心電図
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11 巻, 3 号
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  • 相沢 義房, 船崎 俊一, 江部 克也, 庭野 慎一, 田村 真, 相沢 雅美, 池主 雅臣, 内藤 直木, 草野 頼子, 柴田 昭
    1991 年 11 巻 3 号 p. 249-257
    発行日: 1991/05/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    抗不整脈薬の心室頻拍 (VT) のリエントリー回路への定量的評価を8例で検討した.全例ともプロカインアミドの投与前後で同一のQRS波形のVTが誘発され, VT中のオーバードライブ・ペーシングでQRS波形に融合 (constant fusion) を認め, より短い周期でVTが停止した例である.VTを停止させる最長のペーシング周期をプロカインアミド投与前後で比較し, またVT周期とペーシング部位での有効不応期も投与前後で比較検討した.VT周期は314±49msecから391±49msecに, ペーシング部位での有効不応期は246±23msecから268±28msecへと有意に延長を示した (それぞれp<0.001とp<0.005) .VTを初めて停止させたペーシング周期は261±41msecから317±44msecへと延長を示した (p<0.001) .VTを停止させるペーシング周期はリエントリー回路内で1: 1伝導が不可能となる最長周期と考えられ, その変化はペーシング部位での有効不応期の変化より大であり, 両者の単純な比較には問題があるが, プロカインアミドはリエントリー回路により強く作用する可能性がある.
  • ―電気生理学的検査と加算平均心電図法による対比検討―
    笠巻 祐二, 小沢 友紀雄, 渡辺 一郎, 児島 隆介, 陣野 和彦, 牧 晴美, 矢久保 修嗣, 高橋 義和, 島田 浩子, 近藤 一彦, ...
    1991 年 11 巻 3 号 p. 258-267
    発行日: 1991/05/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    心房受攻性 (AV) の非観血的予測指標として, 加算平均心電図法 (SAECG) によるfiltered Pwave duration (FPD) が有用か否かを電気生理学的検査 (EPS) との対比により検討した.上室性不整脈の精査のためEPSを施行した22例と健常者10例を対象とし, 標準12誘導心電図によるP波の幅 (NFPD) およびSAECGによるFPDを計測した.AVは, 心房早期刺激法にて反復性心房応答あるいは5秒以上持続するAfが誘発されたものと定義した.NFPDはAV陽性群 (N=12) 119.2±15.1ms, AV陰性群 (N=10) 117.0±14.9ms (N.S) であり, FPDはAV陽性群136.9±11.6ms, AV陰性群122±11ms (p<0.005) であった.AVをFPDを用いてスクリーニングする際, band pass filterが100~300Hzでの陽性基準を125ms以上とすると, そのsensitivityは100%, specificityは75%となった.したがって, SAECGによるFPDはAVの非観血的予測指標として有用であると考えられた.
  • 渡辺 雄一郎, 石井 博之, 藤巻 信也, 井尻 裕, 浅川 哲也, 小森 貞嘉, 吉崎 哲世, 田村 康二
    1991 年 11 巻 3 号 p. 268-278
    発行日: 1991/05/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    心室期外収縮を有する75名について48時間の連続ホルター心電図記録を行い, 期外収縮の発生数の変動リズムについてCosinor法による解析により以下の結果を得た.1) 期外収縮の発生には73% (55例) に24時間周期のリズムが認められ, 特に心疾患のある群で有意に多かった.2) 明らかな基礎疾患のないものの, 期外収縮の頂点位相 (Acrophase: 発生数のピーク時間) が症例ごとに24時間にわたり分散し, 一定の傾向を示さなかったのに比べて, 虚血性心疾患群の90%信頼域は8時から18時にあり, しかも, この時刻は心拍数の概日リズムの頂点位相にほぼ一致した.3) 期外収縮の頂点位相が日中活動期にあるものは運動負荷で増悪するものが多く, 概日リズムの変動幅 (Amplitude) の日差変動が大きかった.以上の成績から基礎疾患のあるもの (特に虚血性心疾患) では, 期外収縮の発生に自律神経の関与が大きいことが示唆され, 日差変動が大きいことは治療効果の評価の点からも重要であると考えられた.
  • ―発作性“上室”性頻拍症に対する経食道心房ペーシング法を用いての評価―
    沖重 薫
    1991 年 11 巻 3 号 p. 279-289
    発行日: 1991/05/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    観血的臨床電気生理学的検査により機序が判明した, 発作性“上室”性頻拍症 (PSVT) 患者22例に対し, 非観血的検査法である経食道心房ペーシング法を用い, クラスI群とIV群との抗不整脈剤の併用療法の有効性と, その際の機序について検討した.クラスI群としてはaprindine (A) , IV群としてはverapamil (V) を用いた.〔結果〕併用投与は単独投与に比べ, 有意に (1) 房室結節不応期を延長させ, (2) Echo zoneを縮小させ, また (3) PSVT周期を延長させた.しかし, QTおよびQTcについては, 両群間に有意差がみられなかった.結局, 併用療法後のPSVTの誘発阻止率は, 単独療法の際の9% (A) ~14% (V) から45%へ著明に上昇した.この併用療法による有効性の作用機序に関しては, 単独および併用時の血中濃度に有意差を認めなかった.〔結論〕PSVTの予防に対し, クラスI群とIV群の併用は有用であり, その作用機序に関しては, 相加的作用であることが示された.
