心電図
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32 巻, 3 号
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Editorial
原著
  • 中山 雅文, 山科 章, 寶田 顕, 松下 広興, 富田 任, 佐藤 政仁, 岡部 正明, 齋藤 友紀雄, 矢崎 義直, 五関 善成, 相澤 ...
    2012 年 32 巻 3 号 p. 221-228
    発行日: 2012年
    公開日: 2015/07/16
    ジャーナル フリー
    近年,J波は突然死との関連で注目されている.ここでは標準12誘導心電図と,右胸部誘導や背部誘導を含めた18誘導心電図でのJ波の頻度を検討した.対象は東京医科大学病院循環器内科を受診し,18誘導心電図の記録がなされた連続393例である.伝導障害や心室ペーシング中の例は除外した.右胸部および背部誘導でJ波の頻度を検討し,これらの誘導での実記録と標準12誘導心電図をもとに理論的に導出したJ波を比較検討した.標準12誘導心電図でJ波は150例(38.2%)に認められ,なかでも,II,aVFに多くみられた.これらの症例の18誘導心電図記録では,J波は右胸部誘導に9例(2.3%),背部誘導に102例(26.0%)で認められた.標準12誘導心電図でJ波が認められなかった243例中の30例(12.3%)で,背部誘導にJ波を認めた.実測の右胸部および背部誘導波形と理論的に求めた波形はよく一致し,J波高も良好な相関を示していた(相関係数0.872~0.965,p<0.001).右胸部や背部のJ波は新しい心電計により予測可能で付加的な情報をもたらすといえるが,J波の成因や意義については今後さらに検討を要する.
  • 安部 朋美, 深水 誠二, 赤澤 良太, 名内 雅宏, 西村 卓郎, 渡邉 智彦, 岩澤 仁, 島田 博史, 石川 妙, 松下 紀子, 北條 ...
    2012 年 32 巻 3 号 p. 229-238
    発行日: 2012年
    公開日: 2015/07/16
    ジャーナル フリー
    発作性心房細動(PAF)を有するBrugada型心電図の患者における肺静脈隔離(PVI)の有効性に関する報告は,限られている.対象はPAFに対してPVIを施行されたBrugada型心電図をもつ連続18症例(男17例).平均年齢は57±10歳.Brugada症候群における失神や心室細動などの症状については,有症候性3例,無症候性15例であり,心電図についてはspontaneous coved型3例,薬剤誘発性coved型13例,saddleback型2例であった.18例中4例で植込み型除細動器(ICD)を施行していたが,3例でPAFによる不適切作動を認めた.Lone AF群30例を対照として,PVI後の経過および電気生理学的特性について比較検討を行った.年齢,PVI施行回数,PVIの手法は両群で有意差を認めず,intra-atrial conduction timeおよび各肺静脈の有効不応期には有意差を認めなかった.PVI後の心房細動再発イベントフリー生存率は両群で有意差を認めず,良好であった(87% vs. 89%, p=n.s.).Brugada型心電図の患者においても,PVIはlone AFの患者と同様に有効であると考えられた.
  • 杉山 裕章, 今井 靖, 永井 良三
    2012 年 32 巻 3 号 p. 239-247
    発行日: 2012年
    公開日: 2015/07/16
    ジャーナル フリー
    【背景】循環器分野における音声認識技術の有効性の検討やシステムを比較した研究は少ない.【方法】連続293例のホルター心電図(AECG)に対し,音声認識ソフトウェアを用いて判読レポート作成を行った.基本アプリケーションは共通(AmiVoice Ex7)とし,音声入力法として,ハンドマイク(HM)またはヘッドセット(HS)を選択した.音声認識に使用する語彙データベースとして,前者には循環器用語の変換能を強化した電子辞書,後者には一般辞書を用いた.手法ごとにレポート作成の所要時間などを比較した.【結果】HM群(140例)よりもHS群(153例)ではレポート作成時間が短く(615.5秒 vs. 516.0秒,p=0.001),有意所見が増加しても同傾向は維持された.【結語】HSおよび循環器用語の変換に優れた音声認識ソフトウェアを用いたシステムは,AECGレポート作成に際し,作成時間短縮などの時間効率に優れたハンズフリー環境を提供することが示唆された.
心電学マイルストーン
モデル解析の視点
心電図講義
追悼
心電学フロンティア2011(第46回理論心電図研究会)
  • 古川 哲史, 小泉 章子, 笹野 哲郎
    2012 年 32 巻 3 号 p. 279-285
    発行日: 2012年
    公開日: 2015/07/16
    ジャーナル フリー
    早期再分極異常症候群は,2008年Haïssaguerreが,下壁側壁誘導においてQRS波とSTの境界J点の0.1 mV以上の上昇を示す心電図が特発性心室細動患者で有意に多いことを報告してから注目されるようになった.その発生機序が再分極異常(早期再分極)にあるのか,もしくは脱分極異常(脱分極の遅延)にあるのかは,争点のひとつとなっている.今回,His-Purkinje系に特異的に発現し,コネキシン40の発現を制御する転写因子のノックアウトマウスを作成したところ,このマウスはHis-Purkinje系の伝導障害を有することがわかった.マウス心電図でJ点の温度依存性の上昇,心筋梗塞後2~7日における持続性心室頻拍,非持続性心室頻拍のストーム,心室期外収縮の頻発など早期再分極症候群に類似の表現型が観察された.早期再分極症候群の機序として,脱分極異常が関与しているものと考えられる.
