日本文学
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64 巻, 12 号
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
  • ―― 『平家物語』鹿ヶ谷説話の原構想 ――
    松下 健二
    2015 年 64 巻 12 号 p. 1-12
    発行日: 2015/12/10
    公開日: 2021/01/08
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    後白河院近臣が平氏討伐をくわだてた鹿ヶ谷事件を、『平家物語』は藤原成親が主導した暴挙として描く。これまで、鹿ヶ谷説話での成親と西光との違いはそれほど明確ではなかった。だが、延慶本や『源平闘諍録』を検討すると、西光は成親とは異なり、道義的な動機から平氏討伐に加わっていたことがわかる。平氏の滅亡は天意であると述べる西光は、『平家物語』の主題とも係わる人物として構想されていたのである。

  • ―― 立命館大学図書館西園寺文庫蔵「〔鷹詞書〕」考 ――
    大坪 舞
    2015 年 64 巻 12 号 p. 13-24
    発行日: 2015/12/10
    公開日: 2021/01/08
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    本稿は、「鷹の家」として最も著名な西園寺家にて室町後期に編纂された「〔鷹詞書〕」を取り上げ、鎌倉後期以来西園寺家には和歌・連歌とのかかわりが深い鷹詞の蓄積があったこと、明応年間頃(一四九二~一五〇一)連歌への需要を想定して四季の部立てを持つ書に編纂したことを明らかにした。この上で、西園寺家における鷹書とは、単に鷹狩を行うためだけに記された書でなく、鷹狩を核とした、和歌・連歌とも連関する書であり、西園寺家はこれを強く意識した上で自家の家業として鷹道を定位していったと考察した。

  • ―― 『新自然主義』・表象・シェストフ的不安 ――
    福岡 弘彬
    2015 年 64 巻 12 号 p. 25-37
    発行日: 2015/12/10
    公開日: 2021/01/08
    ジャーナル フリー

    岩野泡鳴が『新自然主義』を中心とした諸評論で唱える「デカダン」概念の、同時代における尖鋭性と、それが昭和一〇年前後、文壇で評価される理由を明らかにした。諸規範との相克のなかで、あらゆる二元論の破砕を企てる泡鳴の営為とは、最もラディカルな「デカダン」として位置付けられる。また、彼は「デカダン」=「耽溺」を運動の位相において把捉することで、流動的な「自我」を「刹那」の連続として表す「表象」体系を構築しようとしていた。この泡鳴の理論は、「シェストフ的不安」が瀰漫する危機の時代において、ニヒリズムを越える力動性として召喚される必然性を持つものであった。

  • ―― 軍人未亡人の家 ――
    北川 扶生子
    2015 年 64 巻 12 号 p. 38-48
    発行日: 2015/12/10
    公開日: 2021/01/08
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    『こゝろ』の「奥さん」は、先生が〈家庭〉を学び、Kの力から逃れるための指導者の役割を果たしている。しかしそのことは、「先生の遺書」では抑圧されている。当時のメディアにおける軍人未亡人のイメージを参照すると、奥さんが軍人未亡人であることで先生の自殺は大義に接続されるが、一方で、軍人未亡人は経済的・性的側面からも注目されており、その点から見れば『こゝろ』は、戦死者遺族女性の生き延びる努力の物語になる。

日本文学協会 国語教育部会 第67回夏期研究集会 基調報告
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