日本家禽学会誌
Print ISSN : 0029-0254
33 巻, 6 号
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  • V.卵構成に対する選抜の効果および選抜緩和の影響
    三好 俊三, ルック キィウミン, 口田 圭吾, 光本 孝次
    1996 年 33 巻 6 号 p. 329-338
    発行日: 1996/11/25
    公開日: 2008/11/12
    ジャーナル フリー
    鶏卵構成を変化させる目的で卵黄•卵白比に対し,高および低の2方向への選抜を12世代にわたり実施した。系統の造成を確認することも含め,その後さらに12世代,選抜を緩和した。本報では,卵黄•卵白比に対する選抜反応を卵黄重および卵白重の変化から検討した。
    1969年に孵化した白色レグホーン種を用い,毎世代8~9ヵ月齢に測定した卵形質によって,卵黄•卵白比の高低で選抜した。雌に対する選抜割合は,1/4~1/3であった。12世代以降では卵黄•卵白比,卵黄重および卵白重に対する選抜差がゼロに近似するように雌家系から1羽以上を抽出した。雄は同一方向の選抜系統から各世代,16羽を抽出し,急激な近交係数の上昇がない組み合わせで次代を得た。
    12世代にわたる卵黄•卵白比の基礎集団平均に対する反応量は高系統で10.17%の増加(0.94%/世代),低系統で9.81%の減少(0.80%/世代)が推定された。累積選抜差に対する回帰から推定した実現遺伝率は両系統で近似した(高系統;0.226±0.019,低系統;0.230±0.021)。また,高低系統間の差に基づく実現遺伝率は0.228±0.006が推定された。
    卵黄重における両系統間の差は9世代で約2.5gとなり,その増加は停滞する傾向を示したが,卵白重では2世代以降に有意な増加(0.818g/世代)が認められた。これらのことより,卵黄•卵白比における選抜反応は早い世代では卵黄重および卵白重の変化に起因し,その後の世代では卵白重の増加によるものと推察した。
    選抜を緩和した場合,卵黄•卵白比は低系統においてのみ有意な増加(0.41%/世代)が認められた。高系統では55~60%の範囲で推移した。また,高系統の卵黄重および卵白重にも有意な変化が認められなかった。低系統では卵黄重の増加および卵白重の有意な減少(0.26g/世代)が推定された。高低系統間の差はいずれの形質も有意に減少し基礎集団平均への回帰が認められたが,いずれも低系統における変化に起因した現象であると推察した。これらのことは卵黄•卵白比を高める方向への選抜反応が限界に漸近したことを示唆したが,卵黄•卵白比を低めることは,特に,卵黄重を減少させ得ない必然性に関連するものであると推察した。
  • 喜多 一美, 宮崎 美紀, 奥村 純市
    1996 年 33 巻 6 号 p. 339-346
    発行日: 1996/11/25
    公開日: 2008/11/12
    ジャーナル フリー
    絶食したニワトリから得た血清が,ニワトリ胚繊維芽細胞の蛋白質合成におよぼす影響について調査した。2日間市販通常飼料を自由摂取あるいは2日間絶食させた6週齢のニワトリから血清を採取し,ニワトリ胚繊維芽細胞の蛋白質合成促進効果をウシ胎児血清と比較した。ニワトリ胚繊維芽細胞は,9日間孵卵したニワトリ胚から採集した。培養液中の血清濃度は0, 2, 5, 10および20%とした。各濃度の血清を添加した培養液中でニワトリ胚繊維芽細胞を54時間培養した後,L-[2,6-3H]フェニルアラニン(37kBq/ml)を培養液中に添加し,さらに18時間培養し,蛋白質に取り込まれた放射能量を蛋白質合成の指標とした。
    無血清培養液群の蛋白質合成が最も低くなり,全ての種類の血清において,血清濃度が2から20%と上昇するのにともなって蛋白質合成が増加した。血清濃度が10%以上では,絶食したニワトリから得た血清を用いて培養した繊維芽細胞の蛋白質合成は,他の群の蛋白質合成より有意に低かった。絶食したニワトリから得た血清群(血清濃度20%)の培養液にニワトリインシュリン様増殖因子-I(IGF-I)を50μg/mlとなるように添加したところ,ニワトリ胚繊維芽細胞の蛋白質合成は,通常飼料を自由摂取させたニワトリの血清群との間に有意な差は認められなかった。
    以上の結果から,ニワトリ血清のもつニワトリ胚繊維芽細胞の蛋白質合成促進効果の一部は,而1中IGF-Iによって説明できることが示された。
  • 安藤 光一, 安永 淳一, 藤原 昇
    1996 年 33 巻 6 号 p. 347-356
    発行日: 1996/11/25
    公開日: 2008/11/12
    ジャーナル フリー