  • 中居 賢司, 伊藤 忠一, 菖蒲 澤実, 千葉 直樹, 盛合 直樹, 平盛 勝彦, 笠貫 宏, 細田 瑳一
    1991 年 11 巻 3 号 p. 290-297
    発行日: 1991/05/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    ARモデルを用いた加算心電図QRS終末部・QRS内における周波数解析法を考案し, そのシミュレーションによる妥当性の検討およびその臨床応用を行なった.
    〔方法〕シミュレーション信号および臨床例〔正常5例, 時間領域の解析でLP陰性の前壁梗塞症5例, LP陽性の10症例 (前壁梗塞症6例, 不整脈原性右室異形成1例, 拡張型心筋症3例) 〕を対象とし, 加算心電図QRS終末点を起点とし, 前後に20msecごと移動するデータ長40msec区間でARモデルによる解析を行ない, 時間・周波数・パワーの三次元表示した.なお, ARモデルの打ち切り次数は25次とした.
    〔結果〕1.ARモデルによる解析では, 40msecの短いデータ長でも周波数成分の解析が可能であった.2.臨床例において時間領域の解析でLPの確認された症例では, ARモデル解析でQRS終末部以降のみならず, QRS内に高周波成分が検出された.QRS内の高周波成分は76±16Hz, QRS終末部の高周波成分は63±15Hzであった.
    〔考案〕ARモデルは短いデータからも分解能の高い安定したスペクトルが求まる特徴を有し, QRS内の周波数成分を解析できることを示唆した.
  • 碓井 雅博, 大川 真一郎, 渡辺 千鶴子, 上田 慶二, 徳 文子, 伊藤 雄二, 杉浦 昌也
    1991 年 11 巻 3 号 p. 298-306
    発行日: 1991/05/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    1954年RichmanおよびWolffは心電図上肢誘導で左脚ブロック型, 胸部誘導で右脚ブロック型を呈するものを“masquerading”bundle branch block (仮装脚ブロック) と呼んだ.我々は心電図上第I誘導で幅広いRと小さなSを, 第II, III誘導で深く幅広いSを有し, 胸部誘導にて完全右脚ブロックを示す当センターでの剖検例6例 (男4, 女2, 75~93歳) を対象として臨床病理学検討を行った.臨床所見では, 胸部X線上全例に心拡大を認め, 心電図上5例に1度房室ブロックを認めた.病理所見では, 心重量が350g以上の肥大心は5例であり, 陳旧性心筋梗塞を3例 (後壁2, 側壁1) に認めた.刺激伝導系所見では, 右脚と左脚前枝の二束障害を2例に, 右脚と左脚前枝, 同後枝の三束障害を2例に認め, 左脚前枝と同後枝の二束障害が1例であった.
    「仮装脚ブロック」の発生機序として, 1) 左脚の広範な障害, 2) 後側壁の心筋梗塞による修飾, 3) 著明な心肥大の影響が示唆された.
  • 韓 樹中, 碓井 雅博, 三輪 篤子, 栽原 伸一郎, 岡井 容子, 大城 雅也, 川久保 清, 井上 博, 杉本 恒明
    1991 年 11 巻 3 号 p. 307-313
    発行日: 1991/05/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    長時間心電図記録を用い, 短時間内に出現する二連発以上の心室期外収縮の先行周期 (NN) と連結期 (NV) との関係, NVと後続連発周期 (VV) との関係, およびこれらに対する抗不整脈薬の影響について検討した.抗不整脈薬投与前の28例ではNN-NV, NV-VV相関関係が一致したものは50%, 逆のものは14%であった.NN-NV, NV-VVとも正相関または負の相関を示した症例には心疾患例が多く, 両者とも相関なしの症例には心疾患例が少ない傾向を認めた.日を変えての相関関係の再現性を7例について検討した結果.有意な相関関係と相関なしの間での変化はみられたが, 相関関係の逆転のみられた例はなかった.抗不整脈薬投与後, 大部分の症例の相関関係の傾向は変化しなかったが, 相関関係の逆転がNN-NV関係とNV-VV関係のそれぞれ21%, 14%にみられた.以上より, 長時間心電図記録のNN-NV, NV-VV関係からPVCの機序を推定するにあたっては注意が必要である.
