鶏卵構成を変化させる目的で卵黄•卵白比に対し,高および低の2方向への選抜を12世代にわたり実施した。系統の造成を確認することも含め,その後さらに12世代,選抜を緩和した。本報では,卵黄•卵白比に対する選抜反応を卵黄重および卵白重の変化から検討した。
1969年に孵化した白色レグホーン種を用い,毎世代8~9ヵ月齢に測定した卵形質によって,卵黄•卵白比の高低で選抜した。雌に対する選抜割合は,1/4~1/3であった。12世代以降では卵黄•卵白比,卵黄重および卵白重に対する選抜差がゼロに近似するように雌家系から1羽以上を抽出した。雄は同一方向の選抜系統から各世代,16羽を抽出し,急激な近交係数の上昇がない組み合わせで次代を得た。
12世代にわたる卵黄•卵白比の基礎集団平均に対する反応量は高系統で10.17%の増加(0.94%/世代),低系統で9.81%の減少(0.80%/世代)が推定された。累積選抜差に対する回帰から推定した実現遺伝率は両系統で近似した(高系統;0.226±0.019,低系統;0.230±0.021)。また,高低系統間の差に基づく実現遺伝率は0.228±0.006が推定された。
卵黄重における両系統間の差は9世代で約2.5gとなり,その増加は停滞する傾向を示したが,卵白重では2世代以降に有意な増加(0.818g/世代)が認められた。これらのことより,卵黄•卵白比における選抜反応は早い世代では卵黄重および卵白重の変化に起因し,その後の世代では卵白重の増加によるものと推察した。
選抜を緩和した場合,卵黄•卵白比は低系統においてのみ有意な増加(0.41%/世代)が認められた。高系統では55~60%の範囲で推移した。また,高系統の卵黄重および卵白重にも有意な変化が認められなかった。低系統では卵黄重の増加および卵白重の有意な減少(0.26g/世代)が推定された。高低系統間の差はいずれの形質も有意に減少し基礎集団平均への回帰が認められたが,いずれも低系統における変化に起因した現象であると推察した。これらのことは卵黄•卵白比を高める方向への選抜反応が限界に漸近したことを示唆したが,卵黄•卵白比を低めることは,特に,卵黄重を減少させ得ない必然性に関連するものであると推察した。
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