日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌
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最新号
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シンポジウム
  • 陳 和夫
    原稿種別: シンポジウム
    2025 年 34 巻 2 号 p. 101-106
    発行日: 2025/05/28
    公開日: 2025/05/28
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    2018年にCPAP療法の遠隔モニタリング加算が健康保険適用を受けたが,施設基準が付加され,診療の場では混乱が生じ,疑義解釈がなされ,普及は遅れていた.令和2年度改定において施設基準は大きく緩和されたが,診療報酬の問題もあり,普及は依然遅れている.新型コロナウィルス蔓延下では,「新型コロナウィルスの感染拡大に際しての電話や情報通信機器を用いた診療等の時限的・特例的な取扱い」にて電話やオンライン診療が健康保険適用下で可能になっていたが,新型コロナウィルスの5類移行後の令和6年改訂においては,電話診療は認められず,実証研究が行われていないにも拘わらず,『情報通信機器を用いて指導管理を行った場合は指導管理料2に変えて218点が算定可能となる』と改訂された.CPAPの資料はクラウド化され,各施設で閲覧可能であり,エビデンスもあり,災害時の事を考えても電話診療の拡充を行われる施策が必要である.

  • 黒田 知宏, 涌嶋 賢二, 岡本 和也, 竹本 ひかり, 佐藤 晋, 陳 和夫
    原稿種別: シンポジウム
    2025 年 34 巻 2 号 p. 107-111
    発行日: 2025/05/28
    公開日: 2025/05/28
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    遠隔モニタリングは情報ネットワークへの接続性が確保されたIoT医療機器から得られたデータをサーバに蓄積し,これを医療者が閲覧することによって行われる新しい医療である.本研究では,遠隔モニタリングの仕組みと次世代医療基盤法の枠組みを活用することで,医療者の入力負担とレポジトリ維持の費用負担を減じて,持続性のあるレポジトリを実現する手法を提案し,CPAP遠隔モニタリングの仕組み上で実現した.具体的には,サーバでAPI(Application Program Interface)を提供しているベンダーからはAPIを活用して,提供していないベンダーからはRPA(Robotic Process Automation)ソフトウエアを用いてデータを収集する仕組みを構築し,次世代医療基盤法で求められる認定事業者との接続要件を満たしたサーバ空間上に実装した.運用の結果,3ヶ月で述べ44,898日分のデータを,医療者に殆ど入力負荷をかけることなく収集することができた.

  • ~日本の状況を踏まえて~
    山口 崇
    原稿種別: シンポジウム
    2025 年 34 巻 2 号 p. 112-114
    発行日: 2025/05/28
    公開日: 2025/05/28
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    “がん”は様々な苦痛(suffering)をもたらし,また現在本邦の死亡原因のトップであることから,我が国の「緩和ケア」は,現在に至るまで“がん患者”を中心に展開されてきた.しかしながら,緩和ケアの起源は飢餓や感染症など広く“病める人”へのケアに始まっており,WHOによる緩和ケアの定義でも,「生命を脅かす疾患による問題に直面している患者(とその家族)」が対象と掲げており,慢性呼吸器疾患をはじめとした非がん疾患患者に対しても緩和ケアは適切に提供されるべきである.緩和ケアの重要な役割として,①症状マネジメント,②意思決定支援/療養調整,③終末期ケアが挙げられ,これらの役割を緩和ケアの専門家“だけ”が行うのではなく,プライマリーチームが行う診療の中で緩和ケア専門家としてサポートしていく形が望ましい.我が国で緩和ケアが非がん疾患患者の診療・ケアに浸透していくにあたっては,診療報酬との紐づけなど課題の解決が望まれる.

