日本臨床外科医学会雑誌
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57 巻, 10 号
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  • 平田 公一, 榊原 宣
    1996 年 57 巻 10 号 p. 2339-2349
    発行日: 1996/10/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
  • 判別分析を用いた検討
    佐々木 賢二, 三好 康敬, 寺嶋 吉保, 國友 一史, 田代 征記
    1996 年 57 巻 10 号 p. 2350-2354
    発行日: 1996/10/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    1980年4月から1990年12月までに術前に超音波検査が施行され当教室で切除された甲状腺腫瘤203例のうち,甲状腺癌36例,甲状腺良性疾患39例を対象として,腫瘤最大径,縦横比,個数,辺縁の性状,内部エコーの有無およびその均一性,高輝度エコーの有無,後方エコーの性状,乳頭状増殖の有無の10因子について癌と良性疾患の2群間で相関を検討したところ,辺縁の性状,内部エコーの均一性,高輝度エコーの有無,後方エコーの性状の4因子が2群間で高い相関を示した.次に,この4因子を用いて2群間の判別分析を行ったところ, sensitivity 94.1%, specmcity 94.9%, accuracy 92.0%の判別式が得られた.さらに,この判別式を用いてprospective studyを施行した結果,約90%の正診率が得られ,甲状腺腫瘤の超音波診断においてこの判別式は簡便で有用であると思われた.
  • 林 剛, 西田 正之, 佐藤 一彦, 山崎 民大, 田巻 国義, 平出 星夫, 玉熊 正悦
    1996 年 57 巻 10 号 p. 2355-2359
    発行日: 1996/10/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    当科で経験した嚢胞内乳癌13例,嚢胞内乳頭腫11例を対象にそれぞれの臨床像を比較するとともに,嚢胞内腫瘍性病変の診断成績について検討した.最近2年間の頻度は,超音波検査で嚢胞と診断された110例中嚢胞内乳癌3例(2.7%),嚢胞内乳頭腫11例(10%)であった.平均年齢はそれぞれ52.7歳, 40.7歳で,乳癌例が有意に高齢であった.腫瘍径は乳癌例が乳頭腫例より大きい傾向がみられた.良・悪性の鑑別診断の方法として,マンモグラフィー,超音波,穿刺吸引細胞診と乳頭分泌物細胞診およびマンモテックなどの検査を行ったが,乳癌例でのみ所見のあったのは,X線写真上の微小石灰化像(3/13例),穿刺吸引細胞診でclass IV以上(2/13),マンモテック陽性(2/5)の3項目で,診断率は低かった.また,乳頭腫例にのみにみられる特有な所見はなかった.従って,嚢胞内の腫瘍性病変の鑑別診断には有力な診断法が少ないことから,少しでも悪性が疑われる症例には,生検により確定診断をつけるのが最も良い方法と考えられた.
  • cyclin D1蛋白発現の意義
    阿部 元, 迫 裕孝, 梅田 朋子, 内藤 弘之, 寺田 信國, 小玉 正智, 服部 隆則, 沖野 功次
    1996 年 57 巻 10 号 p. 2360-2364
    発行日: 1996/10/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    1978年11月から1994年12月までに当科において92例のn0乳癌を経験し, n0乳癌再発に対するhigh risk groupの背景因子を検討した.また, cyclin D1蛋白発現の意義を43例について検討した.再発は92例中8例(8.7%)に認められ, n(+)症例より再発は少なかったが,無病期間,再発形式に関して有意差を認めなかった. n0乳癌再発の背景因子として有意義であったものは年齢では50歳以下,閉経前,腫瘍占拠部位では内側部,組織型は硬癌,組織学的悪性度はgrade III,脈管浸潤陽性例であった.腫瘍径,波及度, Estrogen receptor発現の有無,術後補助療法に関しては関連を認めなかった.また, cyclin D1蛋白発現が強陽性の場合,弱陽性または陰性例に比べて有意に再発率が高かった.以上より, n0乳癌再発のhigh risk groupとしては若年者,硬癌,組織学的悪性度がgrade III,脈管浸潤が陽性のものが考えられ,さらにcyclin D1蛋白発現の有無は重要な予後因子になりうると考えられた.
  • アセトアミノフェン法による胃排出能の評価
    門口 幸彦, 福田 直人, 杉山 貢
    1996 年 57 巻 10 号 p. 2365-2369
    発行日: 1996/10/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    迷走神経切離術,幽門形成術の消化管ホルモン分泌動態,消化機能に対する影響を調べるために十二指腸潰瘍穿孔に対する全幹迷走神経切離術兼幽門形成術術後症例,単純閉鎖術術後症例と健常者に対して食餌刺激とアセトアミノフェンの経口投与により消化管ホルモンの変化と胃排出能を検索した.血中ガストリン濃度は迷切群が高値を示したが食餌刺激に対しては3群とも同様に上昇した.しかし迷切群では刺激前値への回復が速やかであった.血中セクレチン濃度は3群とも食餌刺激に対して反応しなかった.血中CCK濃度は健常者と単純閉鎖術後では食餌刺激に反応しなかったが迷切術後では食餌刺激により増加を認めた.アセトアミノフェン法による胃排出能の評価では迷切群が他の2群に比べて胃排出能が亢進していた.
    以上より迷切術の中で減酸効果の最も良い全幹迷切術に幽門形成術を付加した場合には,全幹迷切術の欠点とされる胃排出能の障害はみられなかった.しかし迷走神経腹腔枝の切離される全幹迷切術では膵外分泌機能低下をきたす可能性があり,術式の選択には考慮が必要であると思われる.
  • 大内 慎一郎, 瀬戸 泰士, 花岡 農夫, 工藤 保, 李 力行, 田中 雄一
    1996 年 57 巻 10 号 p. 2370-2374
    発行日: 1996/10/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    過去10年間に当院で手術を施行した上部早期胃癌は22例で,噴切11例,全摘11例であった.噴切例を全摘例と比較しながら,リンパ節転移,予後などから根治性を検討し,術後のQOLについて評価した.全摘例のリンパ節転移範囲より噴切で郭清されないNo. 4d, 5, 6のリンパ節には転移は認められず,予後でも噴切例は全摘例と差はみられず,早期胃癌に対しては噴切で十分な根治性が得られた.一方, sm癌の低分化例にNo. 7, 11のリンパ節に転移がみられ, 2群までの郭清を考慮することが重要であった. QOLを比較すると,食事量,体重の変化,血液検査成績,満足度などについては差は認められず,今後さらに,症例の集積と解析が必要であった.
