日本文学
Online ISSN : 2424-1202
Print ISSN : 0386-9903
67 巻, 6 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
  • 星 優也
    2018 年 67 巻 6 号 p. 1-12
    発行日: 2018/06/10
    公開日: 2023/07/01
    ジャーナル フリー

    『神祇講式』は、神祇を〈本尊〉として衆生救済を祈る講式である。無住作『沙石集』や『中臣祓訓解』など中世神道書との関係が指摘されており、近年は神楽の祭文への展開が明らかになっている。

    本稿は、『神祇講式』に見られる「神冥」の表現に注目した。「神冥」は用例こそ鎌倉期に確認できるが、「神祇」と「神冥」の関係を考察することから、『神祇講式』では死者を含む、衆生を救済する「神冥」が創られたことを明らかにした。

  • 谷口 博子
    2018 年 67 巻 6 号 p. 13-22
    発行日: 2018/06/10
    公開日: 2023/07/01
    ジャーナル フリー

    元九条の傾城大淀は将軍義輝の愛妾であり、謀反に際し殺害される。大淀造形に対する近松の視点は、『仮名列女伝』「殷紂妲己」における比干の諫言、即ち典法に基づかない女の言葉を政道に用いることへの批判にある。三好氏の事跡を記す『三好別記』(寛文十年以前成立)は「天下の政道は小侍従殿といふ女性のはからひ成ゆへに諸人うとみはて奉り自滅し給ふ」と、政道を操る「小侍従」という女性を記す。「小侍従」は義輝の愛妾で義輝の死と共に殺害されており、近松の視点とも一致する。「小侍従」は大淀の原型と想定される。

  • ――田山花袋はニーチェをどう読んだか――
    永井 聖剛
    2018 年 67 巻 6 号 p. 23-35
    発行日: 2018/06/10
    公開日: 2023/07/01
    ジャーナル フリー

    一般に、田山花袋文学におけるニーチェ思想の影響は、「美的生活論」(高山樗牛)を経由した「本能の満足」の主題化として認識されている。本稿が考察するのは、ニーチェの同時代読者としての花袋が、その弱者道徳批判(ルサンチマン)の思想をどう摂取し、小説作品に取り込んできたかである。そこで明らかになったのは、花袋がニーチェ思想を明らかに誤読し、そればかりか、〈自然〉の名のもとに、弱者を救済する反ニーチェ的な思想を構築していたことである。ただしそれは、花袋のオリジナルの思想というよりは、樗牛、蘆花らの同時代テクストとの相互関連性のなかで育まれたものであった。

  • ――「旅の墓碑銘」のメタフィクションの意義――
    中村 佑衣
    2018 年 67 巻 6 号 p. 36-46
    発行日: 2018/06/10
    公開日: 2023/07/01
    ジャーナル フリー

    本稿は三島由紀夫の〈菊田次郎もの〉、三作目「旅の墓碑銘」(『新潮』一九五三年六月)のメタフィクションの意義を考察した。メタフィクションによって本作品は、読者が慣れ親しんできた〈主人公=作者〉とする定式、及びその定式を成立させる写実主義(リアリズム)の再検討を読者に促す。『仮面の告白』(一九四九年七月)を契機に形成されつつあった「三島由紀夫」像を相対化することで、戦後の三島文学が次の段階に進んだことを本稿は指摘した。

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