  • 三浦 久幸
    原稿種別: シンポジウム
    2025 年 34 巻 2 号 p. 115-119
    発行日: 2025/05/28
    公開日: 2025/05/28
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    在宅医療における非がん性呼吸器疾患・呼吸不全の緩和ケア指針の作成に係る基礎データを得るため,国内外のシステマティック・レビュー結果を基に混合研究法(探索的順次デザイン)を用い,在宅医療の現場の質的及び量的評価を行った.在宅医療スタッフへの質的(インタビュー)調査では,効果的な協働的コミュニケーション,介護保険制度や関連するサービス,緩和ケア技能という3つのテーマが抽出された.これらの情報を基に在宅医への量的(実態)調査を行った結果,回答者における呼吸困難の緩和を目的とする呼吸リハビリテーション,モルヒネ,鎮静剤,NPPVの実施状況はそれぞれ73.0%,66.9%,57.3%,55.2%と比較的高かったが,有効と思う割合はさらに高い割合を示した.今回,上記データを基に在宅での臨床に即した緩和ケア指針を作成した.今後,公的支援も含めた非がん疾患の呼吸不全に対する緩和ケアの充実が望まれる.

ワークショップ
  • 長谷川 智子
    原稿種別: ワークショップ
    2025 年 34 巻 2 号 p. 120-121
    発行日: 2025/05/28
    公開日: 2025/05/28
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    【慢性呼吸器疾患看護】分野の認定看護師は,呼吸器疾患を抱える患者・家族の安定した療養生活を支えるだけでなく,急性増悪期の予防と対処,呼吸リハビリテーションに携わるほか,在宅ケアと終末期看護にも関わる人材である.このような幅広い領域で専門的知識と技術を持った看護師が増えることで,個々の対象者に合ったカスタマイズされた看護・医療の実現が可能となった.

    また,2020年からは新たに【呼吸器疾患看護認定看護師】となり,期待される技術としては,①呼吸症状のモニタリングと評価,重症化予防,②療養生活行動支援及び地域へつなぐため生活調整,③症状緩和のためのマネジメント,④身体所見を病態判断し,呼吸器系,栄養および水分管理に関する特定医療行為の教育が組み込まれた.今後,このような高度な知識と技術をもった認定看護師に益々期待がかけられている.

  • 酒巻 一平
    原稿種別: ワークショップ
    2025 年 34 巻 2 号 p. 122-124
    発行日: 2025/05/28
    公開日: 2025/05/28
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    2015年に始まった特定看護師制度は2025年までに10万人となることを目指しているが,目標にはほど遠いのが現状である.理由の一つは,特定看護師は厚生労動省から終了証をもらうことになるが,資格としての効力がないことである.認定看護師は看護協会による資格であるが,現在の認定看護師資格のみを得るA課程は2026年度で終了し,特定行為を組み込んだB課程のみとなるが,すでに2020年度から開始されている.これにより全19分野の認定看護師教育に,特定行為研修を組み込むこととなる.さらに専門看護師制度もあり,そのすみわけも必要である.認定看護師養成がすべてB課程になるがために,認定看護師を目指す者が少なくなる可能性があるが,認定看護師,特定看護師の活躍の場は広く,認定看護師,特定看護師が増加することにより,呼吸管理レベルが向上することが期待される.

  • 特別発言:今後への期待
    石﨑 武志, 澤村 めぐみ
    原稿種別: ワークショップ
    2025 年 34 巻 2 号 p. 125-128
    発行日: 2025/05/28
    公開日: 2025/05/28
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    当学会が呼吸器疾患ケアチーム医療のコーディネーター・ファシリテーターの役割を担う呼吸ケア認定看護師制度認定を日本看護協会に強く要望した結果,2010年度に日本看護協会から「慢性呼吸器疾患看護認定看護師(CRN-CN)」が分野認定を受けた.以来,当学会でのCRN-CNの活動も活発化してきた.呼吸器疾患看護ケアの科学的レベルアップにつながり,多くの同僚者の知的探求心を刺激することになろう.

    CRN-CN有資格者の増加に伴い,所属する病院内での呼吸器疾患ケア実践の主体となり,看護外来開設をし,また,地域での啓発事業を企画,在宅ケアを実銭,あるいは,教育職に従事し後進を育成するなどCRN-CNの活躍がめざましい.

    課題として,CRN-CN人数の増加と地域偏在の解消,そして対応疾病(非結核性抗酸菌症など)の拡大が望まれる.もちろん,CRN-CN個々人が孤立することなく,連携し,焦らず,目的をもって邁進されることを願ってやまない.