  • sm亜分類によるリンパ節転移の実態からの検討
    荒井 邦佳, 北村 正次, 岩崎 善毅
    1996 年 57 巻 10 号 p. 2375-2379
    発行日: 1996/10/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    粘膜下層癌401例を, (1)顕微鏡的浸潤(sm1), (2)肉眼的中等度浸潤(sm2), (3)肉眼的大量浸潤(sm3)に3分類し,外科的局所切除およびD1+No. 7郭清による縮小手術の可能性を検討した.占居部位,肉眼型,腫瘍最大径別に組織学的リンパ節転移をみると,外科的局所切除の条件は, (1) sm1のC領域癌, (2) sm1の隆起型, (3) 1.0cm未満のsm全例であり,その合計は33例(8%)であった.また, D1+No. 7の条件は, (1) sm1の全例, (2) C領域癌, (3)隆起型, (4) 2cm未満のsm全例となるが,リンパ節転移の危険因子であるul(+)および低分化型癌を除外すると,その合計は101例であった. ly(+)の頻度はsm1の37%に比較しsm2から83%と激増することから縮小手術の可能性はsm1が対象となるが,正診率が62.5%である現状ではsm浸潤を疑う症例に対してはD2郭清を基本術式とすべきである.
  • 石後岡 正弘, 平尾 雅紀, 山崎 左雪, 樫山 基矢, 原 隆志, 河島 秀昭, 細川 誉至雄
    1996 年 57 巻 10 号 p. 2380-2383
    発行日: 1996/10/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    残胃の癌を初回病変とは無関係に発生したと思われる初回術後5年以上経過した症例と定義し,経過年数10年未満を短期群8例, 10年以上を長期群8例に亜分類して比較検討した.その結果初回病変が胃潰瘍は長期群の3例のみでうち2例はB-II再建であり,胃癌13例中12例は早期癌.長期群は短期群に比し,初回切除時年齢が若く,残胃の癌において有症状者が多く,進行癌が多い傾向にあったが他の病理学的所見および発生部位に差はなかった.両群ともstage IVが1例ずつあり再発死亡したが,他はすべてstage II以下で根治術が施行され,全例生存中で予後良好であった.以上より残胃の癌の早期発見が治療成績向上に重要であり,そのためには長期にわたっての定期的な内視鏡検査と胃切除後患者に対する積極的follow upも必要と考えられた.
  • 特にERCとの比較において
    町田 浩道, 中谷 雄三, 小島 幸次朗, 神崎 正夫, 戸田 央, 鳥羽山 滋生, 井垣 弘康, 大場 宗徳, 大石 英人, 須賀 弘泰, ...
    1996 年 57 巻 10 号 p. 2384-2389
    発行日: 1996/10/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    腹腔鏡下胆嚢摘出術(LC)の適応決定や難易度判定の評価にDIC併用ヘリカルCTによる三次元表示(3D-CT)が有効かどうか検討した.対象はLC術前に3D-CTを行った56例である.特にERCと3D-CTを同時に行った42例については両者を比較した.
    胆嚢管の合流形態で起始部,前後および左右方向の3D-CT/ERCによる描出率は100/92.9%, 92.9/71.4%, 92.9/88.1%であった.胆管走行異常は5例あり全例描出された.被爆線量,費用の点でも3D-CTがERCに勝っていた.
    以上よりLC術前検査として3D-CTは有効である.
  • 浅田 康行, 三浦 将司, 三井 毅, 森田 克哉, 宗本 義則, 笠原 善郎, 齊藤 英夫, 飯田 善郎, 藤沢 正清
    1996 年 57 巻 10 号 p. 2390-2396
    発行日: 1996/10/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    切除胆嚢癌53例を対象に従来の病理組織学的予後規定因子に胆嚢異型上皮の存在を加えて検討した.さらにss癌に絞り,遠隔成績を用いて,どの因子が重要かを考察した.異型上皮の陽性率は深達度の浅い例で高かった(p<0.01). ss癌での病理学的諸因子のうちリンパ管浸潤陽性(p<0.05),組織学的胆管浸潤陽性(p<0.01),漿膜下における癌の広範囲浸潤(p<0.01)で有意に予後が悪く,異型上皮陽性(p<0,01)で有意に予後が良かった.また組織型pap,リンパ節転移陰性, INFではα, β, γの順に,漿膜下における癌の深達度ではSS1, SS2, SS3の順に予後が良い傾向にあったが有意差はなかった.肉眼型,腫瘍の部位,癌の実質と間質との量比,静脈浸潤,神経浸潤,組織学的肝内直接浸潤については予後との関連性は認めなかった.異型上皮を有する胆嚢癌の予後は良く,異型上皮の有無は新たな病理学的予後規定因子になり得た.
  • 高橋 利幸, 本原 敏司, 奥芝 俊一, 道家 充, 加藤 紘之, 山本 有平, 大浦 武彦
    1996 年 57 巻 10 号 p. 2397-2402
    発行日: 1996/10/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    教室で経験した肝動脈,上腸間膜動脈への浸潤を伴う進行膵,胆道癌のmicro surgeryを応用した動脈合併切除再建症例の成績について検討し,その意義と問題点について述べた.対象は膵癌6例,胆道癌4例の10例で, 6例に門脈合併切除を併施した.術後動脈造影で再建動脈の血行を確認しえた7例では全例良好な開存が確認された.動脈再建に伴う合併症は10例中2例であったが,全体の合併症率は6例, 60%で,うち4例が在院死した.耐術例の最長生存期間は膵癌で11カ月,胆道癌で14カ月であった.以上よりmicro surgeryを応用した動脈合併切除再建は動脈血行再建の成功率を向上させたが,進行膵,胆道癌の外科治療成績向上に寄与し得なかった.
