心電図
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10 巻, 6 号
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  • 宗 武彦
    1990 年10 巻6 号 p. 759-767
    発行日: 1990/11/30
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    心電信号は, 心臓から体表までの容積導体中の伝達過程で影響を受ける可能性がある.したがって心電信号の詳細な検討に際しては, この影響を考慮した誘導法の選択が重要と考えられるが, 基礎的検討は少ない.そこで著者は, FFTを用いて心電信号の周波数成分に対する容積導体の影響を調べた.結果: (1) 心臓の近接部 (V4) と遠隔部の周波数強度の比をとると, 遠隔部では75Hz付近より低域, 特に20~40Hz付近を中心とした減衰を認め, dipを形成した. (2) このdipは遠隔部ほど深く, その周波数帯域は近接部より遠隔部でより低域であった.以上より, 遠隔部より導出した信号は, 容積導体の通過に際して周波数帯域により異なる減衰を受けるものと考えられた.よって心室遅延電位などの微小心電信号の検出や周波数成分の解析など, 心電信号を詳細に検討する際には, 容積導体の影響を考慮する必要があると考えられた.
  • 池田 隆徳, 杉 薫, 二宮 健次, 円城寺 由久, 箕輪 久, 安部 良治, 西脇 博一, 松井 満治, 吉川 昌男, 矢吹 壮, 町井 ...
    1990 年10 巻6 号 p. 768-773
    発行日: 1990/11/30
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    難治性心房細動あるいは粗動に対する治療として, 房室結節の高周波カテーテル心筋焼灼術が試みられている.既にVVIモードのペースメーカーが植込まれたSSS症例に対しても, 同方法は有効な治療法になると考えられる.そこで今回, 高周波のペースメーカーに及ぼす影響について実験的に検討した.対象として完全房室ブロックが作製された雑種成犬10頭を用いた.インターメディックス社製の植込み型ペースメーカー (282-04, 253-09, 284-02) 作動下で, ノバフレームRA-50 (13.56MHz) あるいはライフラインLL-49 (490kHz) を用い, それぞれの組合せで右室内の4箇所の部位に高周波通電を行った.ペースメーカー機能は通電前後のテレメトリーで評価された.いずれの例も通電中あるいは通電直後に重篤な不整脈や心タンポナーデ, ショック等の合併症はなかった.また電池内部抵抗に可逆的な変動が認められたものの, ペースメーカー機能に異常は認められなかった.高周波のペースメーカーに及ぼす影響は少なく, 臨床応用できる可能性のあることが示唆された.
  • ―ラットの冠結紮モデルを用いて―
    小森 貞嘉, 藤巻 信也, 井尻 裕, 浅川 哲也, 渡辺 雄一郎, 田村 康二, James R Parratt
    1990 年10 巻6 号 p. 774-782
    発行日: 1990/11/30
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    雄SDラットを用いて, 左冠動脈の閉塞, 再灌流, 結紮を行い三つの実験を施行した.1) 各々1, 3, 5分の虚血後10分間の再灌流を行い, さらに結紮を行い, 心筋梗塞を作成, 30分間不整脈を観察し虚血の前処置をしないコントロール群と比較した.総VPC数はコントロール群: 1, 236±262 (M±SE) , 1分虚血群: 1, 230±370, 3分虚血群: 200±60 (p<0.01) , 5分虚血群: 394±152拍 (p<0.01) で, VT発生率は各々100, 100, 70, 60% (p<0.01) , VTの持続時間は各々95.6±28.7 (M±SE) , 109.8±30.9, 12.6±3.8 (p<0.05) , 55.1±20.3秒, Vf発生率は各々42, 50, 19, 30%であった.2) 3分間の虚血後の再灌流時間を10, 20, 30分と延長し抗不整脈作用の変化を検討した.再灌流時間を延長するに従い抗不整脈作用は減弱した.3) Evansblueを用いて虚血サイズの検討をコントロール群と3分虚血10分再灌流群の2群で行ったが, 各々左室心筋量の53.7±1.4%, 51.8±1.0%で有意差がなかった.
