日本集中治療医学会雑誌
Online ISSN : 1882-966X
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ISSN-L : 1340-7988
26 巻, 4 号
選択された号の論文の15件中1~15を表示しています
編集委員会より
2018年度優秀論文賞受賞者のことば
総説
  • 坂木 孝輔, 内野 滋彦, 宮城 久仁子
    2019 年 26 巻 4 号 p. 241-248
    発行日: 2019/07/01
    公開日: 2019/07/01
    ジャーナル フリー

    医療の著しい進歩によりICUを生存退室する患者は増加しつつあるが,一方でその多くに精神機能障害がみられ問題となっている。近年,その罹患要因としてICU滞在中の患者の記憶が関連していることが明らかになってきた。患者の記憶は,事実の記憶,感情的記憶,妄想的記憶に分類され,特に妄想的記憶はICU生存者の26〜73%にみられ,忘れられ難く,不安やうつ,posttraumatic stress disorder(PTSD)などの精神機能障害やQOLの低下,復職率の低下への関連が示唆されている。記憶に対する援助として,ICU滞在中の記憶を適切に構築すること,記憶の再構築を援助し妄想的記憶を残さないことが重要であると考えられているが,さらなる研究が求められている。不快な記憶は長期に患者を苦しめることを理解し,ICUを退室した後も患者が体験を語れる機会を提供し,フォローアップをしていく必要がある。

  • 鈴木 武志
    2019 年 26 巻 4 号 p. 249-258
    発行日: 2019/07/01
    公開日: 2019/07/01
    ジャーナル フリー

    集中治療室の重症患者では,様々な原因により頻脈をきたすことが多い。交感神経の緊張に伴う頻脈は,生体に悪影響を及ぼすため,交感神経の過緊張をコントロールすることは重要である。心拍数のコントロール目的で使用されるβ遮断薬は,これまで心臓にリスクを抱えた非心臓手術患者や心臓外科手術患者,心筋梗塞や急性心不全を発症した患者に対して頻繁に投与され,その有効性が指摘されてきた。しかし,急性期重症患者の管理が進歩している中で,その有効性の是非について再度振り返る時期にきていると思われる。また,感染に伴う免疫異常と臓器障害が生じる敗血症においても,心機能障害が早期から進行していることが指摘され,敗血症に対するβ遮断薬投与の有効性が近年報告されている。本総説では,集中治療室においてβ遮断薬投与の対象となる病態を挙げ,それに対するβ遮断薬投与の効果や有効性について,最新の研究報告をもとに概説する。

症例報告
  • 麻喜 幹博, 山森 温, 増田 崇光, 三木 靖雄
    2019 年 26 巻 4 号 p. 259-263
    発行日: 2019/07/01
    公開日: 2019/07/01
    ジャーナル フリー

    症例は37歳,男性。幼少期に交通外傷により前頭葉壊死となり人格障害,症侯性てんかんで近医にて投薬を受けていた。搬送前日,数剤の抗てんかん薬を含む処方薬,約40日分を過量服薬し意識障害遷延のため翌日に当院へ救急搬送された。昏睡であり胃内容物吸引・挿管施行し,集中治療を開始した。第4病日の朝に全身痙攣と,多源性心室固有調律,心室頻拍を認めショック状態となった。直流通電や強心薬の投与開始で血圧は上昇したが,左室駆出率は30%,フェニトイン血中濃度は入院時の24.6μg/mLと比し40以上と高値を示し中毒の主体と考えた。その12時間後に再度ショック状態から難治性心停止となったため,veno arterial extracorporeal membrane oxygenation(VA-ECMO)を導入した。フェニトイン除去目的に活性炭による直接血液灌流法(direct hemoperfusion, DHP)も併用した。血中濃度が改善すると循環も安定し,第8病日にVA-ECMO離脱,後日抜管し独歩で退院となった。フェニトインによる心毒性が遅発性に出現しVA-ECMOを要し,DHPの効果も確認できた稀な症例であり報告する。

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