  • 大内 真吾, 岡田 伸之, 鈴木 克, 亀井 真理, 岡田 修, 佐藤 雅夫, 佐熊 勉
    1996 年 57 巻 10 号 p. 2403-2405
    発行日: 1996/10/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は53歳,男性.右側頸部腫瘤を主訴に来院し,右側頸部胸鎖乳突筋前縁に4.5×3.8cm大の腫瘤を触知した.コンピューター断層撮影にて内部均一のlow densityな嚢胞様の腫瘤を認めたため,側頸嚢胞の診断にて腫瘤を単純全摘出した.病理組織学的に嚢胞壁の一部がdysplasticな重層扁平上皮から扁平上皮癌に移行する所見が認められたため,鯉性癌と診断した.
  • 杉野 圭三, 岡本 英樹, 札場 保宏, 杉 桂二, 武市 宣雄, 土肥 雪彦
    1996 年 57 巻 10 号 p. 2406-2408
    発行日: 1996/10/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    甲状腺手術の際に稀に反回神経(下喉頭神経)が右鎖骨下動脈の下を反回せず,直接迷走神経より分枝する症例を経験する.非反回下喉頭神経(NRILN)は右鎖骨下動脈起始異常に伴う発生異常である. NRILNの走行は通常迷走神経より直接分枝し,甲状腺の裏側を走行し喉頭へ入るが,胸骨甲状筋の裏側と甲状腺前面の間を走行していた稀な症例を経験した. NRILNの症例は術前食道透視で,異常右鎖骨下動脈による切痕を認めることが多く,術前食道透視や,術中の反回神経の慎重な確認で反回神経麻痺を防ぐことが必要である.
  • 佐古田 洋子, 河野 範男, 寒原 芳浩, 中谷 正史, 石川 羊男, 指方 輝正
    1996 年 57 巻 10 号 p. 2409-2412
    発行日: 1996/10/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    顆粒細胞腫は,比較的よく見られる腫瘍であるが,乳腺に発生することはまれである.今回私どもは乳腺の顆粒細胞腫を経験したので報告する.症例は34歳女性,左乳房B領域に直径1cmの腫瘤を認め,マンモグラフィー,エコーで乳癌が強く疑われた.穿刺吸引細胞診では, Class IIIであったため,摘出生検を行い顆粒細胞腫の診断を得た.組織学的には,細胞質内に, PAS染色陽性の微細顆粒を豊富に認め,顆粒細胞腫の診断は容易であった.免疫組織染色ではS-100蛋白陽性, NSE陽性, vimentin陽性, HHF35陰性, α-smooth muscle陰性で神経原性の腫瘍と考えられた.臨床像が癌と酷似することより,鑑別診断に注意を要すると考えられた症例である.
  • 根本 充, 林 嘉繁, 小尾 芳郎, 鬼頭 文彦, 福島 恒男
    1996 年 57 巻 10 号 p. 2413-2417
    発行日: 1996/10/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    妊娠に伴い急速に増大し,悪性化も否定できず治療法の選択に苦慮した再発葉状腫瘍を経験したので報告する.症例は31歳女性で, 1993年9月,左乳腺腫瘍に対し腫瘍摘出術を施行し,病理診断は良性葉状腫瘍であった. 1994年4月,手術創直下に一致して腫瘤を認めたが,増大傾向はなく経過観察していた. 1995年1月,妊娠6週頃より急速に増大傾向を示した.初回手術での取り残しが再発の原因と考え,臨床的に悪性葉状腫瘍と診断し非定型乳房切除術を施行した.病理組織学的には初回と比べ,上皮成分および間質成分ともに細胞密度を増していたが良性葉状腫瘍であった.また,人工妊娠中絶術を同時に施行したが,人工妊娠中絶と葉状腫瘍の予後については今後検討が必要である.
  • 長谷部 浩亨, 武田 泰隆, 柳衛 宏宣, 秋山 七千男, 吉崎 巖, 藤井 祐三, 江里口 正純
    1996 年 57 巻 10 号 p. 2418-2422
    発行日: 1996/10/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は41歳女性.平成5年3月頃から右乳房に痛みを感じ,しこりに気づいていたが民間療法のまま放置していた.しかし,同年8月頃から急速に増大し,翌年1月には,皮膚を穿破し体表に露出してきたので,手術目的で同年4月当科へ入院となった.
    入院時,腫瘤は右乳房全体にカリフラワー状の増殖を呈しており,大きさは23cm×19.5cm,易出血性で滲出液が多量に出ている状態であった.術前の他院での生検による病理所見では良性葉状腫瘍との診断であったが,一年間で急速に増大したこと,また,腫瘍が巨大であることから臨床的には悪性を否定できず,非定型的右乳房切断術(Patey法)および全層皮膚移植術を施行した.術後の病理組織学的検査では悪性との診断であった.術後約二年の現在,再発もなく元気である.
  • 石崎 政利, 秋山 典夫, 加藤 広行, 笹本 肇, 杉山 博之, 福地 稔
    1996 年 57 巻 10 号 p. 2423-2427
    発行日: 1996/10/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    乳腺アポクリン癌の1例を経験したので報告する.症例は54歳女性.右乳房のしこりを主訴に来院した.右乳房外下に3cmの腫瘤を認め,腋窩に硬いリンパ節を触知した.また,骨シンチで右第10肋骨に異常集積像が認められた.生検の結果,乳癌(T2a, N1b, M1, Stage IV)と診断され,定型的乳房切除術および化学療法を施行した.術後病理組織学的検査でアポクリン癌(t2, n2, M1, Stage IV)と診断された.乳腺アポクリン癌の発生頻度は全乳癌の0.2~1.0%と稀であるが,予後は通常の乳癌より良好なものが多いとされている.しかし,自験例のように遠隔転移をともなったものは極めて稀なため,厳重な経過観察が必要である.
  • 嶋田 昌彦, 浦上 秀次郎, 川本 清, 松本 秀年, 森 光生, 渡辺 衛
    1996 年 57 巻 10 号 p. 2428-2432
    発行日: 1996/10/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    同時性および異時性の乳癌肝転移の2例に対し, MMCを主体とした化学内分泌療法を行い,著効が得られた.症例1は41歳の女性で,右乳癌T2aN1bM1 (H3)の診断で, 1993年12月9日非定型的乳房切除術を施行した.入院中に, ADM, CPA, 5-Fuを投与し,退院後はMMC 10mg/M×10, 5'-DFUR 1,200mg/D, TAM 20mg/Dで治療を行っている.術後1年のCT検査にて肝のLDAはほぼ消失し, CA15-3は術前124U/mlが9U/mlまで低下した.症例2は55歳の女性で,左乳癌T1aN0M0にて1987年12月14日定型的乳房切除術を施行した. L-ScLN転移のため1993年6月23日左頸部リンパ節郭清を行い,術後にradiationを行った.その後, CEA, CA15-3の上昇を認め, 1994年5月に肝転移(H2)と診断された. MMC 10mg/M×10, UFT 400mg/D, MPA 600mg/Dの治療を行い, CT上肝のLDAはほぼ消失し, CEA 2.3ng/ml, CA15-38U/mlと下降した. 2例ともにER陽性, PgR陽性であった.
