若雄鶏を1, 3, 5日間飢餓にして体重の変化を測定し, と殺して脳下垂体の重量および脳下垂体の成長ホルモン (GH) 含量とプロラクチン (PRL) 含量をディスク電気泳動-デンシトメトリー法で測定した。同時に採取した血液からま血清を分離し, その血糖, 遊離脂肪酸(FFA), GH, ソマトメジン (SM) 濃度を測定した。血糖はオルトトルイジン法, FFAはITAYA, UIの方法9), GHはラットGHを標準としたラジオイムノアッセィー, SMは DAUGHADAY らの方法10)で測定した。同様な実験で若雄鶏または産卵鶏の脳下垂体を
in vitro で標識アミノ酸と培養し, GH, PRLおよび脳下垂体の全タンパク質の合成, 分泌速度を前報の方法12)で測定した。
体重は若雄鶏では飢餓によって減少し, 3, 5日飢餓では有意な減少がみられた。脳下垂体のGH含量は3~5日間の飢餓で有意な増加を示したが, PRL含量はほとんど変化しなかった。血清中の血糖は減少傾向を示したが, 有意な減少はみられなかった。FFAは飢餓1日で有意に増加し, 3, 5日では有意に減少した。血中のGH濃度は飢餓1日で有意に増加したが, 3, 5日では飼料を自由摂取している対照区の鶏のそれと同一水準に戻った。血清中のSM活性は飢餓1日で対照区の10%程度に低下し, 3, 5日飢餓でも回復はみられず低水準のまま推移した (表1)。
若雄鶏の脳下垂体での
in vitro のGH合成速度は飢餓によって有意に増加し, 分泌速度も増加した。PRLの合成, 分泌速度はいずれも飢餓によって有意な変化を受けなかった。脳下垂体の全タンパク合成速度はいくぶん増加したが, 分泌速度に変化はみられなかった (表2)。しかし, 産卵鶏では飢餓1~5日では体重減少もみられず, GH, PRLの合成速度は有意に減少した (表3)。
これらの結果から鶏でも飢餓時にはFFAがGHの作用の下に動員され, エネルギー源として機能している可能性が高いこと, 血中のFFAやSM濃度がフィードバックして脳下垂体のGH合成, 分泌機能を修飾していること, 飢餓に対する反応は鶏の栄養状態で変化することなどについて論じた。
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