心電図
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6 巻, 5 号
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  • 白井 徹郎, 井上 清
    1986 年 6 巻 5 号 p. 533-539
    発行日: 1986/10/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    心室期外収縮 (VPC) 治療時の簡便な薬効評価法の開発を目的とし, VPC患者を対象とした短期および長期治療時の治療効果を対比検討した.対象はVPCを3000/日以上認める17例で, disopyramide (d) , aprindine (a) , propranolol (p) , verapamil (v) の単独2日間と2週間投与時の治療効果をそれぞれHolter心電図法を用い検討した.結果: 1) 2日間投与時VPC数が50%以上減少した例は, (d) 9/17例 (53%) , (a) 2/15例 (13%) , (p) 5/17例 (29%) , (v) 5/17例 (29%) に認められた.2) これらの例を中心とした2週間投与を (d) 10例, (a) 5例, (p) 6例, (v) 3例につき施行し, 各薬剤のVPC数減少率の2日間と2週間投与時の相関を検討した結果, 両者の相関はr=0.702 (P<0.01) と良好であった.結論: 2日間の経口投与にてもVPCに対する薬効は判定可能で, かつその結果が長期投与時の効果を概ね反映すると考えられた.2日間投与法は, 臨床処方上簡便な方法として応用可能である.
  • ―主にdeparture mapsによる評価―
    中野 博, 渡辺 佳彦, 安保 泰宏, 高亀 良治, 三ツ口 文寛, 黒川 洋, 宮城 裕, 近藤 武, 野村 雅則, 水野 康
    1986 年 6 巻 5 号 p. 541-552
    発行日: 1986/10/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    前壁梗塞群30例, 下壁梗塞群23例の計53例を対象とし, 急性心筋梗塞における体表面電位図の定量的評価を試みた.QRS開始点より4msec間隔で, 正常電位との差を正常者の標準偏差で除した値からdeparture mapを作成し, その値が-1.5以下の占める領域をdeparture areaとした.departure areaは, 前壁梗塞群では心室脱分極開始20msec時, 下壁梗塞群では32msec時に最大であり, その時点において前壁梗塞群ではpeakCKとの間にr=0.75 (p<0.001) , PYPシンチより推定した梗塞量 (MI count) との問にr=0.75 (p<0.001) の相関を, 又下壁梗塞群ではpeak CKとの間にr=0.60 (p<0.01) , MIcountとの間にr=0.77 (p<0.01) の相関を認めた.departure mapにより, 心筋梗塞巣は前壁梗塞群では心室脱分極の早期で, 又下壁梗塞群ではその早期から中期で定量的評価が可能であり, 本法は急性期にその拡がりを推定し得る非観血的な方法として臨床上有用であると考えられた.
  • ―心室性期外収縮と心拍数の関係自律神経面からの検討―
    中西 正, 溝井 由美, 窪田 小弓, 佃 昌樹, 三村 徹, 西村 真人, 木谷 恵子, 平林 正己, 大塚 邦明, 矢永 尚士
    1986 年 6 巻 5 号 p. 553-558
    発行日: 1986/10/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    心室性期外収縮 (VPB) の発生と心拍数との関係を自律神経面から検討することを目的とし, VPB以外に明らかな心疾患を有さず, 運動負荷試験によりVPBが増加した.即ち, 交感神経活動がVPB発生に関与すると考えられた5例を対象に, Holter心電図検査を施行した.昼間帯, 夜間帯, 終日に分け, 様々な時間間隔で心拍数とVPB数の相関を求めたところ, 60分の時間間隔で各々0.524±0.225, 0.806±0.085, 0.672±0.042の相関を認め, その相関は時間間隔を短くすることにより低下した.また各々の時間間隔において, 夜間帯, 終日, 昼間帯の順で相関は低下した.
    以上から, VPB発生において交感神経活動がその発生に関与すると考えられる例では, Holter心電図法によってもその関与は推察され, 夜間帯についての検討がその関与を検討する上でより良い方法と考えられ, かつこれらの成績は睡眠における自律神経の関与に対し, 示唆を与えるものと考えられる.
  • 池野 文昭, 沖重 薫, 平尾 見三, 鈴木 文男, 比江嶋 一昌
    1986 年 6 巻 5 号 p. 559-570
    発行日: 1986/10/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    発作性“上室”性頻拍症の9例を含む諸種不整脈の17例にamiodarone 5mg/kgを経静脈的に投与し, 以下の結果を得た. (1) 洞周期には有意な変化を認めなかった. (2) 心房筋の有効不応期に延長傾向を示した.また心室筋の有効不応期は有意に延長した. (3) 房室結節に対しては, その伝導能を著明に抑制した. (4) His-Purkinje系に対しては, 正伝導では抑制効果を認めなかったが, 逆伝導では抑制効果を示唆する所見が得られた. (5) 副伝導路の逆伝導に対しては, 軽度の抑制効果が示唆された. (6) 電気生理学的検査法にて誘発され, あるいは検査時自然発生した“上室”性頻拍に対しては, 停止効果および徐拍化効果を認めた.しかし一部の例では, 副伝導路回帰性心房エコー波の出現するエコー帯の拡大や, 非持続性頻拍から持続性頻拍への移行を認めた. (7) 副作用としては, 洞機能不全例で著明な洞徐脈を認めた1例と, 嘔気で投与中止となった1例があったが, その他には異常は認められなかった.
