平滑アルミナ基板と無電解純Niめっき膜の密着性の向上を目指し,基板/膜界面に作用するエネルギ収支の観点から,密着性と内部応力との関係を検討した。そのため,両測定における単位をエネルギ(J/m
2)に統一することで理想的な付着エネルギの導出を試みた。その結果,ピールエネルギ
Gpは膜厚依存性がみられ,ピールエネルギ
Gpはいずれの純Niめっきにおいても膜厚が増加するにつれて,低下が見られた。膜厚0.2 μm以上では,柱状晶純Niめっきが最も高い値を示し,平滑アルミナ基板との高い密着性が得られた。理想的な付着エネルギである界面付着エネルギ
Gadはピールエネルギ
Gpと内部歪エネルギ
Ginの和にはならず,さらに,曲げ変形エネルギ
Gbend,弾性変形エネルギ
Gel,破断エネルギ
Gfを考慮する必要がある。柱状晶純Niめっきがナノ結晶純Niめっきと比べて高い密着性が得られた理由として,内部歪エネルギ(内部応力)の極小化による基板/膜界面の空隙発生の抑制および弾性変形エネルギ
Gel,破断エネルギ
Gfの極小化による基板/膜界面近傍の強靭性化によるものと考えられる。
抄録全体を表示