心電図
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16 巻, 1 号
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  • 戸叶 隆司, 中田 八洲郎, 安田 正之, 松本 佳久, 大野 安彦, 久岡 英彦, 住吉 正孝, 小倉 俊介, 中里 祐二, 山口 洋
    1996 年16 巻1 号 p. 1-14
    発行日: 1996/01/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    His-PurkinJe系におけるWenokebaoh型房室ブロック10例 (ヒス束内ブロック6例, ヒス束遠位 (H-V) ブロック4例) の臨床電気生理学的特徴を検討した.
    (1) Wenokebaoh型房室ブロックは, 洞調律時, 心房ペーシング時ともに毎分100以下の心房拍数で出現した.
    (2) WenokebaGh周期中のブロック後第1拍目よりQRS波脱落直前までの房室伝導時間の延長の様式は, 房室結節内 (A-H) ブロックとの鑑別に有用でなかった.
    (3) 硫酸アトロピンもしくは運動負荷における房室伝導は, 全例負荷後2度以上の房室ブロックを呈し, 不変であった1例を除く全例で悪化した.
    (4) 全例で徐脈による症状, およびより高度な房室ブロックへの進展を認め, ペースメーカー治療を要した.
    Wenokebach型房室ブロックであっても, 徐脈による症状を伴い, 硫酸アトロピンもつしくは運動負荷後も2度以上の房室ブロックを呈する例では, His-Purkinje系の伝導障害が疑われ, ペースメーカー治療の必要性が示唆された.
  • 北沢 仁, 相沢 義房, 鷲塚 隆, 高橋 和義, 大平 晃司, 阿部 晃, 池主 雅臣, 柴田 昭
    1996 年16 巻1 号 p. 15-24
    発行日: 1996/01/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    エントレイン時に体表面心電図に融合を認めるペーシング部位で復元周期がVT周期に一致する機序にマクロリエントリー性VTを想定し, VT中のマッピングで頻拍機序の証明を試みた.対象は右室心尖部からのペーシングでVTがエントレインされ, かつペーシング部位での復元周期がVT周期に一致した6例である.全例が基礎疾患を有し, 内訳は拡張型心筋症2例, 陳旧性心筋梗塞1例, ファロー四徴症術後2例, 催不整脈性右室異形性1例であった.5例で右脚ブロックと左脚ブロック型の2種類のVTが誘発され, 自然停止例と血圧低下例を除く9VTでマッピングを行なった.1例は右室流出路刺激時に, また他の1例は左室刺激でもVTはエントレインされ, この時復元周期はVT周期に一致した.マッピングにより2例で梗塞巣や手術般痕を障壁とする興奮旋回路が証明された.障壁を旋回するVTの電気生理検査所見として, エントレイン時に融合波形がみられるペーシング部位での復元周期とVT周期の一致が考えられ, マクロリエントリーの間接的証明になると考えられた.
  • 渡辺 明規, 小森 貞嘉, 梅谷 健, 李 兵紅, 石原 司, 望月 淳, 井尻 裕, 田村 康二
    1996 年16 巻1 号 p. 25-33
    発行日: 1996/01/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    ラット冠結紮モデルを用いて, 新しいOlassIII抗不整脈薬MS-551 (1, 3, 10mg/kgの3用量) の抗不整脈作用, 血行動態および電気生理学的性質を検討した.MS-551は冠結紮5分前に静脈内投与した.心室性期外収縮総数, 心室頻拍+心室細動の総持続時間, 最長の心室頻拍持続時間および心室細動出現率を減少させ, 10mg/kg投与群では有意な (P<0.01vs Control) 抗不整脈作用を認めた.用量依存性にQT延長, 血圧上昇, 心拍数減少を認めたが, Double produotに有意差はなかった.左室心筋の有効不応期は用量依存性に延長し, 3, 10mg/kg投与群でReverse use dependenceが認められた.MS-551は虚血性重症不整脈の発生を抑制し, それに基づく心臓突然死を防止すると考えられた.
