心電図
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6 巻, 2 号
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  • 前原 和平, 興野 春樹, 貴田岡 成憲, 清水 芳雄, 丸山 幸夫, 芦川 紘一, 猪岡 英二, 滝島 任
    1986 年 6 巻 2 号 p. 99-106
    発行日: 1986/04/30
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    急性貫壁性心筋虚血時のST偏位分布を決定する機序として, 傷害電流源が虚血境界面にのみ存在するとする立体角理論が適用し得るか否かにつき検討した.分離冠灌流等容収縮摘出犬心を恒温生食水槽内に懸垂し, 5分間の冠結紮により生ずるST偏位を, 心筋内, 心表面, 体表面の計246電極を用いて連続的に計測した.虚血境界面は実験終了後, 冠動脈造影法により求めた.境界面と全電極の位置を同一三次元座標上で計測し, 虚血境界面が各電極に張る立体角を全電極につき計算し, 実測したST偏位と比較した.心表面と体表面のST偏位分布は異なっていたが, 実測ST偏位と立体角の間には, 心内膜下, 心表面, 体表面の三誘導ともに高い相関が認められ, 虚血境界面が各電極に張る立体角は, 急性貫壁性虚血時のST偏位分布を決定する主な因子であると考えられた.
  • 野崎 彰, 戸田 為久, 杉本 恒明, 真島 三郎
    1986 年 6 巻 2 号 p. 107-109
    発行日: 1986/04/30
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    心筋の障害, 虚血に際して発生する傷害電流を定量的に評価するために, 雑種成犬20頭の摘出心をLangendorf法にて灌流し, 左冠動脈前下行枝支配領域を高カリウム濃度のTyrode液にて選択的に灌流し, その際生じるST偏位を観察した.ST偏位の大きさは灌流カリウム濃度の上昇に伴い大きくなったが, 30mEq/L以上の高濃度ではST偏位の伸びは頭打ちとなった.空間的な境界面の大きさを測定し単位面積当りのST偏位を求めると0.13mV/cm2となり, 1 mA・cmの人工双極子を用いた較正では, 傷害電流の起電力は単位面積当り0.1mA・cmに相当した.
  • 井上 通敏, 堀 正二, 福並 正剛
    1986 年 6 巻 2 号 p. 111-116
    発行日: 1986/04/30
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    心電図ST偏位は虚血部と非虚血部との境界面を横切って流れる傷害電流によって生じた胸壁面の電位変化である.ST偏位の大きさは、胸壁面の誘導点が虚血・非虚血境界面に対して張る立体角に比例することが認められている.この理論を応用して, 胸壁面でのST偏位の分布を計測し, 虚血・非虚血境界面の大きさを解き, これによって虚血巣の大きさを推定しようとするのが, 立体角度理論に基づいたST逆方向問題である.著者らは, 27例の急性心筋梗塞症を対象に, 胸壁面ST電位分布を計測し, 虚血・非虚血境界面を心外膜面に位置する円板に置き換えて, この円板の位置・向き・大きさを解くことにより心筋梗塞の部位と大きさを求めた.その結果, 心電図ST電位分布から推定された円板の大きさとΣCPKとの間に良い相関 (r=0.816) を得ることができた.
  • 渡辺 佳彦, 野村 真一, 中野 博, 安保 泰宏, 高亀 良治, 野村 雅則, 岡島 智志, 菱田 仁, 水野 康
    1986 年 6 巻 2 号 p. 117-124
    発行日: 1986/04/30
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    心筋虚血に基づく心電図変化を労作性狭心症25例と急性心筋梗塞症53例について, 体表面電位図 (map) の立場から, その虚血巣の部位および拡がりの推定が可能か否かを検討した.Mapは山田らの87誘導点法を用い, HPM-6500システムにて記録した.
    狭心症においては心中心と体表面上の各誘導点間の距離 (r2) によって, 運動負荷時のSTmapを補正した.この補正STmapの極小値の位置と数によりこれまで困難とされてきた左前下行枝病変, 右冠動脈病変, 多枝病変例の鑑別が可能と思われた.
    急性心筋梗塞症においては, 正常からの偏位をしめすdeparture area (DA) をもとめた.前壁梗塞ではDAは平均20msecの時点で最大となりpeakCK量とr=0.75の相関を, 下壁梗塞では32msecで最大となりpeak CK量とr=0.60の相関を認めた.DAの出現部位は両群で明らかな差異を示した.
  • 川久保 清, 川原 貴, 中島 敏明, 杉本 恒明, 村山 正博
    1986 年 6 巻 2 号 p. 125-131
    発行日: 1986/04/30
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    運動負荷心電図による心筋虚血の診断上問題となる偽陽性ST下降との鑑別, 陰性U波 (NU) の意義, STマッピング (STmap) による虚血部位の推定についての検討をおこなった.