  • 清水 昭彦, 大江 透, 鎌倉 史郎, 松久 茂久雄, 下村 克朗
    1986 年 6 巻 5 号 p. 571-576
    発行日: 1986/10/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    発作性房室回帰性頻拍は通常持続型で反復型を呈することは稀である.今回, われわれは反復型の臨床電気生理学的特徴を明らかにするために房室回帰性頻拍72例を反復型11例と持続型61例の2群に分け臨床電気生理学的各指標を対比検討した.
    反復型は持続型に比してecho zoneの幅は有意に広く (181±64msec vs 65±48msec, p<0.005) .また, 反復型は持続型に比して房室結節順行性有効不応期は有意に延長し (271±36msec vs 243±31msec, p<0.005) , 1; 1伝導上限心拍数は有意に低値 (151±20拍/分vs186±31拍/分, p<0.005) を示した.
    反復型1の臨床電気生理学的な特徴は持続型に比してecho zoneの幅が広く, 房室結節順行性の伝導能が低下していることであった.
    これらにより, 頻拍の発生および停止が容易におこり, 反復型の頻拍を呈すると考えられた.
  • 川久保 清, 川原 貴, 大城 雅也, 戸田 為久, 野崎 彰, 中島 敏明, 村川 裕二, 三輪 篤子, 倉智 嘉久, 飯塚 昌彦, 真島 ...
    1986 年 6 巻 5 号 p. 577-580
    発行日: 1986/10/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    従来研究の少ない運動負荷試験終了後回復期の心拍数反応について検討をおこなった.対象はトレッドミルによる運動負荷試験, 冠動脈造影検査, 負荷タリウム心筋シンチをおこなった60例である.狭心症24例 (年齢57±5歳) は前壁虚血群14例と下壁虚血群10例に, 狭心症を合併しない陳旧性心筋梗塞20例 (年齢54±9歳) は前壁梗塞群10例と下壁梗塞群10例に分けた.残りの16例は正常コントロール群 (年齢55±6歳) とした.下壁虚血群では負荷終了後2分後に一過性に徐脈傾向となり, その後再び速くなる傾向があったが, 他の群では滑らかな心拍数の回復がみられた.運動時間, 最大心拍数には差がないが, (2分後心拍数÷最大心拍数) ×100 (%) の値は下壁虚血群で小であり, その値が50%以下のものが4例みられた.負荷後の徐脈反応は下壁の一過性虚血と関連してみられ, 狭心症の虚血領域を推定する一つの指標になると考えられた.
  • ―発作性“上室”性頻拍の検討―
    平尾 見三
    1986 年 6 巻 5 号 p. 581-589
    発行日: 1986/10/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    発作性“上室”性頻拍 (PSVT) の診断および治療方針決定における, 経食道心房ペーシング法 (Eペーシング法) の有用性と限界とについて検討した.PSVTを有する23症例に, Eペーシング法 (早期刺激法, 頻回刺激法) により, 頻拍の誘発を試みた.うち一部症例には, 同様に高位右房ペーシング法を実施し, 両者の成績を比較した.その結果, 23例中19例に, Eペーシング法にてPSVT (房室リエントリー性頻拍14例, 房室結節リエントリー性頻拍5例) が誘発された.高位右房ペーシング法では, 12例中9例にPSVTの誘発が可能であり, その全例にEペーシング法にても頻拍は誘発されたが, 各症例の両法で得られたPSVT誘発ゾーンは比較的よく近似していた.PSVTが誘発された症例では, 食道誘導上の心室・心房関係より, 頻拍の機序がある程度推測可能であり, また抗不整脈剤の薬効評価の上で食道ペーシング法は刺激閾値など若干の限界を除くと, 有用と考えられた.