原著
  • 八木田 裕治, 杉野 圭史, 本内 勇斗, 馬上 修一, 齋藤 美加子, 小野 紘貴, 坪井 永保
    原稿種別: 原著
    2025 年 34 巻 2 号 p. 129-135
    発行日: 2025/05/28
    公開日: 2025/05/28
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    間質性肺炎(interstitial pneumonia: IP)診療において6分間歩行試験(6-minute walk test: 6MWT)は,重症度決定を大きく担っているが,スペースや検査時間を要することから全施設にて実施することが困難である.そのため,より簡便に実施出来る検査として30秒間椅子立ち上がり検査(30-sec chair stand test: CS-30)を実施し,6MWTと比較検討した.最低SpO2値(ρ=0.81),SpO2減少量(ρ=0.74),最大脈拍数(ρ=0.74)に強い有意な相関を認め,歩行距離と起立回数(ρ=0.50),修正Borgスケール-呼吸困難-(ρ=0.58)に有意な相関を認めた.そのため,IP患者においてCS-30は6MWTと比べ負荷量の軽減を図ることが可能であり,労作時の desaturationの有無を発見する指標となる可能性があると考えられる.

  • 千葉 史, 小林 誠一, 利部 なつみ, 矢内 勝
    原稿種別: 原著
    2025 年 34 巻 2 号 p. 136-143
    発行日: 2025/05/28
    公開日: 2025/05/28
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    身体活動性の維持・向上はCOPDの重要な管理目標であるが,どのような要因が身体活動性に影響を及ぼしているかは十分明らかにされてはいない.本研究では「石巻地域COPDネットワーク」に登録された安定期COPD患者309人(男性294人,女性15人;年齢中央値75歳)を対象に身体活動性に関連する因子を前向きに検討した.身体活動性は3軸加速度センサー式活動量計で評価した.身体活動性は病期が進行すると低下したが,軽症患者では健常人と同程度であった.身体活動性の高い患者は,若年で,病期が軽く,肺機能と運動耐容能が良好で,息切れが少なく,健康状態が良好で,ADLが高く,抑うつ傾向がなく,増悪歴が少なく,LINQスコアが低かった.COPD患者の身体活動性には,自覚症状・肺機能・運動耐容能とともに,患者の疾患理解度・生活背景・精神状態が関連していることが示唆された.

  • 小林 千穂, 清水 詩子, 大澤 拓, 結城 ちかこ, 大方 葉子, 小山 諭, 坂井 邦彦
    原稿種別: 原著
    2025 年 34 巻 2 号 p. 144-150
    発行日: 2025/05/28
    公開日: 2025/05/28
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    【目的】増悪入院歴のない慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者の身体活動量の実態を呼吸困難の程度の違いも含め,明らかにする.

    【方法】増悪入院歴のない男性のCOPD患者を対象とし,修正MRC息切れスケール(mMRC)を基に2群[A群(mMRC 0-1),B群(mMRC≧2)]に分類し,身体活動量(歩数,代謝当量別時間)測定し比較検討を行った.

    【結果】歩数は両群において有意差を認めないが,B群は歩行および屋外活動に相当する 3.0~3.9 METsが有意に減少していた.また両群は1日の活動において,臥位,座位または立位に相当する 1.0~1.9 METsの割合が高いことが示された.

    【考察】COPD患者が呼吸困難を経験した時点から,身体活動量に関する情報提供と呼吸リハビリテーションの促進が必要であり,身体活動量の向上と維持に対して有益にはたらくようセルフマネジメント支援が課題である.

  • ―PC-PA quadrantsの応用―
    石井 伸尚, 篠原 悠, 田口 真希
    原稿種別: 原著
    2025 年 34 巻 2 号 p. 151-156
    発行日: 2025/05/28
    公開日: 2025/05/28
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    身体能力(PC)と身体活動(PA)は別々の身体機能という概念的枠組み(PC-PA quadrant concept: PC-PA quadrants)を肺癌周術期に応用し,術前身体機能と周術期HRQOLの関連を明らかにすることを目的とした.PCは%6MWD,PAは歩数を指標とし,基準値の100%未満をそれぞれ低PC,低PA,100%以上をそれぞれ高PC,高PAと定義し,PC-PA quadrantsの4群で術前,退院時,退院1か月後のHRQOLを比較した.術前は低PC低PA群が低PC高PA群と高PC高PA群よりEQ-5D-5L index value(p=0.00),EQ VAS(p=0.01)で有意に低値,退院1か月後は低PC低PA群が高PC高PA群よりEQ VAS(p=0.03)で有意に低値となった.肺癌周術期HRQOLには術前の身体能力,身体活動の双方が高いことが有益であると示唆された.

