日本家禽学会誌
Print ISSN : 0029-0254
36 巻, 4 号
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  • Vitus D. YUNIANTO, 谷口 子子, 大塚 彰, 林 國興
    1999 年 36 巻 4 号 p. 219-228
    発行日: 1999/07/25
    公開日: 2008/11/12
    ジャーナル フリー
    産卵鶏雄ヒナを用いて環境温度が及ぼす影響を,成長,腹腔内脂肪重量,筋肉タンパク質代謝回転速度,熱発生量,血中T4(サイロキシン),T3(トリヨードサイロニン)ならびにCTC(コルチコステロン)濃度について検討した。環境温度は,16,25および34°Cとし,ヒナには全て強制給餌した。増体量は16°C区に比べて25°C区ならびに34°C区が有意に高く,25°C区で最も高い値を示した。飼料要求率は25°C区で最も低く,16°C区で最も高い値を示した。腹腔内脂肪重量は温度が高くなるにつれて増加した。熱発生量および筋肉タンパク質分解速度は,16°Cで最も高く,25°Cと34°Cとの間に差はなかった。血中T3濃度は,環境温度が上昇するにつれて有意に減少した。しかし,血中T4濃度の変化はT3に比べてわずかであった。血中CTC濃度は25°Cにおいて最も低く,16°Cと34°Cとの間に差はなかった。以上の結果は,CTCならびに甲状腺ホルモンの血中濃度は環境温度の影響を受け,熱発生量ならびにタンパク質代謝の調節に重要な働きを担っていることを示している。
  • 古瀬 充宏, 松本 恵美, ピノントアン レインハード, 斎藤 昇, 菅原 邦生, 長谷 川信
    1999 年 36 巻 4 号 p. 229-235
    発行日: 1999/07/25
    公開日: 2008/11/12
    ジャーナル フリー
    本研究は,脱水下あるいはアンギオテンシンII(AII)投与下のヒナの飲水量を中枢におけるGLP-1が修飾するか否かを明らかにすることを目的として行った。ヒナ(2日齢)には自由摂食条件下で自由飲水または19時間の脱水処理を施し,その後,両飲水処理したヒナの脳室に生理的食塩水またはGLP-1(30ng/10μl)を投与した(実験1)。飲水処理の有無に関わらずGLP-1はヒナの1時間当たりの飲水量を減少させたが,その効果は脱水処理で著しかった。AII(0, 25, 50 and 100ng)をヒナの中枢に投与すると,用量依存的に投与後30分間の飲水量が増加した(実験2)。その後,中枢投与したGLP-1とAIIの交互作用を調査した(実験3)。GLP-1(30ng)とAII(100ng)の同時投与により飲水量は減少した。
    これらの結果から,孵化直後のヒナにおいては中枢におけるGLP-1が飲水量の調節因子の一つである可能性が示唆された。
  • 平児 慎太郎, 杉山 道雄, 荒幡 克己, 小栗 克之, 永木 正和
    1999 年 36 巻 4 号 p. 236-244
    発行日: 1999/07/25
    公開日: 2008/11/12
    ジャーナル フリー
    本研究は,アメリカにおける鶏卵市場を事例とし,卵価形成における加工卵の影響とその役割を究明したものである。
    本研究の背景として,既に杉山(1993)が指摘するように,先進国における鶏卵消費は,従来の殻付卵のみの消費形態から,割卵された鶏卵のウェイトが増大しつつあり,加工卵の割合は35-40%に到達する様相を呈している。特に,この傾向は,アメリカにおいて顕著に認められることから,それを他の諸国と比して先行的な事例と見なしつつ,加工卵のウェイトが大きい市場における卵価形成のメカニズムを解明することとしお。
    本研究の分析方法は,永木による計量経済モデルに依拠しつつ,逐次方程式モデルによって卵価と,それに影響を与える採卵鶏飼養羽数,鶏卵生産量,出回量等との関係を計測した。関数形は両対数関数とし,最小二乗法(ordinary least squares method)を適用した。故に,係数は直ちに弾力性を示す。関数体系は,構造方程式5本(採卵鶏飼養羽数関数,鶏卵生産量関数卸売卵価関数,小売卵価関数,生産者卵価関数),定義式1本(出回量)である。殻付卵の価格,および採卵鶏飼養羽数,鶏卵生産量,出回量,飼料価格,国民一人当たり鶏卵消費量,輸出入量などのデータは,アメリカ合衆国農務省(USDA)"Poultry Yearbook"より1984年1月~1995年12月までの月次データとした。