  • 田辺 晃久, 吉川 広, 古屋 秀夫, 五島 雄一郎, 伊賀 富栄, 福士 広通
    1986 年 6 巻 5 号 p. 591-598
    発行日: 1986/10/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    ホルター心電図における虚血ST変化をより確実に捕捉するため, 2チャンネル式ホルター心電図法にて計3誘導記録可能なアダプターを試作し, 臨床に応用した.チャンネル1はV5-like lead (CM5誘導) とし, 同一心電図を24時間記録した.チャンネル2はこのアダプターを適用しV2-like lead (CM2誘導) とII oraVF-like lead (CM9誘導) を交互に記録可能とした.本アダプターの原理はoscillator, divider, inverterを利用し, 上向きパルスと下向きパルスを交互に30秒ずつ発信させ, それぞれCM2誘導とCM9誘導を同期させたものである.虚血性心臓病患者50名に応用し, 35名計90件の一過性虚血ST変化を認めたが, うち66件 (73%) は無症候性虚血ST変化であった.ST変化を認めた誘導はCM, 誘導24/35名 (69%) , CM2誘導9/35名 (26%) , CM9誘導18/35名 (51%) であった.異型狭心症は2名で, うち1名はCM2誘導ST上昇時CM, 誘導とCM5誘導はST下降, 他の1名はCM9誘導ST上昇時CM2誘導ST下降, CM5誘導ST変化なしであった.以上より, 本法はチャンネル数, 電極数を増加することなく3誘導心電図記録が可能で, とくに無症候性虚血ST変化や2誘導のみでは見逃しやすい異型狭心症の検出に有用と考えられた.
  • ―ST-T isointegral mapによる検討―
    中島 敏明, 川久 保清, 戸田 為久, 三輪 篤子, 村川 祐二, 野崎 彰, 倉智 嘉久, 川原 貴, 大城 雅也, 真島 三郎, 杉本 ...
    1986 年 6 巻 5 号 p. 599-607
    発行日: 1986/10/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    運動負荷にて虚血性ST下降のみられた労作性狭心症 (AP) 28例について, 運動負荷体表面電位図 (map) による虚血部位の部位診断の可能性を検討した.mapは, 運動負荷前後で記録し, J点よりT点の終りまで (U波は含めず) を積分して, ST-T isointegral mapを得た.なお, 健常人10例を対照とした.健常人では, 全例負荷前後でST-T isointegral mapの分布パターンは変化しなかったが, AP28例中23例 (82%) に負荷後分布のパターンの変化をみとめた.変化は, 極小の位置及び陰性領域の分布にしたがって, 前方型・後下方型・側方型・広範型に分けられ, それぞれ運動負荷201Tl心筋シンチグラフィーにて得られた虚血部位とよく一致した.ニトログリセリン (NTG) 舌下後の負荷では, 虚血性ST下降がみられるにもかかわらず, ST-T isointegral mapの異常が消失する例もみられた.以上により, NTGによる心筋血流の改善により, ST-T isointegral mapの異常が消失することは, ST-T isointegral mapの異常例は, ST-T isointegral mapが正常なST下降例に比し, より高度な冠血流減少に伴う虚血を反映するかもしれない.また, ST-T isointegral mapの異常パターンから心筋虚血領域の推定が可能である.
  • ―体表面電位図による検討―
    水谷 真規子, 林 博史, 松井 好美, 大杉 茂樹, 竹内 純
    1986 年 6 巻 5 号 p. 609-614
    発行日: 1986/10/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    標準12誘導心電図III誘導で0.2mV以上のQ波が存在する非梗塞群18例, 下壁梗塞群18例を対象として安静呼気および深吸気時のIII誘導Q波 (QIII) の電位, 前額面平均電気軸, QRS40isointegral MAPを比較検討した.その結果, (1) 深吸気によりQIIIの電位は両群ともに有意に減少したが, 0.2mV以下になるものは非梗塞群に多く, QIIIの減少率は非梗塞群で有意に大きかった. (2) 前額面平均電気軸は両群とも深吸気で20~30°垂直位方向への偏位を示した. (3) QRS40isointegral MAPにおける安静呼気時の負領域は非梗塞群では右胸背部にのみ存在する例が多く, 下壁梗塞群では左胸部下方にまで拡がる例が多かった.深呼気時の負領域は非梗塞群ではより上方に, 下壁梗塞群ではより下方に移動する例が多かった.従って, QRS40isointegral MAPおよびQIII電位の呼吸性変化は, 梗塞の有無により差があり, これらは両者の鑑別に有力な手がかりになることが示唆された.
  • 相沢 義房, 船崎 俊一, 佐藤 政仁, 横山 明裕, 鈴木 薫, 柴田 昭
    1986 年 6 巻 5 号 p. 615-618
    発行日: 1986/10/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    心筋梗塞歴のある55歳の女性に出現した再発性持続性心室頻拍 (VT) に対し電気生理学的検査を行い興味ある所見を得た.VTはプログラム刺激により再現性をもって誘発・停止が可能であった.誘発直後にVTの周期長は数拍にわたり変動を示し, その後270msecと安定した.ジソピラミド400mg/日の経口投与下に薬効判定のために約1週間後にVTの誘発を行った.VTは繰り返し誘発されたが, 周期長は延長しており, ジソピラミドの徐脈作用が認められた.この際VT中, 周期長が442msecから第4拍目の328msecへと徐々に短縮し, 再び442msecになるという周期性の変動を示した.この周期長の変化は, 体表面心電図 (I, II, VI誘導) のQRS波形の変化を伴わず, 心腔内電位図にも一様に認められた.機序としてリエントリー回路からのインパルスのWenckebach型exit blockが最も考えられた.
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