日本家禽学会誌
Print ISSN : 0029-0254
37 巻, 5 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 笹浪 知宏, 潘 建治, 藤川 義規, 森 誠
    2000 年37 巻5 号 p. 271-279
    発行日: 2000/09/25
    公開日: 2008/11/12
    ジャーナル フリー
    これまでの研究から,ウズラ顆粒膜細胞のZPCタンパクの生合成はFSHの刺激によって促進されることが明らかになった。そこでZPCタンパク生合成におけるプロテインキナーゼの役割を調べるために,ウズラ顆粒膜細胞をFSH,ジブチリルサイクリックAMP,プロテインキナーゼCの活性化剤,フォスフォジエステラーゼの阻害剤を含む培養液で培養した。培養終了後のZPCタンパクの合成能を測定するために,3H-ロイシンと6時間培養し,タンパクを抗ZPCタンパク抗体で免疫沈降し,3Hの取り込み量を測定した。その結果,顆粒膜細胞をFSHやジブチリルサイクリックAMPの存在下で培養するとZPCタンパクの合成能が上昇した。しかしプロテインキナーゼCの活性化剤を添加して培養しても,ZPCタンパクの合成能は上昇しなかった。またFSHによる顆粒膜細胞のZPCタンパクの合成促進効果はフォスフォジエステラーゼ阻害剤の添加によって増強された。このように,ウズラ顆粒膜細胞のZPCタンパク生合成はFSHにより促進され,この過程は細胞内でアデニル酸シクラーゼとサイクリックAMPを介した情報伝達系が関与していることが示唆された。
  • バルア アニメシュ, 古澤 修一, 吉村 幸則
    2000 年37 巻5 号 p. 280-288
    発行日: 2000/09/25
    公開日: 2008/11/12
    ジャーナル フリー
    産卵鶏において母体の免疫グロブリンG (IgG)は卵黄に取込まれてIgYと呼ばれ,移行免疫の役割を果たす。本実験は,卵黄IgY濃度に及ぼす加齢とエストロゲン投与の影響を明らかにすることを目的とした。供試鶏には約170, 250および575日齢の産卵鶏を用いた。また,一部の供試鶏(575日齢)には1mgのスチルベストロール(エストロゲン物質)またはゴマ油(対照区)を7日間筋注投与した。これらのニワトリが産卵した卵の卵黄IgY濃度と血漿IgG濃度をELISA法で測定した。IgY濃度は170日齢区で250および575日齢より高く(P<0.01),一方,血漿IgG濃度は逆に575日齢区が他の区より高かった。スチルベストロール投与すると卵黄IgYと血漿IgGの濃度はともに増加し(P<0.01),対照区では投与前後でこれらの濃度の差は認められなかった。これらの結果から,卵黄IgY濃度は,血漿IgG濃度とは異なって,加齢に伴って減少すること,またエストロゲンはこの濃度の変化に関与する1つの要因であることが示唆された。
  • 山本 朱美, 小出 和之, 太田 能之, 渡邊 令子, 藤村 忍, 門脇 基二, 石橋 晃
    2000 年37 巻5 号 p. 289-296
    発行日: 2000/09/25
    公開日: 2008/11/12
    ジャーナル フリー
    血漿遊離アミノ酸濃度は様々な要因の影響を受けるため,アミノ酸要求量を推定する有用な指標として用いるためには,血漿遊離アミノ酸濃度に影響する要因を明らかにする必要がある。本試験では,産卵鶏の主たる8組織の遊離アミノ酸および蛋白態のアミノ酸濃度を調べた。40週齢の産卵鶏にCP 16.6%, ME 2.90kcal ME/kgの試験飼料を給与した。当日産卵し,次日も産卵が期待される10羽に,放卵5時間後にネンブタールを投与した。羽毛除去後,血漿,肝臓,小腸,卵管,深胸筋,そして前脛骨筋と皮膚および残りの部位の8組織の遊離アミノ酸と,組織を加水分解して蛋白態アミノ酸濃度を測定した。各組織における遊離のアミノ酸および蛋白態アミノ酸濃度は組織間で異なっていたが,そのアミノ酸パターンは類似していた。蛋白態アミノ酸に対する遊離アミノ酸濃度の割合は組織により差が認められたが,わずかな例外を除いて組織間で類似していた。