  • 金沢 成雄, 村上 泰治, 正木 久男, 森田 一郎, 田淵 篤, 石田 敦久
    1996 年 57 巻 10 号 p. 2433-2437
    発行日: 1996/10/25
    公開日: 2009/02/20
    ジャーナル フリー
    症例1は63歳男性.近医にて胸部異常陰影を指摘され,穿刺排液を施行されたが再発したため,当科入院.胸部X線, CT検査で心膜嚢腫と診断し,後側方開胸術を施行.嚢腫は横隔膜,心嚢,右前胸壁に接して存在し,心嚢内への交通は認めなかった.症例2は58歳女性.健診で胸部異常陰影指摘され,当科入院.胸部X線, CT検査で縦隔腫瘍を疑い,胸骨正中切開で入ると右室後面に嚢腫状腫瘤を認め,心膜と有茎性に連結していた.症例3は48歳女性.健診で胸部異常陰影を指摘され,当科入院.胸部X線, CT検査で心膜嚢腫と診断,後側方開胸術を施行.嚢腫は横隔膜,心嚢,右室側方に接しており,心膜と有茎性に連結していた.組織学的に嚢腫内面は一層の偏平または立方状細胞よりなり,外層は疎性結合織より成っていた.心膜嚢腫は比較的稀な疾患で,一般に無症状に経過する事が多い.穿刺排液では再発することが多く,悪性化の報告もあり,積極的に摘除すべきであると考える.
  • 木村 龍範, 岩田 英理子, 中城 正夫, 庄司 剛
    1996 年 57 巻 10 号 p. 2438-2441
    発行日: 1996/10/25
    公開日: 2009/02/20
    ジャーナル フリー
    症例は,腹部大動脈瘤で経過観察中に絞扼性イレウスを発症し小腸切除術を施行,その2日後に腹部大動脈瘤が破裂し人工血管置換術を施行した67歳男性である.一般に,汚染手術である消化器手術と人工血管置換術の同時手術は適当でないと考えられ,二期的に行う場合にもその間隔については統一した見解は示されていない.本症例では,大量の腸管壊死に対する消化器手術の53時間後に人工血管置換術を施行する結果となったが,術後重篤な合併症もなく良好に経過した.
    消化器疾患と腹部大動脈瘤を有する症例での手術方法,また術後管理について言及した.
  • 松井 隆則, 内田 安司, 杉山 敬, 市原 透, 井上 昭一
    1996 年 57 巻 10 号 p. 2442-2444
    発行日: 1996/10/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は17歳,男性.ガラスのドアに衝突し,右側胸部を強打した.胸部単純レントゲン写真にて気胸と胸腔内異物を指摘され,受傷後3日目に手術目的で本院へ紹介された.全身状態は良好であったため,胸腔鏡下手術が可能と判断し,同日,胸腔鏡下異物除去術を施行した.術後経過は良好で,疼痛も軽度であった.
  • 鷲尾 一浩, 黒住 要, 原 浩平
    1996 年 57 巻 10 号 p. 2445-2448
    発行日: 1996/10/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は66歳男性,反復する嘔吐・心窩部痛等の上腹部症状を認めたため入院した.上部消化管造影等の検査より間膜軸性胃軸捻転症を伴った傍食道裂孔ヘルニアと診断した.手術時,十二指腸の後腹膜への固定が弛緩していたため,小網が先進部になり胃前庭部および十二指腸球部が網隔内に脱出し間膜軸性胃軸捻転症を来たしていたことが確認された.ヘルニア嚢還納・切除後,テフロンパッチを用いて食道裂孔を縫縮した.
    本邦では胃軸捻転症を伴った成人食道裂孔ヘルニアの報告例は比較的少数である.間膜軸性胃軸捻転症を伴った成人食道裂孔ヘルニアの1例を経験したので文献的考察を加えて報告する.
  • 吉田 節朗, 添野 武彦, 最上 栄蔵
    1996 年 57 巻 10 号 p. 2449-2453
    発行日: 1996/10/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は57歳の男性.嚥下時の胸部不快感を主訴に来院.精査にて下部食道癌と診断され中下部食道・噴門側胃切除を施行.病理組織学的には深達度sm,脈管侵襲陰性(ly0, v0),リンパ節転移陰性(n0)の食道カルチノイドと診断された.術後15カ月後に頸部・縦隔リンパ再発をきたし,計60GyのT字照射を行い一時著明なリンパ節の縮小を認めたが,術後21カ月後にリンパ節転移が再燃し死亡した.
    本邦における食道カルチノイド手術報告例12例の予後は不良であり,死亡例は全てリンパ節転移・再発を伴っていた.長期生存の条件として, 1)腫瘍径2cm以下, 2)深達度sm以下, 3)リンパ節転移陰性が挙げられた.
    治療は,本腫瘍が通常の癌と同等以上の悪性性格を持つことを認識し,特に径2cm以上の腫瘍に対しては,充分なリンパ節郭清を伴う手術が必要である.また,深達度sm以上やリンパ節転移陽性例は照射療法や化学療法等による補助療法も考慮されるべきと考えられた.