    分析の結果,殻付卵の卸売卵価の規定関係を示す式では,加工卵の価格の係数が0.434となり,両者の間に強い関係が認められた。本関数の中で最も強く作用する要素であった。また,殻付卵の小売卵価がその卸売卵価に強く影響を受けていることは容易に推測出来たが,国民一人当たり鶏卵消費量の影響はほとんどなく,鶏卵の価格形成がsupply sideで決定されていることを明示する結果となった。以上のことから,殻付卵の卵価形成において加工卵が重要な要素となり得ることが明らかになった。
    市場関係者によれば「加工卵が殻付卵需給の緩衝(buffer)機能を果たしているのではないか」という旨の指摘がなされている。本分析の結果は,明示的にこのことを検証するものではないが,現状を併せ見れば,加工卵が殻付卵の卵価形成に及ぼす影響は今後ますます大きくなるものと考えられる。
  • 岡林 寿人, 田名部 雄一, 山本 義雄, Nguyen Thi MINH, Dang Vu BIN
    1999 年 36 巻 4 号 p. 245-254
    発行日: 1999/07/25
    公開日: 2008/11/12
    ジャーナル フリー
    ベトナムのハノイ市を中心とした北部地域において飼養されている在来アヒルCoとBauについて22種類の血液タンパク質の遺伝的変異を調べた。また,ベトナム在来アヒルをはじめ他のアジア産アヒルにおいても平均ヘテロ接合体率を推定した。ベトナム北部の在来アヒルにおいて多型を示したのは22タンパク質のうち9種類(座位)であった。マガモのみに多型の見出されているEs-D2を含めた10座位における遺伝子の頻度を基に調査した集団の間でNeiの遺伝的距離を求め,それに基づいて枝分かれ図を描いた。また,遺伝子頻度の分散共分散行列に基づく行列から主成分分析を行い,その第一∼三成分を基にして三次元の散布図を描いた。ベトナム北部におけるCoとBauの遺伝子構成は全体的によく似通っていた。また,北部のCoと南部のCoとはその遺伝子構成がやや異なっていた。枝分かれ図ならびに散布図から,北部のCoとBauとは互いに比較的近い位置にあり,またベトナム南部のCoとはすこし離れていたが,これらの3集団はともに東北アジア産アヒルともインドネシア産アヒルとも少し離れたところに位置することが分かった。ベトナム北部のCoとBauのHはそれぞれ0.105および0.113であった。
  • 豊田 太, 森田 哲夫, 宮崎 昭, 光家 保
    1999 年 36 巻 4 号 p. 255-259
    発行日: 1999/07/25
    公開日: 2008/11/12
    ジャーナル フリー
    ニワトリヒナ心電図を鎖骨と胸骨稜に固定した銀電極から双極誘導で記録した。同時に筋胃の尾背側肥大筋相から筋電図を記録した。心電図R波の最大値をプロットする事で単離した心電図ベースライン変動は,筋胃筋電図活動に同期して変化し,その周波数は毎分2.22から4.32回であった。以上の結果から,ニワトリヒナ心電図ベースラインの変動は消化管活動に起因することが示唆された。また筋胃筋電図活動に同期してRR間隔の延長が観察されたことから,ニワトリヒナにおいては心機能と消化管機能が同一の神経メカニズムにより調節されている可能性が示唆された。
  • 豊田 太, 森田 哲夫, 宮崎 昭, 光家 保
    1999 年 36 巻 4 号 p. 260-268
    発行日: 1999/07/25
    公開日: 2008/11/12
    ジャーナル フリー
    ニワトリヒナ心電図を鎖骨と胸骨稜に固定した銀電極から双極誘導で記録した。心電図記録の背景雑音は拍動毎の心電気現象による波形を加算し軽減させた。RR間隔が延長したときにはPQ間隔の延長が観察されたが,QT間隔は変化しなかった。RR間隔,PQ間隔およびPQ間隔の変動は,腹腔内にアトロピン(5mg/kg)を注入すると消失した。アトロピン投与により,通常の陽性T波は陰性T波に変化した。以上の結果から,ニワトリヒナではペースメーカー細胞のみならず心室筋の電気現象も副交感神経の調節下にあることが示唆された。
  • 雀 寅鶴, 孫 章豪, 南 基〓
    1999 年 36 巻 4 号 p. 269-274
    発行日: 1999/07/25
    公開日: 2008/11/12
    ジャーナル フリー