  • 本間 友基
    1990 年10 巻6 号 p. 783-796
    発行日: 1990/11/30
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    発症後36時間以内に入院し, 8週間経過を観察し得た急性心筋梗塞 (AMI) 109 (前壁66, 下壁43) 例につき経時的に心電図を記録し, 梗塞部誘導で, QTcと陰性T波 (NT) の深さを測定し, 梗塞部位, 心膜炎, 心室瘤, 冠動脈造影所見等の臨床像との関係を検討した.QTcはNTと密接な相関を示し, ともに発症後48時間後にpeak (T1) を認め, 5~8日で正常化 (T2) し, 3週後に再びpeak (T3) を示した後漸減し, 8週 (T4) にいたり, 四つの時相に分けられた.T1, T3期では梗塞範囲が狭く, 心室瘤を合併しない例で, QT延長と深いNTを示し, T1期のpeak時間は冠動脈が早期に再開通するほど早かった.T2期では梗塞範囲が広く炎症所見が強いほど, 早期にNTが消失しかつ消失期間も長かった.T4ではT1, T3とは逆に心室瘤を含む梗塞範囲が広い例や冠動脈の完全梗塞例でQT延長を認めた.AMI後のQT時間, 陰性T波は梗塞の治癒過程に伴い変動し, 梗塞範囲, 心室瘤, 冠動脈再開通様式を反映すると考えられた.
  • 宮原 英夫, 白鷹 増男, 池田 憲昭
    1990 年10 巻6 号 p. 797-806
    発行日: 1990/11/30
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    散発する上室性あるいは心室性期外収縮や心房細動に比べると, 多発性の心室性期外収縮や, 第2度房室ブロック, 第3度房室ブロックなどは臨床の場で経験される機会が少なく, それらに対する心電図自動解析装置の診断能力が十分に調べられていない.私たちは, 変調副調律モデルをコンピュータに乗せて, これらの不整脈時系列を発生する装置を製作し, その出力信号に対して, 装置がどのように応答するか, 診断ステートメントを中心に調べてみた.対象はわが国で普及している6種を選んだ.テストに使用した時系列は, 正常洞調律, 第1度, 第2度, 第3度房室ブロック, 心室性2段脈, 心室性3段脈, 心室性副調律などである.正常洞調律, 第1度房室ブロックに対しては, 全部の装置が, 臨床医の下した診断と一致する結果を, 再現性良く与えた.しかしながら, それら以外の不整脈時系列に対しては, 入力した時系列に対応する診断カテゴリー名を装置が用意しているにもかかわらず, しばしば別の診断カテゴリー名が与えられた.これらの結果から, 臨床的に発生頻度の低い不整脈に対する心電図自動解析装置の診断性能を調べる一手段として, 私たちの装置を用いる繰り返しテストは有用であると考えられた.また, この方式によって, 各装置の信号処理の特徴が, 手軽にかつ高い再現性をもって示されるので, 診断論理の検討にも利用できるのではないかと考えられた.
  • 牧 晴美, 小沢友 紀雄, 谷川 直, 渡辺 一郎, 長沢 正樹, 児島 隆介, 陣野 和彦, 矢久保 修嗣, 笠巻 祐二, 高橋 義和, ...