    (1) 偽陽性ST下降を示す女性26例と労作狭心症14例を対象とし, トレッドミル運動負荷試験終了後の体位 (立位, 臥位) のST下降の回復過程に及ぼす影響を調べた.偽陽性例では立位の方がST下降の回復が遅延したが, 狭心症例では両体位に差がみられなかった.
    (2) 虚血性心疾患103例中, NUが運動負荷にて誘発された30例について, NUの出現消失時相とST偏位のそれを比較した.NUの運動中の出現時間, 回復期の消失時間共にST偏位のそれより早い傾向にあった.
    (3) 運動負荷にてST下降のみられる狭心症51例について, STmapと冠動脈造影, タリウム心筋シンチ所見とを比較した.STmapの分布の偏りから虚血領域を推定できる例が少なからずみられた.
  • 久保田 功, 安井 昭二
    1986 年 6 巻 2 号 p. 133-137
    発行日: 1986/04/30
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    ジピリダモール負荷心電図法の臨床的意義を知る目的で, 冠動脈疾患患者21名を対象とし, ジピリダモール0.568mg/kgを4分間かけて静注し, 87誘導点体表面マッピング法により, ST低下の体表面分布様式を亜最大トレッドミル負荷後の変化と比較した.有意なST低下 (≧0.05mV) は, ジピリダモールにて19名, トレッドミルにて18名に生じた.各症例において, 両負荷後の体表面上のST低下の分布様式は類似しており, ST低下を示す誘導点の数およびST低下の最大値は, それぞれr=0.84およびr=0.87と高い相関を示した.ジピリダモール静注によるpressure-rate productの平均の増加率は僅か21.5%であり, トレッドミル負荷の88.8%に比較して低値であった.ジピリダモール負荷心電図法は運動負荷が施行困難な患者における冠動脈疾患の診断法として有用であると考えられた.
  • 矢永 尚士, 上野 照紀, 市丸 雄平, 児玉 泰幸, 矢野 健一, 畑 洋一, 市丸 みどり, 畑 知二, 岡本 健次, 大塚 邦明
    1986 年 6 巻 2 号 p. 139-151
    発行日: 1986/04/30
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    胸痛を訴えた35例 (30~72歳) , 陳旧性心筋梗塞15例 (40~72歳) を対象として冠動脈造影およびHolter心電図記録を行った.参考のため健康人35例についても検討した.誘導はCM5, II誘導心電図に類似の波形を得る誘導を用い, 75%以上を有意狭窄とした.トレンドによるST下降の型はspike type, atypical type, box typeに分けられた.Spike typeではその低下度は狭窄枝数に比例し, そのパターンは水平型 (H型) あるいは下降型 (D型) が増加する傾向がみられた.女は0枝狭窄でもH型の頻度が大であった.Atypical typeは朝方に多く, しばしば易変性ST-Tを伴うことから虚血のみならず, 自律神経の関与が推測された.無痛性発作はspiketypeに伴うものは伴わないものに比し低下度は大で, 持続時間が小なる傾向を示した.Box型は臥位における体位変換時にみられた.
    Holter心電図による心筋虚血の診断にさいしては, STトレンドの型, 実時間の波形, 性差を綜合して行うことが必要である.
  • 神原 啓文, 野原 隆司, 河合 忠一, 玉木 長良, 米倉 義晴, 鳥塚 莞爾
    1986 年 6 巻 2 号 p. 153-157
    発行日: 1986/04/30
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    運動負荷心電図の診断精度を連続74例の冠動脈疾患において検討し, 診断率70%, 特異性70%の成績を得たが, 前下行枝病変例の精度81%に比べ, 右冠動脈は66%と低値であった.
    201Tlによる心筋シンチグラフィーは, planar法を用いるとその精度は85%と向上し, SPECT法になれば94%となる.これらの方法は心電図ほど簡便ではないが, 心電図が判定困難の例ではとくに有用である.
    13N-アンモニアPCTは, 心筋虚血領域のより詳細な検討が可能で, 今後さらに検討されるべき手段である.
