心電図
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33 巻, 3 号
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Editorial
原著
  • 小谷 英太郎, 新 博次, 井上 博, 奥村 謙, 山下 武志
    2013 年 33 巻 3 号 p. 195-208
    発行日: 2013年
    公開日: 2015/07/27
    ジャーナル フリー
    心房細動症例の抗凝固療法において,ブコロームがワルファリンの減量目的にしばしば併用される.しかし,我が国のワルファリン治療におけるブコローム併用の現状と実際のワルファリン投与量に与える影響に関する全国規模での検討はなされていない.そこで,J-RHYTHM Registry登録時にワルファリン投与中であった6,932例のブコローム併用の有無を調査し,その施設別および地区別のブコローム併用率とワルファリン投与量との関連を検討した.ブコロームは158施設中64施設(40.5%),計297例(4.3%)に併用され,ブコローム併用例のワルファリン投与量は非併用例の約半量であり,有意な減量効果を認めた(1.4±0.7mg/日vs. 2.9±0.4mg/日,p<0.001).各施設のブコローム併用率は施設間で大きな差があり(0~88.9%),施設別平均ワルファリン投与量と負の相関を認めた(r=-0.59,p<0.001).地区別の併用率は,北越地区が27.3%と最も高く,九州地区と中国地区は1%未満と低率であった.全国10地区間に有意な差を認め(p<0.001),地区平均ワルファリン投与量と負の相関を認めた(r=-0.71,p=0.021).ブコローム併用療法は,有意なワルファリン減量効果を認め,その併用率には大きな施設間差,地区差が存在した.
症例
  • 入江 忠信, 金古 善明, 中島 忠, 飯島 貴史, 太田 昌樹, 田村 未央, 飯塚 貴士, 田村 峻太郎, 齋藤 章宏, 倉林 正彦
    2013 年 33 巻 3 号 p. 209-216
    発行日: 2013年
    公開日: 2015/07/27
    ジャーナル フリー
    左室起源の持続性心室頻拍(持続性VT)に対し,経心房中隔アプローチにて良好な長期成績が得られた2例を報告する.【症例1】81歳,男性.大動脈弁閉鎖不全症に対するBentall術の既往がある.心房中隔穿刺により僧帽弁経由で左室をマッピングしたところ,左室側壁心基部側の低電位領域(LVZ)に電気生理学的に起源を同定し線状にアブレーションした.以後2年間,VTの自然発作は減少した.【症例2】81歳,男性.陳旧性下壁梗塞と,経大腿動脈的に施行した経皮的冠動脈形成術後に脳梗塞を発症した既往がある.心房中隔穿刺を行い左室にアプローチし,下壁のLVZに電気生理学的に同定した起源に対し線状アブレーションしたところ,VTは誘発不能となった.その後,3年間VTの再発はない.【総括】経心房中隔アプローチは,症例ごとに適したガイディングを選択する必要があるが,経大動脈アプローチと同様に左室心内膜面全体のsubstrate map,activation mapが可能であり,経大動脈アプローチが不可能・不適切な左室心内膜側起源,特にアプローチしやすい下壁・側壁起源のVT例に対し有用な手段である.
モデル解析の視点
心電図講義
Letter
第29回日本心電学会学術集会 第1回アブレーション・デバイスサミットより 致死性不整脈への挑戦
  • 合屋 雅彦
    2013 年 33 巻 3 号 p. 252-257
    発行日: 2013年
    公開日: 2015/07/27
    ジャーナル フリー
    1980年代にはCCUの導入により心筋梗塞の急性期の生命予後が改善され,その後,心筋梗塞の亜急性期から遠隔期に生じる致死性不整脈による突然死が問題となった.80年代後半に行われた抗不整脈薬による一次予防試験により,抗不整脈薬の予防投与は無効であるのみならず,生命予後をむしろ悪化させることが明らかとなり,2000年代初頭にICDの予防的留置が有効であることが報告された.しかしながらICDの作動例,特にstorm群の予後が悪く,加えて予防的留置を行った症例での21ヵ月間の作動率は約4分の1と低く,予防的留置が必要な症例の選別が必要であることも併せて明らかとなった.一方,カテーテルアブレーションは3次元マッピングシステムとそれによるsubstrateマッピング,心外膜側アプローチの導入などによりその成績は飛躍的に改善している.陳旧性心筋梗塞に合併する致死性心室不整脈の領域において,現在予防的ICD留置を真に必要とする群の選別,1次予防としてのカテーテルアブレーションの有用性の検討,抗不整脈とのハイブリッド療法などが課題である.