    1990 年10 巻6 号 p. 807-813
    発行日: 1990/11/30
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    加算平均心電図 (SAE) を使用し, 急性心筋梗塞に対する早期再灌流療法と心室遅延電位 (LP) の関係を急性期と慢性期で検討した.早期再灌流療法 (direct PTCA29例, PTCR4例) 施行群 (A群) 33例と非施行群 (B群) 31例を対象にSAEを施行し, 両群間のLP検出率の差を検討した.さらにLP検出率と再灌流までの時間, 左室駆出率 (EF) , 責任冠動脈および持続性心室頻拍 (sVT) との関連等を検討した.LPの検出率は急性期, 慢性期ともにA群が低値で, 発症4時間以内に再灌流した16例は, 左主幹部閉塞の1例を除き慢性期はすべてLP陰性であった.EFはB群に比べA群が有意に良好であった (p<0.05) .責任冠動脈別のLP検出率は右冠動脈, 左前下行枝ともにA群が低値であった.一方, 急性期, 慢性期ともにsVTを認めた例には高率にLPを検出した.SAEは急性心筋梗塞発症早期に行った再灌流療法の効果判定の一つとしても有用であると考えられた.
  • 斎藤 誠, 都田 裕之, 福木 昌治, 縄田 隆浩, 土井 哲也, 長谷川 純一, 小竹 寛, 真柴 裕人, 笠木 重人, 井後 雅之, 大 ...
    1990 年10 巻6 号 p. 814-820
    発行日: 1990/11/30
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    Duchenne型進行性筋ジストロフィー症 (DMD) 患者と筋緊張性ジストロフィー症 (MyD) 患者を対象とし, 平均加算心電図による心室遅延電位 (LP) の検出を試み, さらに心エコー図 (2-Decho) により左室障害の有無を検討した.標準12誘導心電図でQRS時間が100msec以下で脚ブロックの所見のないDMD19名 (17±6歳) とMyD9名 (39±19歳) では, 2-D echoでは左室収縮指標はMyDに比しDMDで有意に低値であり, 左室壁運動異常はDMDで有意に高頻度を示した.2-D echoの結果は一般にDMDに心不全が高頻度である事実と対応していた.DMDではLPを全く検出せず, MyDでは4例 (44%) にLPを認め有意に高率であった.LP陽性のMyDでHolter心電図を施行したが, 心室頻拍 (VT) の所見は得られなかった.しかし, 文献上, MyDではVTやVTによる突然死の報告がある.LP陽性MyDの一部では, LPがVTの発生に関連する可能性があり, 今後の検討が必要である.
  • 住友 直方, 岩田 富士彦, 牛之濱 大也, 山下 恒久, 岡田 知雄, 原田 研介, 大国 真彦
    1990 年10 巻6 号 p. 821-826
    発行日: 1990/11/30
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    新生児期発症の上室性頻拍10例に電気生理学的検討を行い, 頻拍消失に関する因子, 新生児期の副伝導路の経時的変化に関して検討を加えた.乳児期以後も頻拍が誘発されやすい例は, 1) 新生児期の心電図でデルタ波を認め, それ以後もデルタ波が消失しない例, 2) B型のWPW症候群, であった.逆に, 頻拍が消失する可能性が高い例は, 1) 新生児期の心電図でデルタ波を認めない例 (すなわち潜在性WPW症候群) , 2) A型のWPW症候群, 3) follow up中にデルタ波が消失する例, であった.
    副伝導路の経時的変化には, 電気生理学的にみて, 副伝導路の逆伝導時間の延長と, 順行性有効不応期の延長が関与すると思われた.
  • ―特に心房細動, 房室ブロックについて―
    小峰 慎吾, 武者 春樹, 大谷 余志, 坂本 静男, 板井 勉, 太田 明生, 村山 正博
    1990 年10 巻6 号 p. 827-832
    発行日: 1990/11/30
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    未治療甲状腺機能亢進症患者40例にHolter心電図を用い, 出現する不整脈を検討した.
    心房細動は約10%の患者にみられ, 年齢の高い男性に高頻度であった.洞房ブロック, I度およびII度房室ブロックもそれぞれ8%, 10%と多く, これらは若年女性の睡眠中に多かった.
    甲状腺機能亢進症患者では, 少なくとも若年者においては, 副交感神経緊張型の不整脈の発生が多く, 副交感神経トーヌスは低下していないものと考えられた.