  • 宗方 まどか, 杉野 圭史, 馬上 修一, 八木田 裕治, 齋藤 美加子, 小野 紘貴, 坪井 永保
    原稿種別: 原著
    2025 年 34 巻 2 号 p. 157-164
    発行日: 2025/05/28
    公開日: 2025/05/28
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    間質性肺炎(interstitial pneumonia; IP)患者は,ステロイド薬・免疫抑制薬の使用により口腔カンジダ症を合併することがある.2022年4月から2023年7月までにステロイド薬や免疫抑制薬で治療されたIP患者176名を対象とし,後方視的に調査した.また,2022年10月から含嗽薬の処方を入院日から導入,口腔衛生意識付けのためのパンフレットにて指導を行い,3日以内に介入した.結果,124件に導入し,導入前の52件と比較したところ,口腔カンジダ症の合併は42%から19%と減少し,再発も36%から2%へ減少した.当院の取り組みとして,歯科衛生士が早期から介入し定期的に評価,口腔合併症を発見した際は医師や薬剤師に薬剤の処方検討を提案したことで重症化を抑止できた.歯科衛生士が多職種と連携し,早期から積極的に治療に介入することは,口腔合併症の軽減に有効であることが示唆された.

  • 野間 智美, 尾下 豪人, 坂本 藍, 神田 直人, 齋藤 瑛介, 池上 靖彦, 山岡 直樹
    原稿種別: 原著
    2025 年 34 巻 2 号 p. 165-170
    発行日: 2025/05/28
    公開日: 2025/05/28
    [早期公開] 公開日: 2024/12/25
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    目的:非結核性抗酸菌症(NTM)患者へのエネルギー充足率を指標とした栄養介入の有効性を明らかにする.

    方法:管理栄養士による食事調査と栄養指導を実施したNTM外来患者42例を後方視的に検討した.「エネルギー摂取量/総エネルギー消費量」をエネルギー充足率とし,摂取量は管理栄養士による24時間思い出し法を用いて推算した.

    結果:42例は年齢中央値71歳,女性が34人(81%)だった.低体重(BMI 18.5 kg/m2未満)の22例ではそれ以外の20例と比べてエネルギー充足率が有意に低かった.エネルギー充足率100%未満の21例中16例について栄養指導の3ヶ月後に再評価したところ,エネルギー充足率の改善を認め,3%以上の体重減少を示した患者はいなかった.

    結論:NTM患者において,エネルギー充足率を指標とした早期の栄養指導を行うことにより,エネルギー摂取量が増加する可能性がある.

症例報告
  • 神吉 健吾, 白石 匡, 杉谷 竜司, 水澤 裕貴, 野口 雅矢, 武田 優, 木村 保, 西山 理, 松本 久子, 東本 有司
    原稿種別: 症例報告
    2025 年 34 巻 2 号 p. 171-174
    発行日: 2025/05/28
    公開日: 2025/05/28
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    【はじめに】特発性胸膜肺実質線維弾性症(iPPFE)に対する呼吸リハビリテーション(呼吸リハ)の介入方法は確立されていない.

    【症例】64歳女性.心肺運動負荷試験Peak O2/W: 9.8 ml/min/kg,定常負荷試験耐久時間(Endurance time: ET):3分21秒,呼吸困難(修正Borg Scale; mBS)6であった.超音波診断装置を用いて横隔膜変位量(DE)を評価した.深吸気でDEは,座位19.7 mm,背臥位40.1 mmであった.

    【理学療法】DEの結果から,背臥位で下肢筋力増強,仰臥位用負荷量可変式エルゴメーターによる持久力運動を実施した.

