Henri Moissanが元素状フッ素を単離してから昨年で丁度100周年を迎えたが, その間に膨大な種類の新しいフッ素化合物が我々の知見の中に入ってきた。これらのフッ素化合物が示す様々な特異性が注目され, 例えば, ペルフルオロ化合物のガス溶解性, 表面活性能, 脂溶性, 揮発性, 低屈折率などの物理的性質を始めとして, 耐光性, 耐熱性および耐薬品性などの化学的性質, フッ素官能基による薬理効果および麻酔効果の修飾などの生理作用等, フッ素化合物の特性の機能的応用が先端的な科学技術の広範な分野で展開されている。分析化学の分野においてもフッ素官能基の特性を分析試薬の分子設計や分析技術の構成の中に組み込み, 分離能の向上, 分析感度の増大, あるいは分析操作の迅速化, 簡易化を図る様々な試みがなされている。本稿ではフッ素化合物の特性を炭化水素系同族体のそれらと比較し, 新規の化学分析法の開発, あるいは分析技術の高性能化等, 分析化学の分野におけるフッ素化合物の特性の機能的応用を概観する。
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