  • 関口 幸夫
    2013 年 33 巻 3 号 p. 258-262
    発行日: 2013年
    公開日: 2015/07/27
    ジャーナル フリー
    【背景】拡張型心筋症(DCM)に伴う心室頻拍(VT)に対する心カテーテルアブレーション(ABL)治療の進歩には,目を見張るものがある.【目的】DCM-VT 23例(58±10歳,男性17例)に対してABLを施行し,有用性について検討した.【方法】まず,左室心内膜側のsubstrate mapを作成.次にVTの誘発を行いactivation mappingの作成を試みるが,血行動態が不安定の場合にはsubstrate mapをもとに焼灼を行った.成功が得られない場合には,心外膜側からのABLを追加した.【結果】6例に頻拍時のactivation map作成が可能であった.12例(52%)に心外膜側からのABLを施行,2.9±2.0年の観察期間において17例(74%)にVTの再発を認めていない(平均手技回数1.3回).【結語】DCMではVTの基質が心内膜側のみならず心外膜側に存在していることがあり,これらを詳細にマッピングすることがABLの成功率向上につながる.
  • 里見 和浩, 岡松 秀治, 和田 暢, 井口 公平, 小林 貴, 船迫 宴福, 川上 大志, 大塚 陽介, 中島 育太郎, 野田 崇, 宮本 ...
    2013 年 33 巻 3 号 p. 263-269
    発行日: 2013年
    公開日: 2015/07/27
    ジャーナル フリー
    心室頻拍(VT)を合併する特殊心筋疾患は,催不整脈性右室心筋症(ARVC)や心サルコイドーシスが主である.【方法】VTを合併するARVC 84例,および心サルコイドーシス17例におけるアブレーション成績と長期予後を検討した.【結果】ARVCでは,平均9.2±6.5年の経過観察中に,VTの再発は31例(37%),心不全での入院は18例(21%),心原性死亡は7例(8%),心臓突然死は5例(6%),心不全死は2例(2%)に認めた.アブレーションは48例に施行し,81%でVTの誘発不能となった.経過観察中31%でVTの再発を認めた.心サルコイドーシスに伴うVT 17例に対し,アブレーションを施行したところ,9例(53%)で成功,1例は心外膜アプローチが必要であった.平均49±58ヵ月の経過観察期間中,アブレーション成功例9例中2例(22%)でVTが再発した.【結果】ARVCおよび心サルコイドーシス患者に対するVTアブレーション成績はいまだ不十分であり,今後の成績改善が待たれる.
第29回日本心電学会学術集会 第1回アブレーション・デバイスサミットより 心房細動を極める──最先端施設の現状を識る
  • 吉賀 康裕
    2013 年 33 巻 3 号 p. 270-275
    発行日: 2013年
    公開日: 2015/07/27
    ジャーナル フリー
    肺静脈隔離術(PVI)は心房細動(AF)に対する有効な治療法として確立しているが,長期持続性AFに対するPVIの再発率は,発作性AFおよび持続時間の短い持続性AFに比べて高い.そのため,complex fractionated atrial electrograms(CFAEs),線状アブレーションなどのsubstrate modificationの追加が提唱されている.Asklepios Klinik St. Georgでは,PVI後に電気的除細動を行ったにもかかわらず停止しない長期持続性AF症例を中心に,CFAEsなどのsubstrate modificationを施行してきた.同ストラテジーにより,202例の長期持続性AFに対して383アブレーションを施行し,97例(48%)でCFAEs,線状アブレーション,上大静脈隔離を必要とし,最終アブレーション後4.7年のフォローアップ中91例(45%)で洞調律維持が可能であった.PVIのみを施行された105例中49例(47%)はPVIのみで洞調律が維持された.長期持続性AF症例においても,PVIのみで洞調律が維持される症例が少なからず存在しており,最初のステップにおいてはPVIの効果を確認することの重要性を示しているものと考えられる.
  • 桶谷 直也
    2013 年 33 巻 3 号 p. 276-282
    発行日: 2013年
    公開日: 2015/07/27
    ジャーナル フリー
    心房細動(AF)の興奮パターンはランダムで,固定された回路は存在しないという考え方が現在のところ通説である.しかし,われわれはAFは必ずしもランダムなものではなく,時間的・空間的に安定した基質が存在すると考えている.それがcomplex fractionated atrial electrogram(CFAE)である.CFAEはAFのすべての病期における基質を示しており,よいアブレーションターゲットとなりうる.方法論については,(1)AF中に左房・冠状静脈の3次元マップを作成し,CFAEを認めた領域にタグをつける,(2)マップを完成させた後,タグ,ならびに好発部位を中心に“時間的・空間的に安定している”CFAEを“領域として”アブレーションする,ことにより高率にAFを停止させうるというものである.なお,心臓副交感神経節(GP)存在部位はCFAEの好発部位である.本稿ではこれらとともに,著者の留学先の指導者であるNademanee先生についてもふれたい.
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