    【結果】Peak O2/Wが 12.5 ml/min/kg,ETが5分15秒,呼吸困難はmBS3へ改善した.

    【結論】iPPFE患者に対する背臥位での運動療法は,より効果的に運動耐容能や呼吸困難を改善する可能性が示唆された.

  • 内視鏡画像から効果を確認する
    星 力央, 中野 恵介, 今井 大智, 植木 佑太, 田中 亮子, 大滝 耕平
    原稿種別: 症例報告
    2025 年 34 巻 2 号 p. 175-177
    発行日: 2025/05/28
    公開日: 2025/05/28
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    症例は喉頭全摘術後に永久気管孔造設を行い,気管炎と血性痂皮による気道閉塞を来した70歳代男性.喉頭全摘術後の気管炎は,吸気の乾燥により気管粘膜の線毛細胞消失,粘膜線毛クリアランスが障害される事により生じるとされ,気管内に粘液栓や血性痂皮が充満する事により致命的な気道閉塞を来す.患者は術後ネブライザー等を拒否する傾向があり,吸気時喘鳴及びSpO2低下を認めた為鏡視下に鋭匙鉗子を用いて血性痂皮を除去した.その直後より加湿方法を検討し気管切開用カニューレOptiflow+(気切アダプタ)を用いたハイフローセラピー(high flow therapy; HFT)を導入,気道クリアランスの改善を試みた.併せて気管支鏡を用いて気道内の状態評価を連日行い,出血及び分泌物の減少と状態改善を確認した.鏡視下画像で気道クリアランス改善評価を実施し,機を逸さずに離脱できた一例を報告する.

  • 佐藤 佑香, 齋藤 佑樹
    原稿種別: 症例報告
    2025 年 34 巻 2 号 p. 178-182
    発行日: 2025/05/28
    公開日: 2025/05/28
    [早期公開] 公開日: 2024/10/30
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    COVID-19肺炎後に低酸素血症となった70歳代前半の症例を担当した.自宅への復帰に向け,労作に伴う低酸素血症状態を軽減しながらのトイレ動作獲得を目指した.一般病棟へ転棟後,リザーバー付き鼻カニュラO2 5 L/minの状態でトイレでの排泄練習を行うと,SpO2 が77%まで低下したが,症例は楽観的な態度を示し,病識が低下している様子が見られた.セルフモニタリング能力の向上と行動変容を目指し,視覚的フィードバックを取り入れながら動作練習を進めたところ,病棟内では動作遂行が可能になった.しかし退院後の夜間の排泄を見据えた環境調整の提案については消極的な態度を示した.そこで,入院中に家族や在宅スタッフと,入院中の経過に加え,症例の環境調整に対する葛藤について共有するとともに,夜間の排泄状況について定期的に確認をしてほしいことを依頼したところ,経過の中で症例は環境調整を自ら選択し,トイレ動作の遂行が可能となった.

研究報告
  • 野村 菜摘, 植木 純, 熱田 了, 佐野 恵美香, 牧野 文彦, 松木 美貴
    原稿種別: 研究報告
    2025 年 34 巻 2 号 p. 183-189
    発行日: 2025/05/28
    公開日: 2025/05/28
    [早期公開] 公開日: 2025/01/28
    ジャーナル フリー HTML

    国内外で公開されている成人喘息に関するモバイルアプリケーション(以下,モバイルアプリ)の仕様の現状を明らかにし将来への示唆を得ることを目的として,日本からダウンロード可能な英語・日本語版アプリを解析した.iOS 69件,Android 10件がダウンロードされた.英語版が多く日本での開発は10件であった.英語版,日本語版ともに電子日誌によるセルフモニタリングを支援する機能,薬剤吸入や日誌記載のリマインダー機能を搭載したモバイルアプリが多くを占めた.医療系の学術機関主体による開発は少なく,包括的な仕様は英語版1件であった.国内外のモバイルアプリの解析により,電子日誌や教育コンテンツなど,それぞれが単一で機能するモバイルアプリが多く,セルフマネジメントスキル向上に重要な構成要素をすべて含むモバイルアプリはリリースされていない現状が明らかとなった.

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