「体育学」は「体育」という諸事象を支えるところの科学として, 長い歴史的流れの中で今日, 研究の累積とその人間への還元による, 正当な評価を得はじめた. 本小論は日本体育学会の設立の頃, 戦後的混迷の中で「体育学」研究へ志向した, また, 今日在る「体育学」とともに4分の1世紀を歩んで来た者の1人として, 今若い新鋭研究志向者に送る, 「体育学」の内容充実のための研鑚要請試論である. 本試論は, 「体育の源泉科学としての体育学」(Gymnastics as the Source Science for the Physical Education), および「身体運動を媒介とする人の積極的健康の保持, 増強のための作用が体育であり, それが人の身心に及ぼす効果に関する科学が体育学である」という底流する概念に基づいている. 特にこの小論は, 若い研究志向者, また, それを教授する専門教育機関の責任ある先進たちが, 相互にそのエネルギーを, 人間の周辺に遍在する体育学的諸問題を細大もらさず, 分担し, プログラム化し, 速やかに体育学の内容の質, 量にわたる向上と増強をはかるよう提言したものである. 他の諸学術領域研究者と同等に, むしろ卓越観を「体育学」に関する限り保持しながら, 自らが, またそのよき典型的実践者として, フェアに, 紳士性を持って研究を志向し, 努力するよう要望した小論でもある.
抄録全体を表示