  • 岡島 光治
    1986 年 6 巻 2 号 p. 159-160
    発行日: 1986/04/30
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
  • 戸山 靖一
    1986 年 6 巻 2 号 p. 161
    発行日: 1986/04/30
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
  • 小野 彰一, 傳 隆泰, 加藤 紀久, 川久保 清, 板井 勉, 坂本 静男, 武者 春樹, 伊藤 博之, 村山 正博
    1986 年 6 巻 2 号 p. 163-172
    発行日: 1986/04/30
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    心筋梗塞例でみられる運動負荷誘発性陰性U波 (NU) の意義を明確にする為, 前壁心筋梗塞例に限定し, 梗塞1ヶ月後負荷時前胸部誘導NU出現例〔NU (+) 群〕15例と非出現例〔NU (-) 群〕20例に分け, 冠動脈・左室造影像及び前壁における心筋血流分布を比較検討した.NU (+) 群全例左前下行枝に90%以上狭窄を, また完全閉塞例では比較的豊富な側副血行を認めたが, NU (-) 群では一定傾向はなかった.負荷Tl-201心筋シンチで前壁域に再分布を認め且つ左室造影像でその領域の壁運動温存があり, 生存心筋を多く含むと考えられる分画は, NU (+) 群に有意に多かった (p<0.001) .心電図上, NU出現は異常Q波を有する誘導に少なく, その周辺域からの誘導に多発した.NU出現時負荷左室造影で梗塞域壁運動の増悪化をみたが, dyskinesisを呈するには至らなかった.左前下行枝の血行再建後負荷時NUは消失, 心筋血流分布の正常化, 左室駆出率の増加をみた.以上よりNUは梗塞後も重篤冠狭窄を有するが, なおsalvage可能な生存心筋の存在を示す重要な心電図徴候であると考えられる.
  • 五十嵐 彰, 池田 こずえ, 久保田 功, 立木 楷, 安井 昭二
    1986 年 6 巻 2 号 p. 173-181
    発行日: 1986/04/30
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    心室内興奮伝播過程の異常を有する心電図波形から心筋梗塞の部位診断が可能かを検討する目的で, 中日電子製HPM-5100装置を用いて体表面上の87点より単極誘導心電図を同時記録し, QRST isointegral map (I-map) を作成した.健常成人40名より求めた正常I-mapと比較し, 平均-2SD以下となる領域を異常負領域とした.伝播過程の異常以外に器質的心疾患を有しない19名のI-mapはいずれも主常I-mapと類似した.心筋梗塞を有する18名 (心室期外収縮11, WPW症候群1, 右脚ブロック3, 左脚ブロック3名) のI-mapでは, いずれも梗塞部位 (前壁, 下壁, 前壁+下壁) に対応して異常負領域が出現した.梗塞の有無に拘らず, 同一症例において心室期外収縮あるいはWPW伝導波と正常洞調律波のI-mapは極めて類似した.心室内興奮伝播過程異常時にもI-mapにより心筋梗塞の部位診断が可能であることが示唆された.
  • ―心室頻拍, 心室細動, および失神例での検討―
    茅野 真男, 薄葉 文彦, 池川 徹, 戸山 雅子, 小川 聡, 半田 俊之介, 中村 芳郎
    1986 年 6 巻 2 号 p. 183-190
    発行日: 1986/04/30
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    失神26例を, 失神時心電図所見により, 持続性心室頻拍 (SVT) 8例, 非持続性心室頻拍 (NSVT) 5例, 心室細動 (VF) 5例, 心電図記録なし (syncope) 8例の4群に分け, programmed ventricular stimulation (PVS) を施行した.対象例の基礎心疾患は, 虚血性心疾患10例, 心筋症7例, 基礎心疾患なし5例, その他4例である.VT誘発は, 右室の2カ所で, 2連発早期刺激法を用いた.その結果, 9例でinduced SVT, 8例でinduced NSVTが誘発された.各群でのinduced VT (SVT+NSVT) の誘発率はSVT100%, NSVT60%, VF60%, syncope38%, induced SVTのみの誘発率はSVT75%, NSVT20%, VF40%, syncope 0%であった.失神時と誘発時で12誘導心電図上VT波形を比較しえたSVTの4例全例とも, QRS波形は一致した.induced SVTの停止に, 4例でDC shockを要したが死亡はなかった.PVS法は, VT, VF, 失神時心電図のない例において, 発作の原因推定に有用な方法と思われる.
  • ―ホルター心電図法による研究―
    洞庭 賢一, 牧原 美樹子, 鈴木 茂孝, 岡島 光治
    1986 年 6 巻 2 号 p. 191-195
    発行日: 1986/04/30
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    24時間心電図記録で偶然見つけられた, 35名61回の3連発以上の心室期外収縮 (いわゆる心室頻拍) につき検討した.1日の発生数が1回だけのものが25名で, 最高7回発生していた.また連発数は3, 4連発が大部分で, 最大27連発であった.ただし, このうち1例は心室細動に移行したが, 他はいずれも自然に基本調律にもどった.
    心室頻拍の1日発生数および毎分拍数と連発数, 心室頻拍のprematurity indexおよびvulner ability indexと心室頻拍の毎分拍数のいずれにも相関関係はなかった.また, 心室頻拍の毎分拍数と直前の心拍数の間にも十分な相関関係はなかった.
    以上より, 対象をしぼらず, 偶然に見つけられたいわゆる心室頻拍では, その特徴を決めることがむずかしく, 他の臨床症状, 検査所見も合わせて検討することが必要と考えられた.
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