Sulfachloropyrazine (SCP) ま家禽用抗コクシジウム剤として1967年に開発され, 数多くの報告はあるが, 日本においてはまだない。サルファ剤の抗コクシジウム作用機作に関する報告もありPABAの拮抗作用によって第2シゾゴニーの時期に有効であるとされている。サルファ剤は葉酸拮抗物質と併用した場合に相乗作用を示すことが知られている。今回のSCP研究はの抗コクシジウム作用機作の究明のために行なった。
攻撃コクシジウムは
E. acervulina および
E. tenellaを用いていずれも胞子形成オーシストを〓のう内に接種し感染させた。鶏は白色レグホン種雄ヒナを用い, すべて14日令で供試した。体重をもとにして区分けした。エサ, 水は自由摂取させた。供試薬は Sulfadimethoxine-Na塩 (SDM). Pyrimethamine (PRM) および Diaveridine (DIA) を対照薬とした。エサは抗コ剤を含まない市販飼料を用いた。抗コクシジウム効果の判定は常法どおり, 腸管病変値, 相対増体率 (無感染区を100%とする), 相対オーシスト増殖率 (感染対照区のOPGを100%とする) および死亡率によって表わした。
実験は7つに分けて行なった。その結果はつぎのごとくである。
実験1.
Etenella に対するSCP, SDM, DIAおよびPRMの効果: 各抗コ剤の有効濃度はSCP 250~375ppm, SDM 375~500ppm DIA 125~250ppmおよびPRM 80ppmであった。
実験2.
E. acervulina に対するSCP, SDM, DIAおよびPRMの効果: 各抗コ剤の有効濃度はSCP 125ppm, SDM 125~250ppm, DIA 500ppmおよびPRM250~375ppmであった。
実験3.
E. tenella の各発育期に対するSCPの抗コクシジウム効果: SCPの抗コ効果は感染後0~4日またはそれ以上の投薬日数の場合にオーシストの排泄を完全に抑えた。感染後3~5日に投薬した時に最も著効を示した。感染後0~1日の投薬は虫体の発育に影響を与えなかった。
実験4.
E. tenella 感染に対するSCPおよびSDMの治療効果 (Delayed treatment): 投薬濃度は投薬期間と濃度によって1000ppm水準になるようにした。SCPの効果は感染後4日より500ppm 2日間, または1000ppm 1日間投与した場合に良好な成績が得られた。
実験5.
E. tenella 感染鶏に対する投与経路のちがいによるSCPおよびSDMの効果: 感染後2日~5日まで投薬した。経口 (po) および皮下注射 (sc) の二つの経路で三水準の濃度で行なった。SCPの効果はpo, scの経路によって効果に差がなかった。SDMはpoよりscの方がすぐれた。
実験6.
E. tenella 感染におけるSCPの効果に対するPABAおよび葉酸の拮抗作用: 飼料中500ppmのSCPの抗コ活性は50ppm PABAまたは125ppmの葉酸によって拮抗された。葉酸はSCPの効果に拮抗性を示すがPABAより弱かった。50ppm PABAの投薬濃度はSCPの飼料中濃度を650ppmに増加した時に拮抗性は見られなくなった。
実験7.
E. tenella に対するSCPまたはSDMおよび, DIAまたはPRMの相乗作用: PRMとSCPの併用では, PRMは
E. tenella に対するSCPの Potentiator としてDIAより活性が高かった。SCP 100とPRM 10ppmの併用またはSDM 100ppmとDIA30ppmの併用効果は
E. tenella 感染の予防のためのSCP 300ppmの抗コ効果よりもすぐれた。
SCPの抗コ効果はSDMよりもすぐれることが明らかとなった。
E. acervulina にはサルファ剤が
E. tenellaには2,4-diaminopyrimidine 系化合物が有効であることが明らかとなった。SCPはPABAによって抗コ効果が低下した。このPABAの濃度は実用量に比べて極めて高く, SCPの実用上, 一般の飼料中のPABAの量は高くないので問題はないと言えよう。
SCPと2,4-diaminopyrimidines との併用は相乗作用を示した。SCPは第2シゾゴニーに有効であることが明らかになったがSP. ST. SDD. SDZ. SMなども同様な成績が報告されている。
SCPの投与経路のちがいによって抗コクシジウム効果に差がないことは興味深い。SCPの盲腸組織への到達経路は今後検討する予定である。
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