  • 白色レグホーン種のニワトリとの比較
    小川 博, 内橋 宏子, 桑山 岳人, 田中 克英, 高橋 哲也, 安岡 忠, 川島 光夫
    2000 年37 巻5 号 p. 297-305
    発行日: 2000/09/25
    公開日: 2008/11/12
    ジャーナル フリー
    産卵期のホロホロチョウと白色レグホーン種のニワトリについて,卵白分泌時と非分泌時の卵管膨大部組織のサイトゾール画分及び核画分におけるエストロジェンレセプターの平衡解離定数(Kd)と最大結合容量(Bmax)を[3H]-estradiol-17βを使用した結合アッセイによって求めた。
    Kd値はサイトゾール画分及び核画分のいずれにおいても卵白分泌時と非分泌時との間及びホロホロチョウとニワトリとの間に差違は認められなかった。Bmaxは,ニワトリのサイトゾール画分及び核画分,ホロホロチョウの核画分においては卵白分泌時の方が非分泌時よりも大であった。また,ホロホロチョウの方がニワトリよりも小さかった。それ故,ホロホロチョウの卵の卵白量が少ないことは,卵管膨大部のエストロジェンレセプターの結合容量が少ないことに起因するのであろうと思われる。
  • 田邉 裕司, 園田 豊, 甲斐 藏, 今井 清
    2000 年37 巻5 号 p. 306-309
    発行日: 2000/09/25
    公開日: 2008/11/12
    ジャーナル フリー
    卵胞採取日の9:00~10:50 (6:00点灯)に連産内の卵(Cs)の放卵が行われたニワトリを用い,放卵後2, 8および14時間で湿重量順に5~6個の小卵胞および黄色成長卵胞を採取した。採取した卵胞から凍結切片を作成し,ベーカーの酸性ヘマティンテストを行い卵黄球を観察した。急速成長相にある黄色成長卵胞では卵黄全体に黄色卵黄球の存在が確認されたのに対し,小卵胞では白色卵黄球が層状に存在するのみであった。しかし,卵胞転移が高頻度で起こる時間帯(Cs放卵後8~12時間)直後に当たる放卵後14時間では,卵黄膜直下に黄色卵黄球層の形成が認められる小卵胞が5羽全例の卵巣に1個ずつ認められた。したがって,小卵胞の卵黄球を観察することは卵胞転移の判定に有用であると結論した。
  • 立川 昌子, 石川 寿美代, 梅田 勲, 山田 義武
    2000 年37 巻5 号 p. 310-316
    発行日: 2000/09/25
    公開日: 2008/11/12
    ジャーナル フリー
    鶏卵の選別•包装施設(Grading and Packaging Center:以下,GPセンターと略)と不特定な複数の養鶏場との間で鶏卵輸送に使用されているプラスチック製のトレイ(1枚に卵30個を収納:以下,トレイと略)の一般生菌と大腸菌群の汚染を調べ,トレイを消毒液及び酒精酢に浸漬して汚染の除去を試みた。
