緩徐活性型遅延整流性K
+電流 (l
KS) は活動電位プラトー相で活性化され活動電位持続時間 (APD) を決定する電流系の一つであり, ヒトを含む多くのほ乳類の心房筋や心室筋に存在することが知られている.AT
1受容体遮断薬は心房細動の発生に対して抑制効果があることが報告されているが, その電気生理学的機序は十分には明らかにされていない.本研究の目的は, 心房筋細胞においてアンジオテンシンII (Ang II) によるl
Ksの修飾を検討し, 加えてそのAPDに及ぼす効果を明らかにすることとした, モルモット心房筋細胞に全細胞型パッチクランプ法を適用してl
Ks (voltage-clamp) ならびに活動電位 (current-clamp) を記録した.Ang IIならびにその安定化誘導体であるSar
1-Ang IIはAT
1受容体-Gタンパク質-ボスホリパーゼC-プロテインキナーゼC系を活性化してl
Ksを増大させ, それに伴いAPDを短縮させることが明らかとなった.本実験結果をヒト心房筋に外挿して考えると, AT
1受容体遮断薬はAng IIによるl
Ks増大を介したAPD (ならびに有効不応期) の短縮作用に対して拮抗的にはたらくことが予想され, これがAT
1受容体遮断薬のもつ心房細動に対する抑制効果の背景となる電気生理学的機序の一つであると考えられた.
抄録全体を表示