心電図
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43 巻, 2 号
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Editorial
総説
  • 横山 靖浩, 宮本 康二, 草野 研吾
    2023 年 43 巻 2 号 p. 89-99
    発行日: 2023/07/07
    公開日: 2023/07/16
    ジャーナル フリー

    高齢者の増加に伴い心不全および心房細動の患者数は増加している.年齢は,心房細動のカテーテルアブレーションの適応を決定する大きな関心事や決定要因の1つである.しかし,日本における年齢に応じた心房細動カテーテルアブレーションの安全性に関するデータはほとんどない.本研究では,全国規模のデータベース〔Japanese Registry Of All cardiac and vascular Diseases(JROAD)-DPC〕により,心房細動カテーテルアブレーションに関する安全性を評価した.2012年4月から2018年3月までに,456の病院で心房細動アブレーションを施行した患者135,299名(平均年齢65±10歳,女性38,952名)を調査し,詳細な年齢群;<60,60~65,65~70,70~75,75~80,80~85,≧85歳に分けて検討した.全体の院内合併症発生は3.4%(心タンポナーデ1.2%),院内死亡率は0.04%であった.高齢の患者では,女性の割合が高く,肥満度が低く,高血圧や心不全などの併存疾患が多く,これらの特徴はすべて多変量解析で合併症の予測因子となった.多変量解析による調整オッズ比から,年齢の上昇は独立して総合併症の発生と有意に関連していた(60~65歳;1.19,65~70歳;1.29,70~75歳;1.57,75~80歳;1.63,80~85歳;1.90,≧85歳;2.86,対照:<60歳).以上のことから,JROAD-DPCデータベースにより心房細動カテーテルアブレーションにおける合併症の頻度は,年齢に応じて増加することが示された.

原著
  • 森田 浩介, 堀 真貴子, 大島 英樹, 大村 治也
    2023 年 43 巻 2 号 p. 100-105
    発行日: 2023/07/07
    公開日: 2023/07/16
    ジャーナル フリー

    【目的】ペースメーカ手術において術後血腫形成の予測因子として周術期のヘパリン使用が報告されているが,その他の予測因子についての報告は多くない.今回,当院でのペースメーカ手術例を用いて血腫形成の予測因子を検討した.【方法】2018年10月から2021年1月までにペースメーカ手術を施行した103例(血腫形成群13例)の患者を対象とし,血腫形成にかかわる予測因子について後ろ向きに調査した.【結果】単変量解析では術前低体重(ボディマス指数(BMI)18.5未満)である群(オッズ比(OR):4.0,95%信頼区間(CI):1.02-15.7,p=0.046),降圧薬の内服がない群(OR:5.57,95%CI:1.60-19.4,p=0.007),および周術期のヘパリン使用群(OR:4.56,95%CI:1.14-18.2,p=0.032)が血腫形成と有意な相関があった.【結語】降圧薬を内服していないこと,低体重は新たな血腫形成の予測因子となりうるかもしれない.

症例
  • 加茂 嗣典, 佐野 誠, 瀧山 弘也, 中村 元春, 伊藤 裕美, 水口 智明, 金子 裕太郎, 榊原 智晶, 成味 太郎, 成瀬 代士久, ...
    2023 年 43 巻 2 号 p. 106-115
    発行日: 2023/07/07
    公開日: 2023/07/16
    ジャーナル フリー

    遠隔モニタリングシステム(remote monitoring system:RMS)は,早期の不整脈検出や治療確認が可能であり,生命予後を改善させることから,デバイス患者の標準的な管理手法として導入が推奨されている.今回われわれは,心室頻拍ゾーン(ventricular tachycardia zone:VTZ)付近の頻拍周期をもつ持続性心室頻拍(sustained ventricular tachycardia:Sustained VT)を非持続性心室頻拍(non-sustained ventricular tachycardia:NSVT)と誤認識し,抗頻拍ペーシングに至らなかった3症例を経験したので報告する.いずれの症例もNSVTとしてRMSのアラートが届いたが,心内心電図波形を評価すると,VTZ近傍の変動する心室頻拍周期で,VTZを脱した心拍の影響によりSustained VTの基準を満たさず,NSVTと診断され,抗頻拍治療に至らなかったと診断した.RMSで送信された心内心電図を直接確認し,早期にVTZの再調整を行うことができた.今後,RMSの有用性を向上させ,治療遅延を防ぐためには,デバイスによる診断アルゴリズムの理解ならびに,心内心電図の丁寧な確認が重要である.

  • 藤岡 真功, 祖父江 嘉洋, 西川 祐策, 浅井 崇史, 明周 義友, 阪野 有希菜, 西尾 早江貴, 石黒 智也, 渡邉 英一
    2023 年 43 巻 2 号 p. 116-125
    発行日: 2023/07/07
    公開日: 2023/07/16
    ジャーナル フリー

    三次元マッピング装置であるCARTO3® systemに搭載されたPattern matching機能は,治療対象の心室期外収縮とリアルタイムで得られた12誘導心電図QRS波形の相関が高い箇所を画面上に表示するアブレーション支援プログラムである.心房期外収縮の起源同定にPattern matching機能を応用することで高周波通電部位の視認性が高まり,術時間の短縮や治療効果の改善が見込まれる.しかし,P波はQRS波に比べて波高が低く持続時間が短いことや,先行拍のT波と融合することがあるため,本法をそのまま流用してもP波の発生部位を自動検出することはできない.今回,われわれは胸部誘導(V1,V6誘導)に加えて,高位右房と冠静脈洞の心内電位を用いたPattern matching法を考案して,心房期外収縮の起源を自動的に同定するとともにアブレーションを行った2例を報告する.

今さら聞けない心電図波形塾
  • 栗田 隆志
    2023 年 43 巻 2 号 p. 126-131
    発行日: 2023/07/07
    公開日: 2023/07/16
    ジャーナル フリー

    ST segment(ST)は心室筋細胞活動電位のPhase 2(プラトー相)に相当する.生理的にはこの時相で多くの細胞が同じ膜電位レベルに脱分極するため,STは基線付近に戻る.J点(ST)上昇は基線(PR)から0.1mV以上の変位が2つ以上の連続する誘導で認められる場合と定義される.虚血心筋では静止膜電位(Phase 4)の脱分極,あるいはPhase 1~2の不完全な脱分極に起因した電流が発生しSTを変位させる.早期再分極症候群では心外側心筋細胞のPhase 1に形成されるnotchがJ波の発生に関与する.Brugada症候群においては再分極の形態異常(Spike and dome)がその特徴的なST変位をよく説明する.左室肥大のST低下は心内膜下心筋の相対的虚血によると考えられている.左脚ブロックやB型WPW症候群による左室の伝導障害は脱分極遅延による再分極の遅れを招来し,ST低下に連動する.

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