  • 池田 剛, 田 大宇, 東口 高志, 横井 一, 小倉 嘉文, 川原田 嘉文, 庄司 一寅, 野本 由人, 中川 毅
    1996 年 57 巻 10 号 p. 2454-2462
    発行日: 1996/10/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    CDDPと5FUの多剤併用化学療法と体外照射に腔内照射を加えた放射線療法を施行し,著効が得られた進行食道癌を3例経験したので報告する.症例1: 50歳,男性.胸部中部食道癌で大動脈浸潤が疑われ,放射線化学療法を施行.施行後Stage IIIとなり,治癒切除可能と判断し,リンパ節郭清兼胸部食道全摘を施行.組織学的に癌の遺残はなく,術後18カ月目の現在健在である.症例2: 68歳,男性. Stage IIIの胸部食道癌であったが,手術拒否のため放射線化学療法を施行.治療後の生検で同部位の癌細胞は消失し, 12カ月目の現在再発を認めていない.症例3: 48歳,男性.胸部中部~下部食道癌で大動脈周囲ならびに腹腔内リンパ節への転移が疑われ,治癒切除不能と判定し,放射線化学療法を施行.施行後腫瘍は縮小し, 6カ月目の現在健在で,治療継続中である.高度進行食道癌に対して,患者のQOLを考慮した治療法の選択が大切で,放射線化学療法はこれらの症例に効果的な治療法の一つである.
  • 森 匡, 宗田 滋夫, 橋本 純平, 吉川 幸伸, 大山 司, 中根 茂, 大嶋 正人
    1996 年 57 巻 10 号 p. 2463-2467
    発行日: 1996/10/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は63歳,男性.特に主訴はなく,健康診断で上部消化管造影検査を受け,胃病変を指摘された.精査のため当院内科受診し,胃粘膜下腫瘍と診断されたが,無症状で2cm以下のため,経過観察されていた.生検では組織診断が十分つかず,腫瘍も急速に増大してきたため当科紹介され,胃噴門側切除術を施行した.切除標本では,腫瘍は粘膜下から漿膜下にかけ,径約3cm大の境界明瞭な腫瘍を認めた.病理組織検査では紡錘形細胞の密な結節性増殖巣よりなり,一部に薄い線維性結合織被膜を有していた.また,免疫組織学的検査では腫瘍細胞の胞体はSMA, S-100蛋白染色で陰性で, CD34染色で陽性を示し, leiomyomaやschwannomaが否定的で組織由来の明らかでない狭義のstromal cell tumorと診断された.核分裂像は高倍率10視野で3~5個認め,悪性度は境界領域と考えられた.本疾患の概念は,いまだ確立されておらず,文献的考察を加え報告する.
  • 根岸 京田, 瀧川 利幸, 高岡 和彦, 加藤 貴
    1996 年 57 巻 10 号 p. 2468-2471
    発行日: 1996/10/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    胃十二指腸動脈瘤は稀な疾患であり,腎動脈瘤を除く腹部内臓領域の動脈瘤のうち1.5%を占めるにすぎない.今回われわれは,胃十二指腸動脈瘤が十二指腸内に穿破した症例を経験したので報告する.
    症例は81歳男性, 10年前に早期胃癌で幽門側胃切除の既往がある.特に誘因なく突然吐血し近医に入院,一旦軽快した後,再び吐血したため当科へ紹介入院となった.内視鏡で十二指腸に粘膜下腫瘍様の隆起と,その頂上の浅い潰瘍からの出血を認めた.クリップにて一旦止血したが,その後再出血しショックとなったため緊急手術を行った.手術所見で,胃十二指腸動脈瘤の十二指腸への穿破と診断し,胃十二指腸吻合部と動脈瘤を一括切除した.
    膵周囲の動脈瘤のうち60%は膵炎に関連する仮性動脈瘤であり,動脈硬化性の真性動脈瘤は約30%である.症状に特徴的なものはなく,間欠的な大量吐血を見た場合,本症を念頭に置くことが必要である.
  • 綿引 洋一, 森 紀久朗, 北條 正久, 小坂 昭夫, 中村 達
    1996 年 57 巻 10 号 p. 2472-2476
    発行日: 1996/10/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    広汎胃切除時の右胃大網動静脈結紮部に生じた動静脈瘻(動脈門脈瘻)の1例を経験した. 45歳の男性で,特に自覚症状なく,上腹部のthrillで偶然発見された症例である.門脈血流の増加に関わらず,門脈圧は13cmH2Oと正常範囲に保たれており,肝組織にも異常所見を認めなかった.瘻孔切除を施行し,肝血流は2/3,門脈血流は1/3,門脈圧は11cmH2Oに低下した.術後経過は良好で,肝機能の変動はまったく認めなかった.
    自験例では,瘻孔発生からの経過が短く,瘻孔径も小さく,かっ肝疾患がなく門脈系のコンプライアンスが正常に保たれていた事により門脈圧亢進を来さなかったと考えられる.
  • 味木 徹夫, 石田 常之, 奥村 修一, 藤盛 孝博, 前田 盛, 伊藤 令子, 井出 孝夫, 佐野 均
    1996 年 57 巻 10 号 p. 2477-2481
    発行日: 1996/10/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は86歳男性で,心窩部不快感を主訴に来院した.十二指腸球部に隆起性腫瘤を認め,生検にて高分化型腺癌と診断された.最大25mmの広基性病変であり,外科的ポリペクトミーを施行した.病理学的検索から同腫瘤が十二指腸球部の異所性胃粘膜に由来した腺癌と考えられた.十二指腸癌は大部分が腺腫起源かde novo発生とされており,異所性胃粘膜由来のものは極めて珍しいと考えられたので報告した.
  • 市場 洋, 本田 宏, 林 武利, 小山 一郎, 佐藤 純彦
    1996 年 57 巻 10 号 p. 2482-2485
    発行日: 1996/10/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    術後胃に生じた胃石が小腸に嵌頓し腸閉塞症をきたした報告はまれである.今回われわれは選択的迷走神経切離術兼幽門形成術後25年目に発症した柿胃石による腸閉塞症を経験したので文献的考察を加え報告する.症例は60歳,男性. 10歳時,虫垂切除術, 35歳時,十二指腸潰瘍にて選択的迷走神経切除+幽門形成術をうけた.平成7年11月5日より心窩部痛,嘔吐出現.近医受診したが次第に症状は増悪し平成7年11月7日腸閉塞症の診断で当院入院となった.保存的加療を試みたが軽快しないため手術を施行した.胃内,回腸内に腫瘤を認め,成分分析の結果,両者とも柿胃石と考えられた.
  • 花沢 一芳, 谷 徹, 岡 浩, 遠藤 善裕, 柴田 純祐, 小玉 正智
    1996 年 57 巻 10 号 p. 2486-2489
    発行日: 1996/10/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    小腸憩室は,消化管憩室においてその頻度が約2.7%とされ,比較的稀な疾患とされている.今回著者らは,十二指腸より回腸末端におよぶ全小腸におよぶ無数の憩室のうちの一つが穿孔を呈した症例を経験した.
