本論文では, LSIチップに登載する高周波スパイラルインダクタに関し, そのQ値の改善に寄与する, 最適な配線形状, ならびに最適なグラウンドシールドの形状および構造について検討した結果を述べる。まず標準的なCMOSプロセスを使って実現することを仮定し, 電磁界解析ツールを用いてLSI上に構成するスパイラルインダクタ素子の電磁界分布をシミュレーションした。これにより得られた知見をもとに, リング状のインダクタ配線形状と櫛形形状のグラウンドシールドを有する, 新しいスパイラルインダクタ素子の構造を提案した。併せて, インダクタ配線とグラウンドシールド間の距離およびグラウンドシールドの材質をシート抵抗の観点から検討し, これらを含めた最適な構造を提案した。この結果, 7nHのスパイラルインダクタにおいて, 従来に比し, 周波数範囲2~3.5GHzでQ値が15%から23%上昇する見通しが得られたので, 報告する。
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