北海道の主要稲作地帯にある中央北部,中央南部,南部で1994~2008年に,中生うるち品種の 「きらら397」 と 「ほしのゆめ」 の精米蛋白質含有率,アミロース含有率における年次間と地域間差異の発生要因を,生育特性から検討した.地域間では,分けつ期の6月の風速が大きく,生育後半に土壌中窒素が多く有効化するグライ土の中央南部が,褐色低地土の他地域よりも蛋白質含有率が高かった.また,同一の登熟気温(出穂後40日間の日平均積算気温)でも日較差が小さく夜温が高く,千粒重が軽い南部でアミロース含有率が低かった.さらに,蛋白質含有率は,全重と玄米収量が最も重い中央北部でのみ両形質との間に負の相関関係が認められた.また,千粒重とは南部で負の,中央南部で正の相関関係が認められ,この差異は土壌の違いによると思われた.3地域平均でみると,不稔歩合が低く,m
2当たり稔実籾数が多く,千粒重が重く,登熟歩合が高く,全重が重く,収穫指数が高く,玄米収量が高いほど蛋白質含有率が低かった.不稔歩合のこれらの関係への影響を考慮して,不稔歩合22~50%の不稔多発データを除いて蛋白質含有率との関係をみると,蛋白質含有率と一定の関係が認められたのは不稔歩合と全重のみであった.登熟気温は不稔多発データの有無にかかわらず,843~852℃で蛋白質含有率が最低となり,さらにアミロース含有率と負の相関関係が認められた.登熟気温が852℃より高くなるにともない蛋白質含有率が高くなるが,同時にアミロース含有率が低くなるため食味が優れてくると考えられた.
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