  • 小菅 雅美, 木村 一雄, 石川 利之, 根本 豊治, 清水 智明, 持田 泰行, 中尾 正行, 日比 潔, 杉山 貢, 久慈 直光, 宮崎 ...
    1996 年16 巻1 号 p. 34-41
    発行日: 1996/01/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    右冠動脈 (ROA) 閉塞の急性下壁梗塞のST偏位を, RCA潅流域の広さと閉塞部位から検討した.発症6時間以内のROA閉塞による初回下壁梗塞59例を冠動脈造影 (OAG) で閉塞部位が右室枝より近位の27例と遠位の32例に分類し, 再疎通前の心電図からΣST上昇 (II・III・aVFのST上昇の和) , ΣST低下 (V1-4のST低下の和) を, OAG所見からROA潅流域を示すWongらのangiographic distribution soore (AS: ROAが潅流する後下壁領域の割合) を算出した.両群でAS, ΣST上昇に差はなかったが, ΣST低下は近位群が遠位群に比し小であった (P<0.01) .ΣST上昇は両群でASと相関するが, ΣST低下は遠位群でのみAS, ΣST上昇と相関した (p<0.Ol) .ΣST上昇≧0.8mVはRCA潅流域が大きい例 (AS≧0.5) の判別に有用であった (感度89%, 特異度86%) .またΣST低下/ΣST上昇≦0.5は近位群の判別に有用であった (感度85%, 特異度78%) .急性下壁梗塞では, ΣST低下とΣST上昇の両者からRCA潅流域および右室枝閉塞の予測が可能であると考えられた.
  • 石橋 一哉, 井上 大介, 坂井 龍太, 井上 美穂, 白山 武司, 朝山 純, 中川 雅夫
    1996 年16 巻1 号 p. 42-48
    発行日: 1996/01/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    我々の提唱する心房細動閾値 (AFT) が心房受攻性の一指標となりうるか否かを検討し, あわせてジソピラミド及びピルジカイニドのAFTに及ぼす効果を検討した.発作性心房細動を有する患者 (Paf群) 20名, 心房細動既往のない者 (non-Paf群) 10名を対象に右心耳刺激を行った.心房細動閾値は50Hzの持続刺激を1秒間行い, 30秒間以上持続する心房細動が誘発される最小の刺激電流量と定義した.AFTはPaf群では4.0±1.7mAとnon-Paf群 (7.0±2.9mA) に比し有意に低値であり, 心房有効不応期と正相関を, 高位右房電位幅の最大延長率である%MAFと逆相関を示した.以上よりAFTは心房内局所の伝導遅延が大きい例ほど低値であり, 臨床上有用な心房受攻性の一指標であることが示唆された.またジソピラミド及びピルジカイニドはともにAFTを上昇させたが, その上昇の程度はジソピラミドがより大きい傾向があった.
  • 清水 昭彦, 早野 智子, 全 栄和, 江里 正弘, 濱本 卓之, 立野 博也, 山縣 俊彦, 大谷 望, 藤井 崇史, 松崎 益徳
    1996 年16 巻1 号 p. 49-58
    発行日: 1996/01/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    症例は右室流出路起源の特発性心室頻拍 (VT) を呈した39歳女性.ホルター心電図によるRR間隔変動周波数分析と右心耳に留意したJ型リードを用いたAA間隔変動周波数分析を行なった.24時間の記録中に反復型VTが110回認められた.2分間隔のLF, HF成分をlogscale (ms2/Hz) で求め, LF/HF比も算出した.8分間以上洞調律が続いた後, 反復型VTを含む心室期外収縮 (VPO) が4分間以上出現したものをエピソードとした.エピソード直前8-4分の4分間と直前4分間の比較では, LF, HF成分, LF/HF比に関してRR解析およびAA解析ともに, 有意な変動はなかった.しかし, AA解析によるエピソード直前4分間とエピソード中4分間の比較では, LF成分 (3.36±0.71→3.66±0.73) とLF/HF比 (0.83±0.16→0.93±0.19) は有意な増加を認めた.HF成分では有意な変動はなかった.AA解析によって, 本例のVTおよびVPO中に交感神経機能の亢進があると推測された.