    ウズラ内頸動脈,脳動脈系におけるノルアドレナリン(NA)含有およびアセチルコリンエステラーゼ陽性(AChE)神経の分布•密度について,組織化学的に調べた。NA神経は内頸動脈および主幹脳動脈の全域に緻密な網目からなる高密度な叢状分布を示し,支配密度は内頸動脈吻合部から脳頸動脈にかけて特に顕著であった。これに対して,AChE神経は脳動脈前循環系を形成する内篩骨,中大脳,後人脳および前幹枝遠位部では常に認められるが,NA神経よりも著しく低密度であり,他の主幹脳動脈や内頸動脈では本神経は通常確認できず,存在してもごく少数であった。更にまた,前循環系の主幹脳動脈(主に内篩骨動脈)壁には少数のAChE陽性神経細胞が存在することを興味ある所見として指摘できる。上述ならびに他の所見の統合帰結から,脳動脈系を支配するNA神経は内頸,内篩骨および椎骨動脈経由で頭蓋外から脳動脈系に投射するが,AChE神経は専ら内篩骨動脈経由で投射し,頭蓋外および脳動脈壁ニューロンの双方に起因するといえる。結論として,ここに報じたウズラ内頸動脈,脳動脈系のNAおよびAChE神経の不均衡な支配様相は哺乳類で証明されている両神経による均等支配から大きく異なり,脳循環系にかかわる鳥類あるいはウズラ固有のNAおよびAChE神経調節機構の存在を示唆しているものと考える。
  • とくに排卵機構に関連して
    久保 仁, 吉村 幸則, 田村 達堂, 岡本 敏一
    1996 年 33 巻 6 号 p. 357-365
    発行日: 1996/11/25
    公開日: 2008/11/12
    ジャーナル フリー
    本実験は卵胞が排卵可能となる機構を追究することを目的として行った。妊馬血清性腺刺激ホルモン(PMSG)処理または下垂体除去は小卵胞を排卵可能にすることが知られている。PMSG処理及び下垂体除去に伴う卵胞の胚盤部の微細構造的変化を観察し,両処理によって共通的に生じる構造変化から卵胞が排卵可能となる要件を検討した。排卵が起こらない対照鶏の第2位卵胞では,卵の胚盤に多くの滑面小胞体様の小胞が認められ,顆粒層細胞の細胞質突起が卵の原形質膜とギャップ結合を形成していた。一方,LHの作用を受けると排卵が起こることが知られているPMSG処理鶏の大卵胞と下垂体除去鶏の第2位卵胞では,顆粒層細胞と卵原形質膜のギャップ結合は解離し,小胞構造は萎縮していた。これらの結果から,顆粒層細胞と卵とのコミュニケーションの変化及び滑面小胞体の微細構造的変化は卵胞が排卵可能となる過程に関与するものと推察された。
  • 神谷 誠治, 小野 雅章, 土井 守, 中村 孝雄
    1996 年 33 巻 6 号 p. 366-370
    発行日: 1996/11/25
    公開日: 2008/11/12
    ジャーナル フリー
    ニワトリヒナにグルココルチコイド(GL)としてデキサメタゾン(Dex)を投与し,ファブリシウス嚢(F嚢)の形態変化について組織学的に検索した。また,免疫組織化学的手法によりアポトーシス発現細胞を検出することにより,F嚢リンパ細胞におけるGL誘導性のアポトーシスの発現について検討した。
    その結果,Dexの投与によりF嚢は萎縮するとともに,リンパ濾胞は退行性変化を示し,濾胞内のリンパ細胞は死滅して減数した。また,リンパ細胞はリンパ濾胞内の皮質部よりも髄質部で顕著に減少し,アポトーシスに特有な細胞の萎縮や核の凝縮が多数観察された。さらに免疫組織化学的検索では,Dexの投与によりリンパ濾胞の髄質部を中心にアポトーシスの発現を示す陽性細胞が経時的に増加するとともに,核周囲部にCの字状の強い染色性を示す細胞が多数観察された。
    以上のことから,GL投与によるF嚢の萎縮にはアポトーシスによるリンパ細胞の死滅機構が関与していることが明らかとなった。また,リンパ濾胞髄質部の未成熟なリンパ細胞は皮質部の成熟リンパ細胞と比較しGLに対する感受性が高く,GL誘導性のアポトーシスの発現がより顕著であることが推察された。
  • 新井 達弥, 杉山 稔恵, 楠原 征治
    1996 年 33 巻 6 号 p. 371-376
    発行日: 1996/11/25
    公開日: 2008/11/12
    ジャーナル フリー
    本研究では,放卵後3時間および12時間の産卵鶏を用い,卵管の卵殻腺部におけるcalcium-adeno-sine triphosphatase(Ca2+ -ATPase)およびcarbonic anhydrase II (CAII)の局在について免疫組織化学的に検出し,卵殻腺部の粘膜上皮および管状腺におけるCa2+とHCO3の分泌について検討した。
    卵殻腺部におけるCa2+ -ATPaseの局在を観察したところ,粘膜上皮においては,免疫反応は認められなかった。管状腺においては,管状腺細胞の腺腔面および導管部において強い免疫反応が認められた。また,放卵後3時間および12時間の産卵鶏における免疫反応の間に違いは認められなかった。
