鶏のパンティング時の呼吸数およびその平均経過の変化も調べる目的で, 白色レグホーン種産卵鶏23羽 (18ケ月齢, 平均体重1.65kg) を用いて実験を行った。環境調節実験室において, 室温25°C, 相対湿度70%の条件下に無麻酔の鶏を保定し, 体温が安定した後に, 環境条件を38°C-50%まで徐々に, かつ直線的に変化させ(移行時間45分), 引続き60~90分間, この条件下での温熱感作を続けた。総排泄腔内にそう入したバルーンの内圧の変化から呼吸運動を, またサーミスター温度計により総排泄腔温 (体温) をそれぞれ連続的に測定, 記録した。呼吸運動の記録から全試験期間中の20秒間毎の呼吸数を求め, 得られた時系列を呼吸数の原系列とした。さらに, 原系列に7点移動平均を2回繰返して得られた系列を呼吸数の平均経過として, 考察を加えた。なお, 試験期間中の飲水, 採食は行っていない。
(1) 呼吸数の原系列から, パンティング時の呼吸数の変動は極めて大きいことが分り, ある時点での呼吸数を示すためには, 少なくも1分間以上の測定が必要と考えられる。
(2) パンティング発生時における呼吸数と体温の変化の時間関係は体温の上昇が呼吸数の増加に先行することが認められた。また, パンティング消失過程においても, 同様の現象が認められた。
(3) 供試した23羽の鶏のうち, 13羽において, 呼吸数の平均経過は, パンティングが発生し, 最大の呼吸数に達するまでの過程で3~4の階段的な変化を辿って上昇する, すなわち階段的上昇型といえる傾向を示した。多くの例で, 体温の上昇にも同様の傾向が観察され, この場合, 体温は呼吸数の上昇と同時に, あるいはそれに先んじて上昇することが認められた (Fig. 1, 2)。
3羽については, その呼吸数の平均経過は徐々に上昇する漸増型の傾向を示し (Fig. 3), これに反して, 他の3羽では急速に増加する急増型の傾向がみられた (Fig. 4)。しかし, 2羽についてはその変化は不規則で, 上記の3つのタイプの中に区分けできず, また残りの2羽ではパンティングの発生がみられなかった。
(4) パンティングの発生時にみられる間けつ的パンティング期の呼吸数は原系列ならびに平均経過のいずれからみても, その増加は比較的小さく, 体温調節の上で果す意義については更に検討が必要であろう。
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