日本文学
Online ISSN : 2424-1202
Print ISSN : 0386-9903
66 巻, 5 号
選択された号の論文の13件中1~13を表示しています
特集・伝承世界をめぐって
  • 谷口 雅博
    2017 年 66 巻 5 号 p. 2-11
    発行日: 2017/05/10
    公開日: 2022/05/27
    ジャーナル フリー

    『出雲国風土記』には、「古老伝云」で始まる記事が一六例ある。この一六例と、それ以外の多くの記事との間に内容上・性質上の差異があるかどうか、これまで明らかにされてきてはいない。本稿では大原郡の記事における古老系と非古老系の差異について検討し、古老系が土地に固有の、中央側の認識していない伝えを記載するものであるのに対し、非古老系は中央神話と関連するもの、または既に中央側に認識されている記事である可能性について論じた。

  • ――処女の死と〈古物語り〉の再生をめぐって――
    大谷 歩
    2017 年 66 巻 5 号 p. 12-22
    発行日: 2017/05/10
    公開日: 2022/05/27
    ジャーナル フリー

    本稿は、『万葉集』に詠まれる葦屋の菟原処女の伝説をめぐって、処女の死の事情と、その伝説歌が再生される場の問題について、『大和物語』の「生田川」の段を通して考察するものである。処女の死は、古代日本の結婚にまつわる社会の制約によって起こった悲劇であり、墓をよすがとして伝説歌は今へと再生される。そこでは、物語りの人物に成り代わって歌を詠むという方法で、古と今とが共時化されて物語り世界を展開させ、〈古物語り〉を今へと語り継ぐ歌の場が生成されていたのである。

  • 稲生 知子
    2017 年 66 巻 5 号 p. 23-33
    発行日: 2017/05/10
    公開日: 2022/05/27
    ジャーナル フリー

    愛知県名古屋市にある熱田社の最古の縁起が『尾張国熱田太神宮縁起』(『寛平縁起』)である。奥書には寛平二(八九〇)年に編纂したとあるが確定できない。本稿では、九世紀にこの縁起を位置づけた場合の〈伝承世界〉の広がりについて考えてみたい。「古風土記」の形式「俗」で書かれる建稲種公をめぐる縁起独自伝承、特に「覚賀鳥」をめぐる伝承を中心に九世紀に成立した可能性を提示する。

  • ――夕顔物語における伝承世界をめぐって――
    竹内 正彦
    2017 年 66 巻 5 号 p. 34-46
    発行日: 2017/05/10
    公開日: 2022/05/27
    ジャーナル フリー

    『源氏物語』「夕顔」巻において、光源氏は「顔をほの見せたまはず」夕顔を訪問する。従来、三輪山式神婚譚がふまえられていることが指摘され、光源氏は覆面姿であるか否かといった議論がある当該箇所について、覆面の文化史的意義や光源氏の顔のあり方等をおさえながら、光源氏は覆面をつけていたと考えるのが妥当であるとし、そのことによって呼び起こされてくる伝承世界を考察したうえで、物語世界が構築されていくありようについて考えた。

  • ――「末の松山」ほか――
    錦 仁
    2017 年 66 巻 5 号 p. 47-56
    発行日: 2017/05/10
    公開日: 2022/05/27
    ジャーナル フリー

    東日本大震災後、『古今集』の「君をおきてあだし心をわがもたば末の松山波も越えなむ」が貞観の大地震による津波を詠んだ歌か否か、注目を集めた。「越えなむ」だから越えなかったわけで、津波を詠んだともいえない。なのに、様々な解釈を生むのはなぜか。歌の言表にないことを排除する通常の和歌研究でよいのか。歌枕を名所化する各地の営みを関係させて考え、新しい和歌研究を模索した。

 
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