整脈疾患が引き起こされることが報告され,注目されている.このようなCalmodulinopathyは,CALM遺伝子のヘテロミスセンス変異によって引き起こされることが報告されているが,その疾患発症機序の詳細は不明である.われわれは,カルモジュリン遺伝子関連LQTS患者より樹立したiPS細胞を用いて疾患モデルを確立し,ヒト心筋における疾患発症機序の解明とゲノム編集技術を用いた新規治療法の開発を目的とした研究を行っており,カルモジュリン遺伝子異常と不整脈疾患に関する最新の知見と併せて紹介する.

原著
  • 谷口 賢一郎, 織田 良正, 乗田 浩明
    2019 年 39 巻 4 号 p. 283-288
    発行日: 2019/12/23
    公開日: 2020/09/12
    ジャーナル フリー

    右室中隔ペーシングの心機能に対する影響について,定まった評価は得られていない.今回われわれは,過去5年間に右室中隔ペーシング(低位右室中隔)を施行した109例について,心不全の指標である脳性ナトリウム利尿ペプチド(brain natriuretic peptide:BNP)値や心胸郭比(cardio-thoracic ratio:CTR)を用いて短期的評価を行った.BNP値,CTRは術後改善が得られた.またペーシング率とBNP値に相関は見られなかったが,ペーシングQRS幅はBNP値と相関があり,かつその他の心疾患を有する症例で有意に広かった.これらの結果から,右室中隔ペーシングは予後を改善する可能性があること,ペーシングQRS幅が狭いほど予後はよいが,心疾患の有無もペーシングQRS幅に関与していることが示唆された.

症例
  • 山科 順裕, 八木 哲夫, 石田 明彦, 三引 義明, 佐藤 弘和, 中川 孝, 佐藤 英二, 青木 恒介, 鈴木 啓資, 井筒 琢磨
    2019 年 39 巻 4 号 p. 289-296
    発行日: 2019/12/23
    公開日: 2020/09/12
    ジャーナル フリー

    症例は58歳男性.症候性の顕性WPW症候群に対して,高周波カテーテルアブレーションを施行した.デルタ波の極性はV1誘導で陰性,QSパターンを示し,副伝導路は中隔起源が推定された.His束近傍の右側中中隔において副伝導路の順伝導,逆伝導ともに早期性が最も良好であり,同部位で低出力から通電を開始した.通電開始直後に副伝導路は離断されたが,通電部位の局所電位に明瞭なHis束電位が捉えられており,一過性に房室ブロックを生じた.通電を止めると房室伝導は再開したが,副伝導路も再発し1st sessionでの治療は断念した.経過観察中に臨床的に心房細動(AF with preexitation)を認め,クライオアブレーションによる2nd sessionを実施した.4本の肺静脈をクライオバルーンで隔離後,クライオカテーテルを用いて1st session時と同じ右側中中隔で,副伝導路に対して冷凍凝固を実施した.結果,房室伝導に障害を与えることなく,副伝導路の根治に成功した.高周波通電では房室ブロックを生じるHis束近傍右側中中隔の副伝導路に,クライオアブレーションが奏功した例を経験したので,報告する.

学会レポート
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