    トレイの肉眼観察で汚れの程度が低いもの,塵埃などが付着した中等度のもの,卵内容物や鶏の排泄物などが付着し固化した高度のものに分けられた。汚れの低いトレイは使用の都度,GPセンターにおいて水洗消毒されたトレイであったが,その数は少なかった。汚れが低度のトレイ1枚の表裏各面を汚染した一般生菌数は104.3と104.0,大腸菌群数は103.9と103.7で,汚染が高度のトレイでは順に107.7と107.6, 105.8と105.8で,トレイ裏面の菌数は表面に比べて少なかったが,有意差は認められなかった。肉眼的な汚れの程度について一般生菌数および大腸菌群数で,高度のものは低度のトレイに比べ,有意(P<0.01)に多かった。なお,汚れの高度な1枚のトレイの表裏両面からSalmonella Infantisが分離された。複合塩素剤と逆性石鹸をそれぞれ1:500に希釈し,汚れの高度なトレイを5分間浸漬して汚染細菌を除去した。両消毒液の効果に差は認められず,菌の減少率(浸漬後の菌数/浸漬前の菌数)は一般生菌が1/101.0-1/101.7,大腸菌群が1/101.3-1/102.0で,浸漬後も104.7-106.1の一般生菌,102.1-103.4の大腸菌群が検出された。
    トレイは鶏卵と直接接触するので消毒液が鶏卵に付着することが考えられる。鶏卵の食品としての安全性に配慮して酒精酢で汚染細菌の除去を試みた。酒精酢に含まれる有機酸は10-12%で,そのほぼ全量が酢酸である.酢酸濃度を0.08, 0.12および0.16%に調整した液に,前記した汚染の高いトレイを5分,30分,3時間および18時間浸漬した。浸漬後に検出された細菌数,浸漬による細菌数の減少率には酢酸濃度と浸漬時間の影響はともに認められなかった。浸漬後に1枚のトレイから103.8-106.5の一般生菌,101.6-104.6の大腸菌群が検出され,浸漬による細菌の減少率は一般生菌が1/101.2-1/102.7,大腸菌群が1/100.5-1/103.1の範囲にあった。
    なお,酒精酢の酢酸濃度を変えて汚染細菌の除去を試みた際,浸漬前の2枚のトレイからSalmonella Braenderupが分離されたが,酢酸濃度0.08%液に浸漬後は検出されなかった。また,浸漬時間を変えた実験では浸漬前の2枚のトレイからSalmonella Infantisが分離されたが,5分および30分浸漬後には検出されなかったことから,酒精酢浸漬は食中毒の防止対策となり得ることが示唆された。
  • 立川 昌子, 石川 寿美代, 梅田 勲, 山田 義武
    2000 年37 巻5 号 p. 317-320
    発行日: 2000/09/25
    公開日: 2008/11/12
    ジャーナル フリー
    鶏卵の選別•包装施設(Grading and Packaging Center:以下,GPセンターと略)と不特定な複数の養鶏場との間で鶏卵輸送に使用されているプラスチック製のトレイ(1枚に卵30個を収納:以下,トレイと略)のうち,鶏の排泄物や卵内容物が固着し,肉眼的に汚染程度が高いトレイを供試した。65, 70, 75および80°Cに保った20lの水道水にトレイを5, 10および15分間浸漬して,浸漬の前後に一般生菌数と大腸菌群数を測定し,汚染細菌数の減少を調べた。
    トレイ1枚当たりの平均汚染細菌数は一般生菌が106.2-107.1,大腸菌群が103.8-105.2の範囲にあり,汚染細菌数は浸漬により有意(P<0.01)に減少した。浸漬温度が高くなるに従い,また浸漬時間が長くなるに従い浸漬後の細菌数は低下する傾向を示したが,その差は僅かであった。80°Cに保った水道水に5分間浸漬すると,熱によりトレイが変形し使用不能の状態になるものが多く,75°Cの水道水に10-15分間の浸漬でも少数であるが変形したトレイがあった。
    65°Cに保った水道水に5分間浸漬するとトレイ1枚当たりの一般生菌が104.7,大腸菌群が102.6に減少した。温度を75°Cまで上昇し,浸漬時間を15分間に延長しても菌数の減少には差がなかったことから,実験した浸漬条件の範囲内では65°Cに保った水道水に5分間浸漬し,汚染細菌を除去することが実用的であると考えられる。
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