白色レグホーン種 (以下WL) を用いる実験で, 飼料のエネルギーと蛋白質含量の変化に対応するヒナの増体量の変化は, 飼料エネルギー (x
E) と蛋白質 (x
P) の各含量の関数として示され, 2元2次式がよくあてはまることが明らかとなった1)。この知見にもとずき, このような飼料組成の変化に対応するヒナの反応が, 鶏種が異なる場合, どのようなパターンになるか比較検討することを目的として実験を行なった。
栄養素の利用能力の鶏種間差については, いくつかの発表がなされているが4~7), これらは, 同時に同一組成の飼料を, 鶏種, 系統を異にするヒナに与えて, ヒナの反応を比較しているが, 本研究では, 飼料エネルギーと蛋白質の含量が単位量だけ変化したときの, 増体量などのヒナの反応の変化の大きさを比較している。
実験方法: 6年間にわたり合計2,679羽の初生ヒナによる18回の実験を行なった。18回の内訳は, WLにより3回, ニューハンプシャー種 (以下NH) により3回, 白色コーニッシュ種 (以下WC) により2回, 横斑プリマスロック種 (以下BR) により2回,白色プリマスロック種 (以下WR) により1回, ならびにこれらを交配してえた一代雑種7種類により各1回ずつ行なっている。一代雑種は, 父親×母親の記号で示した。
各実験はいずれも同一実験計画にしたがっている。雄のみ, または雄, 雌混合の初生ヒナを9区に区分して, それぞれに, 飼料エネルギーを3段階 (4.2, 3.6および3.0kcal ME/g), 飼料蛋白質を3段階 (26, 21および16%) として組合せた9種類の飼料のいずれかを与えて4週間飼育した。
データの統計的解析は, つぎの3段階により行なった。第1段階は, 性別による増体量の反応パターンの相違について検討した。その結果にもとずき, 第2段階では, 雄と雌の平均をとって, 18回のデータをすべて合併して, 分割区法によって, エネルギーと蛋白質の効果の鶏種間差を検討した。すたわち, 主試験として, 反復数を異にする一元配置法により, 鶏種間の比較を行ない, その各試験区を細分して9区とし, 3
2型2元配置法により, 9種類の飼料をわりつけて副試験区としたものとして解析した。この結果にもとずき, 増体量に関しては, 純粋種5種類を4群に区分し, 飼料効率に関しては, 全データを1群として, 各群に適用できる2元2次式を導いた。
結論: 本実験の結果から次のような結論がえられた。
1) 供試したすべての鶏種について, ヒナの成長反応は, 飼料エネルギーおよび蛋白質含量の関数として2元2次式をあてはめて説明することができる。反応曲面は凸型の廻転だ円面となる。
2) 増体量の反応曲面のパターンの差異, すなわち, 飼料エネルギーおよび蛋白質含量の変化に対する反応の鋭敏さにもとずき, 供試した純粋種5種類は4群に区分できる。WLとWHの反応曲面はよく似ていて区別できない。これに対し, WCは飼料蛋白質の変化に対する反応が鋭敏であり, WRは飼料エネルギーの変化に対する反応が鋭敏であった。また, BRは飼料組成の変化に対する反応が非常に鈍い特徴をもっている。これら各群に適用できる2次式は, それぞれ, (3)~(6)式で示され, 反応曲面は1~4図に示した。
3) 組成の異なる飼料の摂取量の差による影響を, 単位飼料摂取量あたりの増体量, すなわち飼料効率を求めることによって打消すと, 増体量の場合に認められた成長反応の鶏種間差は認められなかった。18回の実験の総平均値から, (7) 式が導かれ, 図5に示した等反応線で, 反応曲面が示されている。
4) 飼料摂取量の差を補正しない, 増体量そのものについて認められた反応曲面の鶏種間差の原因の1つとして, 濃縮された高エネルギー•高蛋白質飼料を摂取する能力の鶏種間差が考えられる。たとえば, 蛋白質26%の飼料で, エネルギーが3.0kcal/gから4.2kcal/gに高まると, BRでは1羽あたり4週間の飼料摂取量が508gから388gに低下するのに対し, WRでは, 5649から561gに, わずかに3g低下するのみであった。
5) (3)~(7) 式を偏徴分することによって, ヒナの増体量および飼料効率を最大にする飼料エネルギーおよび蛋白質含量を推定することができる。その組成は, 鶏種の相違にかかわらず, いずれも, 蛋白質では26%以上, エネルギーでは代謝エネルーで示して3.6kcal/g以上であった。実用的な飼料のエネルギーや蛋白質含量はこれらより低いのが普通であるから実用的な範囲内では, 飼料のエネルギー, 蛋白質含量ともに高い程, ヒナの反応は大きいものと期待される。
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