表面科学
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11 巻, 3 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
  • 小川 信二
    1990 年 11 巻 3 号 p. 154-159
    発行日: 1990/04/10
    公開日: 2009/11/11
    ジャーナル フリー
    希ガスのHeはvan der Waals力で多くの表面に吸着するが, 化学吸着ではないので単純に二次元的なHe原子配列ができると考えて基本的には正しいと思われている。この事は表面の研究を行っている多くの人には変化に乏しいシステムと思われるかも知れない。しかし逆に二次元配列状態と通常の三次元配列状態との違いを, 出来るだけ他の複雑な要素が入らない条件下で調べたいと思う場合には, 理想に近いシステムになると思われる。このような観点から表面に吸着したHeの研究が物性物理の研究者によって行われてきた。なかでも3Heは核スピン1/2のフェルミ粒子で磁気モーメントを持っているので, 磁気的性質に関心を持った研究が最近多くなされ, 予想外に多様な磁性を示すことがわかってきた。この稿では吸着3Heの磁性に焦点を絞って最近の研究結果を紹介することにする。
    ただその前に, 吸着3Heの磁性との比較のために, バルクのHeに関する実験結果, スピン1/2の三角格子の磁性の問題点, およびこの様な研究を可能にした最近の超低温実験技術の進歩について, ごく簡単な紹介をはじめに述べておく。
  • 尾崎 義治
    1990 年 11 巻 3 号 p. 160-166
    発行日: 1990/04/10
    公開日: 2009/11/11
    ジャーナル フリー
    超微粒子は, 今科学と工学の両分野から注目されている。物質がどこまで分割できるかというのは, ギリシャ以来, 人類の好奇の対象である。物質の大きさが格子振動の長波長限や, 電子やフォノンの平均自由行程の大きさと同程度になると, 物質の基本的物性である融点, 電子や熱の伝導性, 磁性や誘電性などの諸性質が通常のマクロ系と大変異なることが予想される。また, 集積回路技術に代表される超微細素子製造技術は超微粒子原料の必要性を増大している。このため, 近年超微粒子合成が注目を集めている。ここでは, これらの中から酸化物, 窒化物, 金属超微粒子のとくに注目される合成法について紹介する。いずれも, 従来一般的に用いられている無機塩と水溶液の組み合わせではなく, 有機金属化合物や有機溶媒を使用する系となっている。このような有機化合物の使用は無機反応系に比べて反応を特異化することが容易であり, 諸要求にあった粒子単位で組成の制御された均一性の高い超微粒子の合成に適したものである。
  • 桜井 利夫, 長谷川 幸雄
    1990 年 11 巻 3 号 p. 167-172
    発行日: 1990/04/10
    公開日: 2009/11/11
    ジャーナル フリー
    走査トンネル顕微鏡 (STM) は, 表面の原子構造, 電子状態を実空間で観察することのできる極めてユニークな表面分析手法である。しかし, その有用性が広く認識されるにしたがって, 走査に用いられる探針 (tip) そのものの形状が十分に評価されていないことが問題点としてクローズアップされてきた。こうしたSTMの現状を考慮して, 我々のグループでは, STM中に探針評価及び調整用のFIM (電界イオン顕微鏡) を備えた装置FI-STMの開発を試み, このほど完成させた。本稿では, STMにおける探針の問題点について述べたのち, 最近, 我々のグループで得られた研究結果 [Si(001)2×1-Li, K, Si(111)7×7-Li, Si(111)7×7-H] について報告する。
  • 浅田 洋, 中村 孝
    1990 年 11 巻 3 号 p. 173-182
    発行日: 1990/04/10
    公開日: 2009/11/11
    ジャーナル フリー
    固体表面上の吸着分子の脱離速度における分子間相互作用の効果について, 格子ガスモデルをつかって統計力学的に論じる。主として準化学近似による取扱いについて, 分子場近似と比較しながら述べる。分子間相互作用は最近接分子間にのみ働き, かつ加算的な相互作用ポテンシャルエネルギーで記述できるとするものであるが, それを拡張する最近の試みについても述べる。
  • 田村 かよ子, 小川 久, 布施 玄秀, 岩崎 裕
    1990 年 11 巻 3 号 p. 183-188
    発行日: 1990/04/10
    公開日: 2009/11/11
    ジャーナル フリー
    Ion implantation is employed for trench sidewall doping. Aspect ratios of trenches for high Mbit DRAM become very large, so that very small grazing incidence ion implantation to sidewall is necessary to avoid shadowing effect. In this case, ion reflection in trenches occurs at a high rate and these reflected ions are implanted to the opposite sidewall, so it is very important to know this effect to apply real devices. We have studied these ion reflection effects in trenches by SIMS, and spatial and energy distributions by Monte Carlo Simulation. It is found that reflected atoms were concentrated at the specular reflection angle. The reflected ions were also scattered with large angles because of diffuse and inelastic scattering. These diffusely scattered atoms are implanted to the region facing to the directly implanted region. The experimental results are reproduced well by using distribution functions for an amorphous surface.
  • 全反射蛍光X線分析法の応用
    二宮 利男, 野村 恵章, 谷口 一雄
    1990 年 11 巻 3 号 p. 189-194
    発行日: 1990/04/10
    公開日: 2009/11/11
    ジャーナル フリー
    科学捜査分野においては, 微細な資料が事件解決の重要な鍵となることがあり, 資料の分析に際しては種々の制約から迅速性, 高感度, 非破壊性等が要求される。
    最近, 高感度の非破壊成分分析法として全反射蛍光X線分析法が注日されはじめている。この全反射蛍光X線分析法は通常の蛍光X線分析法と異なり, 励起X線を試料面に対して1度以下の非常に低角度で照射し, 励起に寄与した試料からの蛍光X線のみを半導体X線検出器で検出する方法で, バックグラウンドを非常に低くすることが可能で微量成分を高感度で検出できるという特徴を有しており, 科学捜査分野に適した分析法といえる。
    本報告では, この全反射蛍光X線分析法を水溶液, 布地, プラスチック, 口紅, 朱肉, 生体試料に応用した例について述べる。
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