心電図
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41 巻, 4 号
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Editorial
総説
  • 吉良 晋太朗, 安部 一太郎, 髙橋 尚彦
    2021 年41 巻4 号 p. 165-172
    発行日: 2021/12/23
    公開日: 2021/12/24
    ジャーナル フリー

    心外膜脂肪(epicardial adipose tissue:EAT)は心房細動の発症と密接に関与する.筆者らは,心臓血管外科で開胸手術を受けた際に,左心耳切除を施行された心房細動を有する連続59症例を解析した.EAT自体の線維化(fibrotic remodeling of EAT)には大きな個人差があり,EAT自体の線維化が顕著であるほど,隣接する心房筋の線維化も顕著であった.またEAT中のインターロイキン6(IL-6),単球走化性因子(MCP-1),腫瘍壊死因子(TNF-α)など,多くの炎症性サイトカイン/ケモカインおよびMMP2,MMP9の濃度が心房筋の総コラーゲン量と正相関を示した.EAT中のアンギオポエチン様因子2(Angptl2)濃度は,EATの炎症性サイトカイン/ケモカイン,MMP2,MMP9および心房筋の総コラーゲン量と正相関を示した.次に,器官培養法を用い,Angptl2が心房線維化を惹起するかについて検討した.病理解剖が行われた9症例の左房周囲のEATおよび腹部の皮下脂肪(subcutaneous adipose tissue:SAT)から培養実験に用いるconditioned mediumを作成した.一方,8週齢の雄性ラットから左心房を単離し,シャーレ内で1週間,器官培養した.EAT由来のconditioned medium(以下,EAT)は,滴下負荷開始から5~7日後に,器官培養したラット左心房の心外膜側から線維化を惹起した.SAT由来のconditioned medium(以下,SAT)を負荷した左心房には線維化が認められなかった.器官培養したラット左心房にヒトリコンビナントAngptl2(5ng/ml)を心外膜側から滴下負荷したところ,7日後には心外膜側に線維化が惹起され,この線維化はAngptl2の中和抗体を同時投与することで抑制された.

原著
  • 泉 千尋, 藤森 一真, 金森 貴洋, 桑原 洋平, 西谷 彰紘, 鈴木 学, 菅原 誠一, 太田 真之, 佐藤 宏行, 林 健太郎
    2021 年41 巻4 号 p. 173-182
    発行日: 2021/12/23
    公開日: 2021/12/24
    ジャーナル フリー

    心房性頻脈性不整脈(AT/AF)のburdenを減少させる機能として,第2世代心房抗頻拍ペーシング(A-ATP)の有用性が報告されているが,導入後に治療が有効となる症例の特徴は明らかでない.そこでわれわれは,A-ATP(Reactive ATP, メドトロニック社製)作動症例22名の患者背景,心内心電図,12誘導心電図,エコー所見,BNPから治療が有効となる因子を検討した.AT/AF burdenの50%以上減少をA-ATP有効と定義し, AT/AF burden<5%の症例とAT/AFのエピソードが1件のみの症例は治療有効性の判断が困難なため,10名を除外した.有効群(5名)は無効群(7名)と比較して,心内AT/AF average tachycardia cycle length(AvCL)>300ms(28.6% vs 5.2%,p<0.05)および規則的なAT/AF(71.9% vs 48.5%,p<0.05)が多く,AT/AFに対するカテーテルアブレーション(CA)またはMaze手術既往が多かった(80% vs 14%,p<0.02).また,12誘導心電図において有効群はf波のCLが無効群より延長していた(220.5ms vs 141.4ms,p<0.05).A-ATPは延長したAT/AF AvCL,または規則的なAT/AF症例で有効であり,CAやMaze手術の既往,12誘導心電図のf波CL延長が植込み前に観察可能な有効性の予測因子として有用な可能性がある.

Communication
  • 清水 祥子, 山田 雅弘, 加藤 孝和, 芦原 貴司
    2021 年41 巻4 号 p. 183-189
    発行日: 2021/12/23
    公開日: 2021/12/24
    ジャーナル フリー

    症例は70歳,男性.定期健康診断で心電図検査を行った.基本洞調律ではPR間隔は0.14秒,左脚ブロック型QRS波形であったが,非伝導性心房期外収縮に続く休止期の後,右脚ブロック型の補充収縮が出現し,その際PR間隔は洞心拍の0.14秒よりも短い場合のみならず,洞心拍の0.14秒よりも長い,0.20秒でも房室解離を認めた.すなわち,0.14秒で房室伝導すれば左脚ブロック型QRS波形が現れるべきところで,0.14秒よりも長いPR間隔で右脚ブロック型の補充収縮が出現した.また,2拍連続した補充収縮の2拍目は,ほかの補充収縮のRR間隔よりもやや短いRR間隔で出現した.このような補充収縮の出現様式はヒス束内縦解離の存在とヒス束下部での横伝導,および左脚束の伝導障害と補充中枢への不顕性逆伝導を想定することによって,一元的に説明できると考えられたまれな症例であったため,報告する.

  • 高松 幸子, 橘 元見, 井伊 信久, 松本 健佑, 伴場 主一
    2021 年41 巻4 号 p. 190-196
    発行日: 2021/12/23
    公開日: 2021/12/24
    ジャーナル フリー

    【背景】拡大肺静脈隔離(extensive encircling pulmonary vein isolation:PVI)術中の麻酔管理は安全に手技を行う上で不可欠であるが,鎮静,鎮痛薬の使用に定まった方法はない.当院では,プロポフォールにペンタゾシンあるいはフェンタニルを併用している.今回,PVIにおけるフェンタニルの有効性をペンタゾシンと比較検討した.【対象と方法】2016年11月~2018年12月に当院でPVIを行った225人の心房細動患者を対象とした.全例に,鎮静薬としてプロポフォールを使用した.2016年11月~2017年5月にペンタゾシンを併用したペンタゾシン群(P群)62症例,2017年6月~2018年12月にフェンタニルを併用したフェンタニル群(F群)163症例の2群間で,患者背景,術中のプロポフォール投与量,追加投与回数,術後の覚醒時間に関して比較した.【結果】患者の平均年齢は66.9歳で,74%が男性であった.プロポフォールの総投与量[P群:17.5mg/kg(15.6~21.2mg/kg)vs F群:21.6mg/kg(18.4~25.1mg/kg),p<0.01],初期導入時急速投与量[P群:1.9mg/kg(1.6~2.2mg/kg)vs F群:3.4mg/kg(2.9~4.4mg/kg),p<0.01]はF群が有意に多かった.左肺静脈隔離開始からPVI終了までのプロポフォール追加投与量[P群:0.8mg/kg(0.5~1.1mg/kg)vs F群:0.4mg/kg(0~0.8mg/kg),p<0.01],追加投与回数[P群:2.0回(1.0~3.0回)vs F群:1.0回(0~2.0回),p<0.01]はF群が有意に少なかった.プロポフォール中止から抜管までに要した時間(覚醒時間)[P群:17.0分(12.3~21.0分)vs F群:17.0分(13.0~21.5分),p=0.54],プロポフォール中止から退室までに要した時間(退室時間)[P群:40.0分(32.3~47.0分)vs F群:40.0分(35.0~46.0分),p=0.64],手術時間[P群:189分(172~222分)vs F群:184分(162~209分),p=0.11]は2群間で有意差はなかった.【結語】フェンタニルはペンタゾシンに比べ,術中のプロポフォール追加投与量,回数を減少させる可能性がある.

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