    卵殻腺部におけるCAIIの局在を観察したところ,粘膜上皮において強いCAIIの免疫反応が認められ,管状腺においては,粘膜上皮と比較して幾分弱いCAIIの免疫反応が認められた。また,放卵後3時間および12時間の産卵鶏で差はみられなかった。
    これらのことから,卵殻腺部におけるCa2+の分泌は,管状腺に存在するCa2+-ATPaseによる能動輸送によって行なわれていることが推察された。また,卵殻形成に必要とされるHCO3の産生と分泌には,管状腺よりもむしろ粘膜上皮の方がより強く関与していることが推察された。
  • 中前 均, 岸 茂行, 藤崎 幸蔵, 大城 政一, 古田 賢治
    1996 年 33 巻 6 号 p. 377-382
    発行日: 1996/11/25
    公開日: 2008/11/12
    ジャーナル フリー
    鶏群に寄生したダニ類を薬剤により完全に駆除することは容易でない。ダニ類が寄生し生息する鶏の主な羽域である腹域及び下腿域の剪羽を行い,ダニ類がそれらの羽域で寄生するのに不適な環境を形成することで,寄生程度を軽減することができると考えて実験を行った。実験はダニ寄生鶏が飼育されていた鶏舎で実施したので,供試鶏は常時ダニ類の寄生を受ける機会に曝されていた。
    1)既にダニ類が寄生している193日齢の産卵鶏の腹域を剪羽したところ剪羽6週後まで,腹域と下腿域を剪羽すると8週後までダニ類の寄生は観察されず,それ以後にみられた寄生でも寄生ダニ数は剪羽前に比べて有意に少なかった。
    2)寄生のない119日齢の鶏群の腹域を剪羽して飼育したところ,寄生を受けた羽数,寄生したダニ数ともに剪羽しない鶏群に比べ著しく少なかった。
    3)剪羽群のヘマトクリット値は無剪羽群に比べ有意に高く,産卵率も剪羽群が有意に高かった。剪羽によりダニの寄生を完全に防除することは不可能であるが,寄生程度を軽減し鶏の生産低下を防ぐことから,剪羽は実用的な対策となり得ると考えられる。
  • 青柳 陽介, 成宮 克英, 伊東 忍, 佐々木 啓介, 中谷 哲郎
    1996 年 33 巻 6 号 p. 383-387
    発行日: 1996/11/25
    公開日: 2008/11/12
    ジャーナル フリー
    ラジカルイニシエーターである2,2'ーアゾビスアミジノプロパン二塩酸塩(AAPH)およびL-アスコルビン酸-2-リン酸マグネシウム(APM)の投与が単冠白色レグホーン種雄ヒナの成長およびアスコルビン酸濃度に及ぼす影響について調査した。5mg/100g体重/1日のAAPHを14日間の投与すると,ヒナの体重増加量,飼料摂取量および飼料効率(体重増加量/飼料摂取量)は対照区のヒナに比べ有意に低下したが,APMを1.5%飼料に添加するとAAPHを投与したヒナの成長低下は緩和された。また,AAPHを投与するとヒナで血漿のアスコルビン酸量の有意な低下と血漿および肝臓のチオバルビツール酸反応物(TBRS)濃度の有意な増加がみられた。このTBARS濃度の増加は,APMの飼料添加により減少した。
    以上の結果より,AAPHを投与したヒナが,ラジカル傷害のモデル動物となり得ること,およびAAPH由来のラジカルによる酸化ストレスに,飼料へのAPMの添加が有効であることが示唆された。
  • 細谷 実
    1996 年 33 巻 6 号 p. 388-391
    発行日: 1996/11/25
    公開日: 2008/11/12
    ジャーナル フリー
    わが国の採肉養鶏は寡占化,集中化が進み,一農場で100棟もの立派な平飼鶏舎が整然と並んでいる採肉業者が各地にみられる。これらの平飼舎は概ね軒高が低く,立体飼育鶏舎に改造する事は困難であると考えられてきた。本研究では,この平飼舎を活用する事を検討した。
    既存の平飼舎は給餌,給水は全て自動化されているが,死鶏の発見と取出しの為に管理人が舎内に入らなければならない。死鶏の取り出しが自動化されれば全自動の無人鶏舎が実現する。ここでは,立体飼育装置で開発された床面の網目ベルトを使ってコンクリート床面から約80cm上部に網目ベルトを設置し,この飼育ベルトを超低速,または,間欠的に移動し,死鶏を自動的に取り出す方法を検討した。この方法の特徴は,管理人が舎内に病原菌を持ち込む恐れがない,人件費を大巾に節約できる,鶏糞と鶏体を分離できる,除糞機によって鶏糞を舎外に搬出して舎内の環境を良好な状態に保つことができる,薬剤を節約できるなどにあり,平飼舎の画期的な改造となる。
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