本論文では,産業分野向け制御機器で用いる絶縁型データ伝送用パルストランスのモデリング手法を提案する。 機器メーカが入手可能な基本情報から作成した等価回路モデルは周波数帯域が不足し,波形良否の判断ができない課題がある。そこで,等価回路精度向上を目的にパルストランスの内部構造に着眼して,巻線間の結合を想定した素子を追加した等価回路を考案し,実測S-Parameterにフィッティングした。データ伝送成立性の検証に重要なリングバック形状の調査を行った結果,所望の波形解析精度が得られ,波形の良否判断が可能になった。大がかりな波形実測を主な検討手段とせず,机上での伝送路設計を実現する示唆を得た。
Ag-3 at%Cu合金膜を用いた大気中の原子拡散接合法によるウエハの接合性を評価した。接合が伝播する最長の大気暴露時間texpは,Ag薄膜の場合は約500 sと短いが,Ag-Cu膜では2.6 × 105 s (72 h)まで増加した。室温接合後の接合界面の表面自由エネルギは0.1 J/m2以下と小さいが,texp = 1 × 104 s (3 h)以下の接合では100°Cの熱処理により,また,texp = 2.6 × 105 s以下では150°Cの熱処理により,いずれも強固な接合が得られた。成膜時にCuが膜表面に析出することでAgの凝集が抑制され,大気暴露時間に対する接合性能が向上したものと考えられる。
表面実装型ディスクリートパワー半導体パッケージの一つであるDPAKパッケージを対象として,3次元熱流体シミュレーションとともに使用されるコンパクト熱モデルの温度予測精度について検証する。適切な領域設定,評価関数で作成されたコンパクト熱モデルは,細かいグリッドを設定した3次元詳細モデルと比較して,概ね0.1°C/W程度の予測誤差でジャンクション温度予測が可能であった。また,コンパクト熱モデルの温度予測誤差の傾向は3次元詳細熱モデルとはやや異なることも明らかとなった。最後に,実製品など高精度な温度予測を可能とするコンパクト熱モデルの要件として,コンパクト熱モデルを作成する際に与える境界条件セットについても議論する。
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