従来水を吸いとる材料すなわち吸水材料といえば,脱脂綿,布,スポンジ,ティッシュペーパーなどがあげられ,これらの吸水材料の吸水力はせいぜい自重の20倍程度で,しかもその保水力は圧力を加えると容易に離水することから,ほとんど無いに等しいものであった。ところが近年,従来の吸水材料とは比較にならないほど大きな吸水力,保水力を有する樹脂が出現して吸水材料の概念が一変するに至った。これはスーパーアブソーベント(以下,高吸水性樹脂という)とよばれる一群のポリマーで,その吸水力は樹脂組成によっても異なるが自重の500倍程度は吸収でき,しかも多少の圧力を加えても離水しないという特徴を有するものである。
この高吸水性樹脂の出現は,化学協会はもとより石油・農園芸業界をはじめとする各種業界で多大の関心をよび,目下非常に多彩な分野でその用途開発が検討されているが,この樹脂の実用化に先鞭をっけたのは,生理用ナプキン,紙おむつ業界である。ナプキン,紙おむつ製品は嵩張ることから,その小型化は生産者側からは物流コスト低減のため,また消費者側からは使用感の改善のために強く要望されてきた。この要望に応えたのが高吸水性樹脂でり,製品の小型化を実現すると同時に従来の吸水材料では得られなかった製品使用時のベタツキまで解消して,今や本格的需要に結びつこうとしている。高吸水性樹脂の開発は緒にっいたところであり,用途にマッチする樹脂の創製・改良から応用に関する技術開発は各方面で精力的に続けられている。本稿では,これら高吸水性樹脂の組成・製法・特性・用途について概説する。
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