冠静脈洞内通電を要する後中隔副伝導路症例 (CS-ACP) の心電図所見として五誘導の陰性デルタ波 (-△) の存在が指摘されている.今回CS-ACP症例 (5例) と右後中隔 (RP-ACP) 症例 (17例) , 左後中隔 (LP-ACP) 症例 (7例) との安静時および心房頻回刺激 (AP) 時の12誘導心電図を解析し, 対比検討した. (1) II誘導で-△を示した症例は8例 (CS-ACP: 2例, RP-ACP: 5例, LP-ACP: 1例) で, 感度 (ST) 40%, 特異度 (SP) 78%であった, (2) V
2誘導のR/S比はLP-ACPは全例1以上であったが, RP-ACPでは1以上を示したのは2例のみ (13%) で, CS-ACPでは4例 (80%) が1以上を示した. (3) 安静時V
2誘導のR/S比が1未満をRP-ACPと診断し, 1以上の症例に対しII誘導の-△の存在によりLP-ACPおよびCS-ACPを診断するとそれぞれのST, SPおよび陽性診断率はRP-ACP: 88%, 92%, 94%, LP-ACP: 86%, 82%, 60%, CS-ACP88%, 92%, 67%であった. (4) 中心静脈から通電した症例ではAP時V
6誘導のR/S比が1未満を示した.CS-ACPを安静時心電図のみで診断するのは必ずしも容易ではなく, AP時の所見も加味する必要があると考えられた.
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