    The dietry fiber (DF) content of grains which contain much higher levels of water-soluble non-starch polysaccharide (NSP) was determined. The five most common feedstuffs from monocotyledonus plant materials (corn, barley, wheat, oats and sorghum) used for chickens were ground through a 0.5mm sieve to determine the moisture content. The prepared samples were analyzed for crude protein (CP), ether extract (EE), crude fiber (CF), crude ash (CA), starch, total sugar, neutral detergent fiber (NDF) and water insoluble cell wall (WICW). The contents of dietary fiber (DF) in these five feedstuffs were calculated on the basis of the above analytical results, with the equation as follows.
    DF(%)=100-(CP+EE+Starch+Total Sugar+CA)
    The contents of NDF and WICW are very similar in all five feedstuffs, also showing the similar values of DF except for barley and oats. Barley and oats which may have much higher levels of water-soluble non-starch polysaccharide (NSP) would be limited in the choice of chemical analysis for obtaining DF content.
  • 石川 寿美代, 村上 斉, 山崎 信, 武政 正明
    1999 年 36 巻 4 号 p. 275-283
    発行日: 1999/07/25
    公開日: 2008/11/12
    ジャーナル フリー
    近年,β-カロチンのもつ抗がん効果や免疫増強作用等の機能が注目されている。そこで,これを含むにんじん茎葉の給与が卵黄中のβ-カロチン含量および卵質に及ぼす影響を究明した。
    にんじん茎葉15%添加飼料,β-カロチン製剤0.01%添加飼料および対照飼料の3種類の試験飼料を産卵鶏に6週間給与した。にんじん茎葉由来と製剤由来のβ-カロチン量は同じ(12mg/kg)であった。対照飼料は0.4mg/kgのβ-カロチンを含んでいた。すべての飼料は代謝エネルギー(ME)と粗蛋白質(CP)が同一となるよう設計した。用いたにんじん茎葉のME,CPおよびβ-カロチン含量は,それぞれ1,138kcal/kg, 4.9%および80.0mg/kg(いずれも風乾物当たり)であった。
    卵黄中β-カロチン含量は,にんじん茎葉飼料の給与によって直線的に増加し10日目以降でほば一定となった。試験開始10日目以降の卵黄100g当たり平均β-カロチン含量は,にんじん茎葉飼料で77.8μg,製剤飼料で19.1μg,対照飼料が4.0μgで,いずれの飼料間にも有意差がみられた(p<0.05)。摂取β-カロチン量に対する卵黄β-カロチン量の比率として求めたβ-カロチンの卵黄への蓄積効率は,にんじん茎葉飼料が製剤飼料に比べて約5倍高かった(P<0.05)。
    にんじん茎葉飼料を給与した鶏の卵黄色(ロシュカラーファンスコア)は製剤および対照飼料を給与した鶏に比べて有意に高く(p<0.05),卵重は有意に低かった(p<0.05)。産卵成績および飼料摂取量は,試験区間に差異はみられなかった。
    これらの結果は,産卵鶏用飼料ににんじん茎葉を使用することによって卵黄中のβ-カロチン含量と卵黄色を高めることができること,卵黄へのβ-カロチンの蓄積効率がβ-カロチン源によって影響されることを示している。
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