    ‹症例› 79歳女性で発熱,下腹部痛を主訴とし来院.入院後第22病日に腹部単純X線にてfree airを認めたが,手術に対する患者の同意が得られず,保存的治療を行い一旦改善したが,第101病日,再度free airが認められたため,小腸憩室の穿孔と診断し,手術を行った.穿孔部は回腸末端より約20cmの口側の憩室が穿孔しており,この穿孔部の小腸切除を施行した.小腸全体に多数の憩室を認めた報告は極めて稀である.穿孔を来した多発性小腸憩室の1例を報告し,若干の文献的考察を加えた.
  • 中川 国利, 桃野 哲
    1996 年 57 巻 10 号 p. 2490-2493
    発行日: 1996/10/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    他疾患の手術時に偶然発見された,回腸線維腫の2例を経験したので報告する.症例1は75歳の男性で, 18歳時に虫垂炎にて虫垂切除,引き続き腸閉塞症にて回腸・横行結腸吻合術を施行された. 5年前より腸閉塞症にて5回の入院加療を受け,腹痛・嘔吐を主訴として来院した.腸閉塞症として開腹したところ,癒着性腸閉塞を認めたため癒着剥離を行うと共に,回腸・横行結腸吻合を外す際に回腸を約15cm切除した.切除した回腸に20×15×15mm大の腫瘍を認め,組織学的には線維腫であった.症例2は72歳の女性で,検診にて便潜血反応陽性を指摘され,精査にて上行結腸に27×20×6mm大でIspの腫瘍を認めた.生検では腺腫であったが悪性も否定できないため,手術を施行した.腹腔鏡下に観察すると回盲弁より8cm口側の回腸に径5mm大の腫瘍を認めたため,同部を含めて腹腔鏡補助下に右半結腸切除術を施行した.組織学的には回腸は線維腫で,結腸は腺腫であった.
  • 加藤 憲治, 櫻井 洋至, 松田 信介, 鈴木 英明
    1996 年 57 巻 10 号 p. 2494-2498
    発行日: 1996/10/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    腸回転異常症は新生児期に上部消化管閉塞症状をきたして発見されるものがほとんどであり,小児外科の領域では重要な疾患である.一方,成人の腸回転異常症は稀な疾患であり,他疾患の検査,治療時に偶然発見されることも少なくない.今回われわれは腸回転異常を伴ったため術前診断が困難であった急性虫垂炎の1例を経験したので報告する.症例は66歳男性.左下腹部痛を主訴に来院. S状結腸憩室炎を疑い保存的に治療したが,腹痛の増強と腹部CTで左下腹部の腹壁直下に膿瘍を認め,消化管穿孔による腹腔内膿瘍の診断で手術を施行した.手術所見ではmalrotation typeの腸回転異常を認め,虫垂は左下腹部に位置し根部で穿孔しており,回盲部およびS状結腸と腹壁の間で膿瘍を形成していた.回盲部の炎症が高度なため回盲部切除を行い,腸回転異常に対してはLadd靱帯の切離を行った.
  • 和田 修幸, 吉田 悟, 遠藤 権三郎, 山本 裕司, 鹿原 健, 吉田 幸子, 長谷川 信吾
    1996 年 57 巻 10 号 p. 2499-2503
    発行日: 1996/10/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    結腸原発の腸管悪性リンパ腫は比較的稀な疾患である.われわれは,回盲部(盲腸部)に発生した腫瘤を先進部とし,腸重積症を呈した悪性リンパ腫の1例を経験したので報告する.
    症例は76歳の男性,腹痛を繰り返し受診.初診時には右季肋部に可動性ある手拳大の腫瘤を触知した.注腸ではカニの爪状の陰影欠損を呈し,送気によって重積状態が整復され,回盲部に腫瘤影が認められた. CTでは,拡張した結腸内腔に腫瘤を認め,一部重積している横断面が描出された.内視鏡では,表面凹凸不整の易出血性隆起病変を認めた.以上より,回盲部悪性腫瘍および腸重積症の診断にて,右半結腸切除およびリンパ節郭清(D3)を施行した.所属リンパ節の腫大が見られたが,他臓器への浸潤,腹膜播種はなかった.病理診断は,悪性リンパ腫, diffuse, mixed, B cell, se, n2 (+)であり,術後CHOP療法を施行し退院,現在まで再発の徴候はない.
  • 新井 竜夫, 小野 正人, 谷山 新次, 白井 芳則, 杉藤 正典, 竜 崇正
    1996 年 57 巻 10 号 p. 2504-2509
    発行日: 1996/10/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    大腸癌はその生物学的特性により再発しても早期に発見すれば再切除可能な病変も多い.症例は59歳の女性で,初回は横行結腸癌の診断にて右半結腸切除術を施行している.その後再発病変に対し外科的再切除を繰り返し,計5回の手術を行い約5年間生存している.すべての再発病変は無症状のうちに発見され,腫瘍マーカーも全経過を通して正常であった.
    大腸癌の治療成績を向上させるためにも術後の経時的観察は重要である.しかしすべての症例を同じように観察するのでは無駄も多い.術後高度再発危険群として従来の深達度,組織型,リンパ節転移,脈管侵襲に加え,神経浸潤,先進部組織移行なども加味し,効率よく再発を発見し治療することが重要と考えられた.
  • 稲垣 均, 中尾 昭公, 野本 周嗣, 原田 明生, 野浪 敏明, 高木 弘
    1996 年 57 巻 10 号 p. 2510-2515
    発行日: 1996/10/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は45歳の男性.人間ドックの腹部超音波検査にて肝腫瘍を指摘された.超音波では,境界明瞭な高輝度の腫瘍であり, CTでは高吸収域を有した低吸収域を呈し,血管造影では,濃染像として描出された.以上より肝血管筋脂肪腫(HAML)を強く疑うも,悪性腫瘍を否定できず,肝部分切除を施行した. HAMLは,肝良性腫瘍の中できわめて稀な疾患であり,本邦報告例は,われわれが検索しえた範囲内で,自験例を含めて54例に過ぎない.外科的切除を施行されている症例が多いが,近年,生検のみで経過観察される報告例も見られる.しかし,病理組織上,脂肪成分,血管成分,平滑筋成分の増生を特徴とする本疾患では,これら3成分および正常肝細胞の構成比率の違いにより,画像上,多彩な画像を呈しうる.このため,近年における画像診断の発展にもかかわらず,悪性疾患との鑑別は困難である症例もあり,治療方針決定の際には,注意を要すると思われる.
