ABS樹脂は, 最も身近な素材であり, 自動車や家電部品に幅広く使われている。一般的に, ABS樹脂および析出金属間の密着強度を改善するために, H
2SO
4およびCrO
3を含有するエッチング溶液を使用する。また, その手法は工業的に40年以上行われている。近年, 環境汚染の問題はWEEE/RoHS指令に代表されるように, 世界的に重要なテーマとなっている。特に, 自動車における防錆表面処理技術は, EUのELV指令の環: 境負荷物質削減の大きな課題となっている。これらの規制により関係する部品は, 2007年7月以降, EU域内に6価クロムの使用が禁止となる。したがって, 有害物質を使用しない代替技術に変更が迫られている。われわれは, 光触媒である酸化チタンを利用したクロム酸を含まないエッチング代替処理に着目した。TiO
2共存下において紫外線照射を行うことで, ABS樹脂表面が改質されることを見出した。この表面改質により, 無電解NiPめっき膜とABS樹脂との密着性が改善されることを確認した。さらに, 最適な条件下で, 約1kgf/cmの密着強度が得られた。
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