心電図
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35 巻, 2 号
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Editorial
第31回日本心電学会学術集会 学術諮問委員会提言シンポジウムより 遺伝性不整脈の治療戦略
  • 住友 直方
    2015 年 35 巻 2 号 p. 77-85
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/03/25
    ジャーナル フリー
    遺伝性不整脈は,年齢により死亡率が異なる.QT延長症候群1〔LQT1(G189R)〕では1~19歳の死亡率が高く,特に10~19歳の死亡率が高い.QT延長症候群2〔LQT2(Y99S)〕では15歳から死亡率が高くなり,30~39歳で最高値を示し,QT延長症候群3〔LQT3(I1768V)〕では15~19歳で死亡率が最も高い.SCN5A overlap症候群(1795ins D)では10~14歳で,カテコラミン誘発多形性心室頻拍(CPVT)(R420W in RYR2)では20~29歳で,Brugada症候群では40~59歳で死亡率が最も高い.QT延長症候群は学校での適切な運動制限が不可欠であり,薬剤に対するコンプライアンスの低下にも注意が必要である.CPVTは小児期での発症例は予後が不良であり,運動制限や適切な薬剤の使用による治療管理が重要である.SCN5A overlap症候群の発症例は少ないが,発見された場合には,適切な管理を行うことが必要である.進行性心臓伝導障害例では薬物療法の有効性が低いため早期に発見し,ペースメーカやICD植込みなどの検討を要する.Brugada症候群は学校検診で発見されるもの,心房頻拍・心室頻拍などの発症により発見されるものがあるが,いまだ症例が少なく,どのような時期にどのような治療が必要であるかは,今後の検討を要する.
  • 渡部 裕, 南野 徹
    2015 年 35 巻 2 号 p. 86-94
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/03/25
    ジャーナル フリー
    カテコラミン感受性多形性心室頻拍(catecholaminergic polymorphic ventricular tachycardia : CPVT)は,交感神経活性を高める精神的ならびに肉体的なストレスによってVTを発症する遺伝性不整脈症候群の一種であり,現在までにいくつかの原因遺伝子が明らかとなっている.これらの遺伝子の変異は,筋小胞体に存在するリアノジンレセプターからの異常なCa2+の放出により,CPVTをきたすことが共通している.臨床像としては,器質的に心臓は正常であり,運動や感情の高まりによって誘発される心室不整脈による動悸や失神,心肺停止が特徴である.心房細動や心室不整脈が高頻度で見られるものの,一拍ごとにQRS波の軸が180°変化する二方向性VTが特徴的であり,診断に有用である.交感神経活性によって誘発されるVTは心室細動へ移行することがあり,心停止が初発症状である症例もしばしば見受けられる.安静時心電図は正常であり,診断に際しては画像診断による器質的心疾患の除外と,運動やストレスによって出現する不整脈が重要である.治療には,β遮断薬やフレカイニドが用いられる.植込み型除細動器は,心停止歴のある症例やβ遮断薬が不整脈の抑制に不十分な症例で適応となるが,突然死の予防効果は不完全である.
  • 林 秀樹, 堀江 稔
    2015 年 35 巻 2 号 p. 95-103
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/03/25
    ジャーナル フリー
    Brugada症候群と早期再分極症候群は,心室細動(VF)を発症し突然死を起こす可能性がある.両症候群は,心電図でST上昇(J波)を認める.その主な機序として,一過性外向き電流(Ito)の増加が考えられている.キニジンに代表されるItoを抑制する薬剤はVFの発生を抑制するとの報告があり,同時にJ波を消失させることも明らかにされている.このような薬剤は,Brugada症候群と早期再分極症候群において植込み型除細動器施行後のVFに対する補助的治療として使用される.本論文では,Brugada症候群と早期再分極症候群に対して有効な薬剤の作用機序を解説し,薬物療法の既報についてまとめる.
  • 辻 幸臣, Daniel Toshio Harrell, 石川 泰輔, 蒔田 直昌
    2015 年 35 巻 2 号 p. 104-115
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/03/25
    ジャーナル フリー
    心室頻拍や心室細動などの致死性不整脈が短時間に繰り返し発生するelectrical stormは,心筋梗塞や心不全などの後天的な病態心だけではなく,Brugada症候群や早期再分極症候群,先天性QT延長症候群,カテコラミン誘発多形性心室頻拍などの遺伝性不整脈疾患に伴い発生する.近年の遺伝学・分子生物学・細胞生理学の進歩により,遺伝性不整脈疾患の分子病態が次々と判明しているが,致死性不整脈が繰り返し発生するメカニズムやその遺伝学的背景は,依然明らかではない.心臓Purkinje線維は不整脈の発生に深く関与し,そのイオンチャネル・プロファイルは心室筋細胞と大きく異なることが知られている.本稿では,致死性不整脈の反復発生に寄与する因子として,Purkinje細胞の電気生理学的特殊性に着目し,遺伝性不整脈疾患に伴うelectrical stormの発生メカニズムを考察する.
  • 野上 昭彦
    2015 年 35 巻 2 号 p. 116-132
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/03/25
    ジャーナル フリー
    反復性の心室細動(VF)発作を伴う,早期再分極症候群(n=6),Brugada症候群(n=6),short-coupled variant of torsade de pointes(n=6),QT延長症候群(n=3),カテコラミン誘発多形性心室頻拍(n=4),ラミン心筋症(n=2),左室緻密化障害(n=3)において,高周波カテーテルアブレーション(RFCA)によるVF抑制を試みた.RFCAの標的は,VFのトリガーである心室期外収縮(VPC)もしくは不整脈基質に大別され,その部位は左右のPurkinje網,異常電位を有する心筋あるいは正常心筋であった.急性期効果については,早期再分極症候群,Brugada症候群,short-coupled variant of torsade de pointesにおいて良好であったが,長期予後に関してはいまだ不明であるため,植込み型除細動器は必須である.
原著
  • 丸山 徹, 安田 潮人, 間瀬 淳
    2015 年 35 巻 2 号 p. 133-142
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/03/25
    ジャーナル フリー
    心拍変動は,自律神経の活動状態を非観血的に評価する有用な方法であるが,接触型電極を長時間接着する不快感や拘束感が生じる.一方,マイクロ波は着衣下の非接触状態で干渉測定により反射波の位相変化,すなわち体表面の微小動を計測できる.この原理を応用して,われわれは健常者に接触型電極を用いた心電計を装着してマイクロ波を照射し,暗算負荷試験前後の心拍変動解析を両者で比較検討した.実際のマイクロ波反射計の送受信アンテナは,背中・大腿部・側頭部に対して設置した.マイクロ波反射波は,必要に応じて相互相関処理を繰り返して体動のアーチファクトを除去し,オートゲインコントロール付加の位相検出システムとテンプレート相関方式を用いて,心拍のピークシグナルを検出した.両者のLF/HF値のトレンドグラムはよく一致し,暗算負荷試験前後で高度の正の相関を示した(y=0.90504 ・x,r=0.769,p<0.001).今後さらなるパソコン化やモバイル化が進めば,運転中のドライバーや乳児・高齢者のモニタリングなどへの応用が期待される.
Point of View
心電学マイルストーン
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