  • 宗本 義則, 三井 毅, 笠原 善郎, 斎藤 英夫, 浅田 康行, 飯田 善郎, 三浦 将司, 藤沢 正清, 寺田 忠史
    1996 年 57 巻 10 号 p. 2516-2521
    発行日: 1996/10/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    乳癌の肝転移と鑑別に苦慮した混合型肝癌を経験したのでその画像所見を中心に報告する.症例は, 59歳女性で,主訴は,左乳房腫瘍である.生化学検査で肝機能障害, AFP, CEA, CA19-9, DUPAN-2, CA15-3, TPA, CA12-5の腫瘍マーカーの上昇とHCV抗体陽性を認めた.乳房腫瘍は,軟線撮影,超音波検査で不均一な腫瘍で原発性乳癌を疑った.切除腫瘍の組織学的検討で原発性乳癌と診断された.腹部超音波検査でS5-8に境界不明瞭な低吸収の腫瘍を, S8に境界明瞭な高吸収の腫瘍を認めた. CT検査でもS5-8の腫瘍は,境界不明瞭な低吸収域であり, S8の腫瘍は,境界明瞭であった.食道静脈の破裂から肝不全で死亡した.剖検肝の組織所見で索状配列を示す肝細胞類似の悪性細胞(Edmondson II)と腺管構造を有する胆管類似の悪性細胞が,種々の割合で混在しており混合型肝癌と診断された.
  • 加納 寿之, 川崎 勝弘, 西 敏夫, 中野 芳明, 金 柄老, 相沢 青志, 森 武貞
    1996 年 57 巻 10 号 p. 2522-2526
    発行日: 1996/10/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は65歳の男性で,下腹部鈍痛を主訴に受診され,血液検査にて肝機能異常が認められたため精査目的にて入院となった.入院後の画像検査にて肝細胞癌および右副腎転移と診断され,平成6年2月胆嚢摘出術,肝後区域切除および右副腎摘出術を施行した.術後16カ月経過した現在,肺および残肝再発をみるが,生存中である.
    肝細胞癌の副腎転移症例は剖検例では8.8%と報告されているが,実際の臨床の場において外科的治療の対象になることはまれである.今回,われわれは文献的に検索しえた副腎摘出症例に自験例を加えた11例に対し検討を行った.このうち同時性副腎転移は4例,異時性は7例であった.副腎摘出後は,両側摘出した1例を除いて重篤な合併症もなく経過している.以上より片側の副腎転移症例に対して,外科的切除術は予後向上のための一つの手段となり得るとおもわれた.
  • 櫛田 俊明, 滝 真二, 喜多 良孝, 安藤 道夫, 佐木川 光
    1996 年 57 巻 10 号 p. 2527-2531
    発行日: 1996/10/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    胆嚢炎,胆嚢結石症,急性膵炎の症例で,術後の病理組織検査にて胆嚢管に異所性膵組織を認めた稀な1症例経験したので文献的考察を加え報告した.
    症例は52歳,女性,上腹部痛にて来院.生化学検査では肝機能上昇および尿,血中アミラーゼの著明な上昇があった.腹部超音波およびCT検査では胆嚢結石と胆嚢壁の肥厚を認めたが,膵には画像上著変を認めなかった.
    胆嚢炎,胆嚢結石症,急性膵炎と診断し症状が軽快後手術を施行した.摘出した胆嚢は壁の肥厚があり,内部には小さい黒色石を多数認めた.またcholesterol polypも2個認めた.摘出標本の病理組織検査にて胆嚢管に粘膜固有層から筋層にかけ約1mm大の腺房および導管からなるHeinrich II型の異所性膵組織を認めた.
  • 和田 英俊, 木村 泰三, 吉田 雅行, 小林 利彦, 桜町 俊二, 原田 幸雄
    1996 年 57 巻 10 号 p. 2532-2537
    発行日: 1996/10/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    腹腔鏡下胆嚢摘出術の術中に落下した胆石が原因の腹腔内膿瘍を経験したので報告する.
    症例は, 59歳,男性.胆石,急性胆嚢炎,総胆管結石にて腹腔鏡下胆嚢摘出術,および総胆管切石術を施行した.術中,胆嚢壁の損傷をおこし胆汁と胆石が腹腔内に流出したが,経過良好にて退院した.
    術後5カ月目に右側腹部痛,体重減少,微熱を主訴に入院した.肝右葉背側に腹腔内膿瘍と膿瘍内に2個の結石を認めたが,経皮的膿瘍穿刺により症状は軽快した.
    しかし,術後10カ月目に腹腔内膿瘍を再発した.一度は経皮的膿瘍ドレナージにより軽快したが,再発したため全麻下に膿瘍ドレナージと結石摘出術を施行した.経過は良好で現在までのところ再発の所見はない.
    腹腔鏡下胆嚢摘出術において落下結石の予防は重要である.しかし,落下結石のために再手術を必要とする症例は稀なので結石の回収のために開腹移行する必要はないと考える.
  • 中崎 隆行, 飛永 晃二, 武冨 勝郎, 君野 孝二, 仲宗根 朝紀, 岸川 正大
    1996 年 57 巻 10 号 p. 2538-2541
    発行日: 1996/10/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    稀とされている胆管扁平上皮癌の1例を経験したので文献的考察を加え報告する.
    症例は75歳男性で黄疸を主訴として来院した.腹部CT検査では下部胆管の腫瘍と胆嚢,胆管の拡張を認め, PTGBDを施行した.胆管造影では総胆管下部に全周性の狭窄がみられた.胆汁細胞診ではclass IVであった.手術は膵頭十二指腸切除術を施行した.摘出標本は結節型の腫瘍で,組織型は扁平上皮癌であり,転移リンパ節も扁平上皮癌であった.