  • 毛利 太一, 田辺 章弘, 古賀 義則, 戸嶋 裕徳, 中村 俊博, 大賀 雅信, 高本 哲郎, 真弓 文仁
    1991 年 11 巻 3 号 p. 314-321
    発行日: 1991/05/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    ホルター心電図法は不整脈診断に有用であるが, 心房波の同定が難しく, 上室性不整脈と心室不整脈の鑑別が困難な場合が少なくない.今回, 我々は新たに開発したリード状電極を用いた長時間食道誘導心電図記録を試み, その臨床的有用性を従来のピル状電極と比較検討した.リード状電極, ピル状電極いずれも経口的に飲み込ませ, Buffer Amplifierにて増幅し, 基線を安定化させた後, 心房振幅が最大となる位置に固定し, ホルター心電計に接続した.リード状電極はピル状電極に比べ, 心房波の判読可能時間は有意に長く (61±24%vs21±23%: p<0.05) , 25mm/secの打ち出し波形から求めた平均心房波振幅も大きい傾向にあった.また電極挿入時や挿入中の不快感の訴えはリード状電極で有意に少なかった (p<0.01) .臨床的には上室性と心室性不整脈の鑑別に有用であった.非観血的に繰り返し行なえる本法は今後とも広く臨床応用されるべきと思われる.
  • ―Late potentialの空間分布との関連―
    宮沼 弘明, 中居 賢司, 伊藤 忠一, 菖蒲 澤実, 安保 博子, 折祖 清蔵, 平盛 勝彦, 笠貫 宏, 大西 哲, 細田 瑳一
    1991 年 11 巻 3 号 p. 322-331
    発行日: 1991/05/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    胸部単極32誘導体表面加算電位図により, 心内膜異常電位存在部位と心室頻拍の発生部位の推定を試みた.器質的心疾患を有し体表面心室遅延電位 (LP) と持続性心室頻拍の認められた6例を対象に, filtered QRS終末より30ms前までのLPの積分電位を求めLP30area mapを作成し, さらに, 心室頻拍 (VT) と類似の心室期外収縮 (PVC) のQRS isointegral mapを作成した.その結果, LPの空間分布は各疾患ごとに特徴のある分布様式を示し, 陳旧性心筋梗塞例においては梗塞領域内もしくはその辺縁に分布した.PVCのQRS isointegral mapの極小は各症例ともLP分布領域内に認められた.電気生理学的検査施行例ではLP30area mapが心内膜異常電位存在部位を, またPVCのQRS isointegral mapの極小がVTの起源を, それぞれよく反映していた.胸部単極32誘導体表面加算電位図によるLP30area mapとPVCのQRS isointegral mapはVT起源の評価に有用と思われた.
  • 高橋 信博, 渡辺 一郎, 徳竹 英一, 小倉 敏嗣, 梶田 潤一郎, 近藤 一彦, 斉藤 友昭, 斉藤 穎, 小沢 友紀雄, 波多野 道信
    1991 年 11 巻 3 号 p. 332-337
    発行日: 1991/05/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    直流通電を用い, 房室結節~His束にcatheter ablationを施行し作成した完全房室ブロックの心室補充調律に対する自律神経の影響を検討するとともに, アセチルコリンによるノルエピネフリン遊離抑制作用が心室自動能に対し機能的に関与しているかを検討した.迷走神経刺激による心室補充調律時の心拍数の減少は星状神経節刺激時とノルエピネフリン注入時で有意差は認められないことより, 心室補充調律に対する迷走神経節刺激の抑制作用は交感神経末端からのノルエピネフリン遊離抑制作用を介するよりも受容器への直接作用が主であると考えられた.また, プロプラノロール投与後では迷走神経刺激にて心拍数が減少しないことより, 心室補充調律に対するアセチルコリンの作用はノルエピネフリンの作用に拮抗するものと推察した.
  • 江部 克也, 相沢 義房, 佐藤 政仁, 宮島 静一, 庭野 慎一, 田村 真, 池主 雅臣, 柴田 昭
    1991 年 11 巻 3 号 p. 338-343
    発行日: 1991/05/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    リエントリーを機序とする持続型心室頻拍 (VT) で, VTの起源と考えられる部位でのペーシングで, VT移行時に機能性ブロックがみられた興味ある症例について報告する.VT中右室流出路で異常電位が記録され, VTの起源と考えられた.同部位での洞調律時のペーシングでVTとは全く異なるQRS波形が得られ, QRS波形は刺激スパイク直後から始まっていた.刺激中にVTに移行し, 刺激スパイクとQRS波形の間隔は125msecに延長した.VT移行後は刺激頻度の増加にもかかわらず, QRS波形に変化なく, 刺激中止後の連結期はほぼVT周期に一致していた.洞調律時でのペーシングでは, 同部位から広がっていた興奮波が, VT開始とともにリエントリー回路の緩徐伝導路に沿ってのみ興奮波が伝播され, QRS波形の変化をきたしたと考えられ.この部位でVT中のみ機能性ブロックが成立していると考えられた.
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