8世代(F
0~F
7)にわたる卵黄•卵白比の高低二方向への選抜実験過程における受精率および孵化率の変化を考察した。また, 卵形質との関係について検討した。データは4組の高低系統において, 各世代で次世代を得るために選抜した鶏から得られた。分析は4組の高低系統を卵黄•卵白比の高系統と低系統の2群にデータをプールして行った。さらに, 卵形質との関係を検討するには, 世代を選抜前期世代 (F
0~F
3) と後期世代 (F
4~F
7) に分割して行った。
1. 受精率の平均値は両系統とも約75%から85%の範囲内で推移したが, 低系統のF
2世代に有意な低下があった。これらの変動は交配時における雄鶏の繁殖能力の影響が主な要因であると推察された。
2. 孵化率の平均値の推移には高系統で85%から78%へのわずかな減少があったのに対し, 低系統でF
2世代 (91.4%) 以降に有意な減少が認められた。この低系統での顕著な減少は, 卵形質, 特に, 卵重の増大による孵化の遅れが一つの要因であると推察された。
3. 孵化率と卵重, 卵白重および卵黄•卵白比との間では高低両系統で, それぞれ, 正および負の相関が推定され, 二次的な関係にあることを示唆した。その傾向は世代の進行とともにより明らかであった。
4. 孵化率を従属変数とした重回帰分析の結果, 系統および世代で異なった卵形質が説明変数として回帰式に取り入れられた。しかし, 推定された重相関係数は極めて低く, 孵化率に寄与する卵形質が系統および世代で異なることは一般的でないものと推察された。
5. 選抜後期世代において, 両系統をプールして推定した有意な二次回帰式より最良の孵化率を示す卵重は51.8g, 卵白重は31.0g, 卵黄•卵白比は51.6%が推定され, それらより卵黄重が16.0g, 卵殼重が4.8gの卵構成となった。これら値が本選抜実験の基礎集団での平均値に類似するものであったことなどから, 鶏卵の保有する生理的な機能である孵化率には大きな変化がなかったものと推察された。
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