  • 小川 斉, 塩見 利明, 小林 正
    1996 年16 巻1 号 p. 59-65
    発行日: 1996/01/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    高血圧症における陰性U波と血圧日内変動所見の関連性について検討した.
    陰性U波は90例中44例 (49%) に認められ, 形態別ではinitial NU (C型) 34例, total NU (A型) 9例, terminal NU (D型) 1例であった.A・D群はST・T変化が顕著であり, CTRが大で心エコーにて心筋の肥大を認めた.一方C群はST・T変化がわずかであり, CTRも正常範囲内で心エコーにて心筋の肥大を認めなかった.
    血圧日内変動所見ではA・D群は24h-SBPが156mmHgとC群140mmHg, NU (-) 群142mmHgに比し有意に高値であった (p<0.05) .またA・D群には夜間高血圧例が多かった.
    以上のことより, 陰性U波のうちA・D型を認める例は高血圧が重症であり, C型は軽症例であると思われた.
  • 岡本 登, 加藤 良三, 大熊 攻, 寺沢 敏昭, 横地 裕
    1996 年16 巻1 号 p. 66-74
    発行日: 1996/01/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    Holter心電図における“Pre-extrasystolic ST-T change”の発生機序を考察するために, Holter心電図の解析と, function generatorを用いた基礎的実験を行なった.臨床例では心室期外収縮のT波の振幅が1mV以上の場合には, 上向き, 下向きを問わず前後の基線が動揺し, 先行する心電図に異常ST低下や上昇を認める例があった.また, 心室期外収縮前後の基線の動揺は期外収縮のT波のpeak (nadir) を中心として対称的なうねりとして認められ, 波形歪みを来したものと考えられた.実験的にfunction generatorの信号をHolter心電計と標準心電計に同時入力し, 両者の記録を比較検討した結果, 上記の考察を支持する成績が得られた.従って, “preextrasystolic ST-T change”のほとんどの例は, 低域特性の悪い直接記録方式のHolter心電図特有の波形歪みによるものと結論された.
  • 脇田 富雄, 沼田 裕一, 緒方 康博, 春口 洋賜
    1996 年16 巻1 号 p. 75-81
    発行日: 1996/01/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    冠攣縮性狭心症 (VSA) 発作時におけるホルター心電図の感度を検討した.冠動脈造影上エルゴノビン負荷テストにてスパズムが誘発された20例 (男15例, 女5例, 平均年齢66歳) を対象に, スパズム誘発時のST変化を検討し, ホルター心電図におけるST変化陽性率を求めた.VSAの診断はエルゴノビン負荷テストにて亜完全閉塞以上のスパズムが確認され, 標準12誘導心電図上ST変化を認めたものとした.ホルター心電図の誘導には双極V3誘導 (陽極: V3, 陰極: 左鎖骨外側1/3) とLL誘導 (陽極: 左前腋窩線上最下肋骨, 陰極: 胸骨柄) を使用した.責任冠動脈別のホルター心電図陽性率では, 左前下行枝 (LAD) のスパズムは6例に生じ, 12誘導心電図の前胸部誘導および双極V3誘導で全例にST上昇を認めた (陽性率100%) .左回旋枝 (LCX) のスパズムはLADとの同時スパズムを含めて2例に生じ, 12誘導心電図の下壁誘導 (II, III, aVF) およびLL誘導で2例ともST上昇を認めた (陽性率100%) .右冠動脈 (RCA) のスパズムは12例に生じ, 下壁誘導で10例にST上昇, 2例にST下降を認め, LL誘導では8例にST上昇, 3例にST下降を認めた (陽性率91.7%) .ホルター心電図による全体の陽性率では, 双極V3誘導およびLL誘導を用いたホルター心電図によるスパズム検出率は95.0% (19/20) であった.LADのスパズム検出のための双極V3誘導, LCXおよびRCAスパズム検出のためのLL誘導を使用したホルター心電図のST変化陽性率は95%と高率であり, VSA診断においてホルター心電図双極V3誘導およびLL誘導は高い感度を有し, 臨床的に有用であると考えられる.
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