本研究では,SOI-パワーMOSFETにおける寄生バイポーラ効果と機械的応力効果を実験的に評価し,それらの相互作用を明らかにすることを目的とした。機械的負荷下での電気特性変動は,4点曲げ試験により評価した。ドレイン電圧-ドレイン電流特性では,ゲート電圧が小さいほど寄生バイポーラ効果によるドレイン電流の増加が顕著に見られた。ピエゾ効果のみによる電流特性変動領域と寄生バイポーラ効果が発現する領域との比較から,寄生バイポーラ効果が機械的負荷に起因する電気特性変動を加速させることが示唆された。また,電流方向に対する負荷方向依存性の存在が示唆されたが,ゲート長さ依存性は明確にならなかった。
本研究では,アンテナ基板の影響を考慮した人工磁気導体(AMC: Artificial Magnetic. Conductor)の設計手法および,AMCを組み込んだ低姿勢かつ背部影響の低減を可能とする人工磁気導体一体型アンテナを提案し,その諸特性の評価を行った。その結果,アンテナ基板の影響を考慮したAMCの共振周波数の計算式を導出し,解析値との誤差を2.0%以内とした。またAMCをアンテナに組み込むことでアンテナ利得やF/B比の向上が確認できた。さらにアンテナの近傍に金属板が存在する場合でも反射係数やアンテナ利得の劣化を低減可能であることを確認し,提案アンテナの有用性を示した。
熱と電気の連成解析に適した相変化材料(PCM)のSPICEモデルについて検討した。PCMをスイッチでモデル化した場合には,モデルが複雑となり計算速度の点で不向きである。一方,従属電流源でモデル化することで単純なモデルで高速に計算できる反面,解析の不安定な要素がある。したがって安定性を確保できれば従属電流源モデルが望ましい。本報告では,従属電流源を用いたPCMのSPICEモデルを用いてPCM熱時定数の1/100以下の時間刻みで計算を行うことで,誤差を増大させずに安定的に解析可能であり,電子機器の冷却システムの熱解析に利用できることを示した。
半導体チップのダイレクトボンディング実用化の基礎検討として,弾性樹脂薄膜を塗布したSiチップを,他の基板と原子拡散接合法で室温接合する実験を行った。厚み11 mのポリイミド薄膜を塗布することで,混入する異物による接合欠陥を低減できた。また,表面粗さが3 nmと大きな鏡面研磨ステンレス板と接合した場合でも,表面粗さに起因する接合欠陥を低減できることを示した。さらに,Siチップと鏡面研磨ステンレス板を接合したサンプルを用いて,温度サイクルおよび150°Cの高温放置の各試験を実施した結果,ポリイミド薄膜の塗布により熱膨張差に起因する界面欠陥(Siチップのクラック)を抑制できることを示した。
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