  • 渡部 裕
    2012 年 32 巻 3 号 p. 286-291
    発行日: 2012年
    公開日: 2015/07/16
    ジャーナル フリー
    QT短縮症候群は,著明なQT短縮と心室細動による突然死を特徴とする遺伝性不整脈症候群であり,現在までに5つの原因遺伝子が同定されている.心電図上の早期再分極は長年にわたって良性な所見とされてきたが,近年,心室細動や突然死との関連が相次いで報告され,注目を集めている.このうち,Haïssaguerreらによる報告において,早期再分極とQT間隔の短縮の関連性を示唆する所見が含まれていた.そこでわれわれは,QT短縮症候群における早期再分極の役割について検討したところ,QT間隔が正常なコントロールならびにQT間隔が短縮しているが不整脈発作をきたしたことのないコントロールに比べ,QT短縮症候群症例では,早期再分極を認める頻度が高いことが明らかとなった.また,QT短縮症候群において早期再分極は不整脈イベントに関係していた.詳細な機序は不明であるが,早期再分極は心室細動に対する受攻性の増加を反映していると考えられる.
  • 中川 幹子, 江崎 かおり, 宮崎 寛子, 手嶋 泰士, 油布 邦夫, 高橋 尚彦, 犀川 哲典
    2012 年 32 巻 3 号 p. 292-299
    発行日: 2012年
    公開日: 2015/07/16
    ジャーナル フリー
    早期再分極に見られる心電図所見の特徴は,J点の上昇およびJ波(QRS終末部に見られるノッチもしくはスラー)の存在である.J点上昇とJ波では出現頻度や出現誘導が異なっており,臨床的意義は同一ではないと考えられる.すなわち,健常若年男性に見られるJ点上昇はV2~V4誘導で高率に認められるのに対し,J波は主に下壁誘導とV4~V6誘導に出現する.われわれの検討では,J波は男性の12.0%,女性の9.3%に認められ,若年群と高齢群にピークを有する2峰性パターンを示した.ホルター心電図を用いた検討によると,健常人においてもJ波は夜間に増高する日内変動を示し,心拍数や自律神経活動に影響を受けることが示された.加算平均心電図を用いた検討では,J波はQRS内部に含まれていた.また,心エコー図上,左室内に心室中隔から乳頭筋に付着する偽腱索をもつ症例では,J波の合併率が有意に高く,これらの心室内構造物がJ波や不整脈の発生と関連がある可能性が示唆された.
  • 清水 渉, 河田 宏, 森田 宏, 伊藤 浩, 鎌倉 史郎
    2012 年 32 巻 3 号 p. 300-304
    発行日: 2012年
    公開日: 2015/07/16
    ジャーナル フリー
    2008年にHaïssaguerreらは,明らかな器質的心疾患を有さない特発性心室細動(IVF)患者206例中64例(31%)において,下壁(II, III, aVF)または前側壁(I, aVL, V4~V6)誘導心電図でJ波または早期再分極(early repolarization)パターンを認めることを報告し,早期再分極症候群(early repolarization syndrome : ERS)という概念を提唱した.一方で,右側胸部(V1~V3)誘導でJ点およびST上昇を認めるBrugada症候群も,同じく明らかな器質的心疾患を有さずVFを主徴とする疾患である.著者らの経験したVF既往のある49例のBrugada症候群患者において,15例(30.6%, P群)では常に,16例(32.6%, I群)では間歇的に下壁または前側壁誘導でJ波が記録されたが,残りの18例(36.7%, N群)では記録されなかった.経過観察中,VFの再発はP群,I群,N群の順に多く,Brugada症候群においてもJ波とVF発作の関連が示唆された.ERSとBrugada症候群は,J波症候群という概念で機序を同じとすると考えられているが,Na+チャネル遮断薬静注に対する反応は異なる.すなわち,Na+チャネル遮断薬によりBrugada症候群のST上昇は増強するが,Brugada症候群およびERSのJ波は減高することから,その機序は必ずしも同じではないと考えられる.
  • 池田 隆徳, 阿部 敦子, 三輪 陽介, 星田 京子
    2012 年 32 巻 3 号 p. 305-310
    発行日: 2012年
    公開日: 2015/07/16
    ジャーナル フリー
    特発性心室細動(IVF)の発現において,近年J波の関与が注目されている.J波は早期再分極異常ととらえられているが,QRS波終末部で記録されるため,考え方によっては脱分極異常としてとらえることもできる.IVF患者において心電学的リスク指標を評価したところ,J波は脱分極異常を反映する心室late potentials(LP)と有意な関連性を示したのに対して,再分極異常を反映するT-wave alternansやQT間隔解析指標とは関連性を示さなかった.LPの各パラメータは,J波を有するIVF患者では日内変動をきたした.また,J波は心拍変動解析の迷走神経活動指標であるHF成分と正の相関関係を示した.さらに,J波を有する若年のIVF患者において薬効を評価したところ有効な薬物はなかったが,J波がないかJ波があっても変動しない10歳代のIVF患者ではβ遮断薬が有効であった.このように,早期再分極症候群またはJ波症候群とも称されるJ波を伴うIVF患者でのリスク評価法や薬物効果が,徐々にではあるが明らかにされつつある.
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