  • 大森 斎, 井上 大介, 白山 武司, 宮崎 浩志, 辰巳 哲也, 朝山 純, 勝目 紘, 中川 雅夫
    1990 年10 巻6 号 p. 833-842
    発行日: 1990/11/30
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    高位右房電位幅 (Aw) による心房受攻性 (AV) の評価の問題点を検討した.心房細動 (Paf) 群と対照群各35例ずつで, repetitive atrial response (RAR) , %maximum atrial fragmentation (%MAF) , fragmented atrial activity zone (FAZ) , Awの早期刺激間隔短縮に伴う変化の時定数 (τ) , 右房有効不応期 (RAERP) を測定比較した.その結果, RARとRAERPによるAVの評価は困難であったが, %MAF, FAZ, τはPaf群で有意に延長を示し (各p<0.01) , AVのよい指標であった.しかし, RAERPの長い症例においては%MAF, FAZはAVを過小評価する可能性があった.τのAV評価におけるRAERPの影響は少なかったが, 測定不能例が全体の29%存在し, この中にはAVを有する例と認めない例が混在し, τによる両者の鑑別はできなかった.また, これらの指標の敏感度と特異度は%MAFとFAZとτを組み合わせた際に最も良好であった.以上から, AwによるAVの評価には%MAF, FAZ, τの相補的使用が必要と考えられた.
  • 池田 隆徳, 杉 薫, 円城寺 由久, 箕輪 久, 西脇 博一, 松井 満治, 安部 良治, 吉川 昌男, 矢吹 壮, 町井 潔
    1990 年10 巻6 号 p. 843-850
    発行日: 1990/11/30
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    洞機能不全を伴った心房内リエントリー性頻拍の1例で特異な電気生理学的所見を得た.症例は46歳女性, 主訴は動悸とめまいである.心電図上2: 1あるいは1: 1の房室伝導を示す発作性上室性頻拍が認められ, 電気生理学的検査により心房内リエントリー性頻拍および洞機能不全と診断された.頻拍時の心内心電図では, 2種類の心房興奮様式が交互に認められ, 一つは低位右房一高位右房-冠静脈洞の順であり, もう一つは冠静脈洞一低位右房-高位右房の順であった.冠静脈洞を起源とした場合には高位右房において明らかに分裂した心房波が認められ, また頻拍時あるいは洞調律時に心房頻回刺激を行ったところ, 高位右房において伝導遅延を認めたため, リエントリーのslow conductionの部位は高位右房に存在すると考えられた.頻拍中の心房興奮順序から重複したリエントリー回路の存在が想定されたが, その解釈に関して難渋した症例であったため報告した.
  • 佐々木 康之, 降旗 章子, 須山 和弘, 降旗 康敬, 古田 精市, 大江 透, 磯部 文隆
    1990 年10 巻6 号 p. 851-859
    発行日: 1990/11/30
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    症例は60歳の男性.急性前壁心筋梗塞発症12日目にsustainedVTからVFとなりDCにて救命された.CAGでは, 右冠動脈は左バルサルバ洞より起始し, #6-99%, #13-90%の狭窄を認め, LVGでは#2, 3, 4, 6が心室瘤を形成し, 造影から求めたLVEFは28%, LVEDPは28mmHgであった.電気生理学的検査にて左室内に多数のfragmented electrogramを認め, プログラム刺激にて1種類のVT (左脚ブロック, superior axis) の誘発, 停止が再現性をもって可能であり, pace-mappingおよびVT中の最早期興奮部位所見からLV apical septumからRV apical septumへbreak-throughするreentrant VTと診断した.Procainamide, mexiletine投与の薬効評価は無効で外科的に心内膜切除, 瘤切除, CABGを施行した.術後体表面よりのlate potentialは消失し, 不整脈もなく, 患者は良好な経過をとっている.
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