  • 長田 真二, 野々村 修, 竹内 賢, 佐藤 元一, 加藤 禎洋, 佐藤 好永
    1996 年 57 巻 10 号 p. 2542-2545
    発行日: 1996/10/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    患者は51歳の男性で, 21年前に虫垂切除後の腸閉塞により開腹手術を施行されている.手術瘢痕部の腹壁膿瘍にて近医受診し,切開排膿されるも治癒しないため,当院紹介となった.保存的治療を行うも軽快・再発を繰り返すため,同部の生検を行ったところ,浸潤性に増殖する線維性組織が認められ,デスモイド腫瘍が疑われた.また,腹部CT検査で,均一なdensityの腫瘍が腹腔内に手指状に延びていることが判明した.全身麻酔下に手術を施行したところ,腫瘍の膀胱への浸潤を認めたが,膀胱壁の一部切除により,腫瘍全摘術を行い得た.切除標本では,径5×8cmで白色調を呈した弾性硬の充実性腫瘍であり,組織学的に膠原線維の間質を伴った線維芽細胞の索状増殖を示すデスモイド腫瘍であった.本症は妊娠可能な女性に多いとされており,デスモイド腫瘍の発生機序を検討する上で,非常に興味ある症例と考えられた.
  • 岩崎 誠, 酒井 秀精
    1996 年 57 巻 10 号 p. 2546-2549
    発行日: 1996/10/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    最近5年6カ月間に経験した閉鎖孔ヘルニアの4例を紹介すると共に, 1990年以降の本邦報告73例と自験例4例の77例を集計し,最近の診断および治療成績と問題点について報告する.
    自験例は全例入院2日以内に術前診断され,診断根拠は1例は過去の経験から本症を疑い,残り3例はHowship-Romberg徴候が陽性でうち2例は骨盤部CTで確定診断した.手術は全例腸管切除を要せず嵌頓腸管の整復と閉鎖孔の縫合閉鎖を行い,術後経過も良好であった.
    今回の集計では術前診断率がCTやUSにより72.3%と向上していたが,腸管切除率は未だに55.8%と高率で,特に術中診断例は腸管切除率が85.7%と高く,重篤な術後合併症発生例や手術死亡例は全て術中診断例であった.
    一方,術前診断例の腸管切除率も44.6%で,腸管切除不要例は殆どが入院2日以内に手術されていた.以上より,近年本症の術前診断率は向上したが,腸管切除を避けるには入院2日以内の早期診断・早期手術が大切と思われた.
  • 小林 千恵, 石崎 政利, 秋山 典夫
    1996 年 57 巻 10 号 p. 2550-2553
    発行日: 1996/10/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は肝硬変治療中の43歳男性.起立時に生ずる右鼠径部の小児手拳大の腫瘤のため日常生活を障害されることを主訴に来院した.
    ヘルニアの診断で手術したところ著明に拡張した異所性静脈瘤が内鼠径輪から滑脱しているものであった.さらに, 3カ月後に肝不全で死亡したため施行した剖検所見で,下大静脈奇形が認められ,これら二つの病態により門脈系と下大静脈との間に,門脈→上腸間膜静脈→後腹膜の血行路→遺残右下大静脈→下大静脈というルートが生じたために発症したきわめて稀な症例であると考えられた.
  • 室 雅彦, 成末 允勇, 金 仁洙, 大崎 俊英, 宇田 憲司, 白川 靖博
    1996 年 57 巻 10 号 p. 2554-2557
    発行日: 1996/10/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    同時性3重複癌の1例を経験したので報告する.症例は67歳男性.腹部大動脈瘤の治療のため入院した.術前,胃精査にて胃体中部後壁にIIc病変あり,内視鏡下生検にてGroup Vと判明したため, 1994年4月26日,腹部大動脈瘤手術ならびに胃切除術を施行した.退院後,血尿を認め,膀胱鏡にて乳頭状のポリープを認めたため, 7月28日,経尿道的に切除した.病理組織診断は移行上皮癌であった.以後,近医にて経過観察中であったが, 1995年1月17日,血痰を主訴に外来を受診した.内視鏡検査にて右中間気管支幹に腫瘍を認め,生検にて扁平上皮癌の診断を得たので, 2月6日右肺全摘術を施行した.病理組織診断は高分化型扁平上皮癌でStage IIIAであった.第一,第二,第三癌ともに1年以内の同時性で,胃癌,膀胱癌は早期であったが,肺癌は進行癌であった.
  • 山本 達人, 高野 尚史, 安藤 静一郎, 亥埜 恵一, 都志見 久令男
    1996 年 57 巻 10 号 p. 2558-2562
    発行日: 1996/10/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    大腸癌の術前検査で両側腎癌を発見し,切除術を施行しえた同時性重複癌の1例を報告する.症例は, 73歳男性.便潜血反応陽性のため注腸透視,大腸内視鏡を施行し盲腸癌と診断,さらに術前CTで両側腎臓に腫瘤を発見し,血管造影にて両側腎癌と診断した.他臓器に転移のないことを確認後,まず右半結腸切除,右腎部分切除術を施行した.初回手術より, 4週間後,左腎摘出術を施行した.術後,腎不全は回避できた.大腸癌は,高分化腺癌,深達度m,リンパ節転移は認めなかった.右腎癌は, alveolar type, common type, clear cell subtypeの腎細胞癌,左腎癌は, papillary type, common type, clear cell subtypeの腎細胞癌であった.リンパ節転移は認めなかった.術後経過良好で,現在再発なく経過観察中である.
  • 近藤 伸彦, 吉住 豊, 森崎 善久, 熊木 史幸, 神吉 和重, 高木 啓吾, 杉浦 芳章, 田中 勧, 相田 真介, 玉井 誠一
    1996 年 57 巻 10 号 p. 2563-2567
    発行日: 1996/10/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    6年間に中咽頭,口腔,肺,食道の四重複癌が発見され,各々の癌に対して切除しえた症例を経験したので報告する.
    症例は, 63歳,男性. 57歳時に中咽頭癌, 61歳時に口腔癌で手術を受けた.術後経過観察中に胸部単純写真で左上肺野に異常影を指摘された.左上葉切除を施行され,病理学的に原発性肺癌と診断された.入院時に施行された食道内視鏡検査で食道癌が発見され,内視鏡的食道粘膜切除を施行された.食道癌治療後10カ月を経過したが,再発の兆候なく健在である.四重複癌の本邦報告例33例を集計し報告した.
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