日本集中治療医学会雑誌
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23 巻, 3 号
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編集委員会より
今号のハイライト
原 著
  • 藤原 直樹, 制野 勇介, 八坂 有起, 関 裕美子
    2016 年23 巻3 号 p. 301-305
    発行日: 2016/05/01
    公開日: 2016/05/02
    ジャーナル フリー
    【目的】小児集中治療専従医配置による診療体制の変化と患者予後との関連を検討した。【方法】当院PICUは2010年度に小児集中治療専従医による診療が導入された。前後2年間の全入室患者を対象とし,後方視的コホート研究を施行した。【結果】前期520名,後期591名が対象となり,重症児集約化の傾向が増した後期の重症度スコア(pediatric index of mortality 2,PIM2)は有意に高かった(P<0.001)。多変量解析の結果,小児集中治療専従医の存在と低いPICU死亡率との間に有意な関連が認められた[OR 0.36(95%CI 0.15~0.89),P=0.026]。PICU入室期間の短縮および侵襲的人工呼吸管理日数の減少においても,小児集中治療専従医の存在が関与していた。【結論】小児集中治療専従医配置が患者予後を含む臨床的アウトカム改善に寄与した。
  • 武田 親宗, 美馬 裕之, 川上 大裕, 浅香 葉子, 朱 祐珍, 植田 浩司, 下薗 崇宏, 山崎 和夫
    2016 年23 巻3 号 p. 306-311
    発行日: 2016/05/01
    公開日: 2016/05/02
    ジャーナル フリー
    【目的】ICU再入室に関する危険因子を検討した。【方法】後方視的診療録調査で,2012~2013年にICUを退室した患者のうち,死亡退室,18歳未満の小児患者,データ不備を除いた,生存退室患者879例を対象とした。【結果】ICU再入室は36例であった。独立した再入室の危険因子[OR]は入室時のAPACHE IIスコア[1.11 per point]と輪状甲状間膜穿刺キット挿入[15.5]と主診療科(腹部外科[7.34],頭頸部外科[9.03],その他の外科[4.74])であった。25例が隣接するハイケアユニット(HCU)からの再入室で,再入室理由の18例が呼吸器系トラブルを理由としていた。【結論】入室時の重症度が高く,喀痰排出障害がある患者の再入室のリスクは高く,HCUなどワンステップおいた退室が妥当と考えられる。
症例報告
  • 川野 恭雅, 仲村 佳彦, 村井 映, 田中 潤一, 西田 武司, 水沼 真理子, 大田 大樹, 石倉 宏恭
    2016 年23 巻3 号 p. 313-317
    発行日: 2016/05/01
    公開日: 2016/05/02
    ジャーナル フリー
    二次性腎性尿崩症の治療の一つにインドメタシンがある。今回,我々は原因薬剤としてリチウムが疑われた腎性尿崩症に対し,高用量のインドメタシンが奏功した症例を経験したので報告する。症例は35歳の女性,双極性障害に対し17年間リチウムを服用していた。フェノバルビタールおよびクロルプロマジンの急性中毒のため当院へ搬送となった後,第2病日より450 ml/hrを超える多尿と血清Na値上昇を来し,バソプレシンに無反応であったため,二次性腎性尿崩症と診断した。病歴より原因薬剤としてリチウムが疑われ,治療としてインドメタシン150 mg/dayを投与したが効果がなかった。多尿に伴いcreatinine clearanceが亢進してインドメタシンの薬物血中濃度が低下している可能性を考慮し,インドメタシンを225 mg/dayまで増量したところ,尿量減少および血清Na値の低下を認めた。高用量のインドメタシンは二次性腎性尿崩症に対し,有効な治療法である可能性が示唆された。
  • 川出 健嗣, 清水 一好, 林 真雄, 谷 真規子, 鈴木 聡, 金澤 伴幸, 岩崎 達雄, 森松 博史
    2016 年23 巻3 号 p. 318-323
    発行日: 2016/05/01
    公開日: 2016/05/02
    ジャーナル フリー
    症例は29歳,男性。5年前に肺動脈性肺高血圧症(pulmonary arterial hypertension, PAH)を指摘されたが,内科的治療は行われていなかった。今回,胸痛を主訴に近医を受診し,造影CTにて肺動脈解離(pulmonary artery dissection, PAD)を指摘されたため,当院へ転院となった。当院入院後,緊急で主肺動脈人工血管置換術および左右肺動脈縫縮術が施行された。術後, PAHに対して早期に治療を開始した。未治療であったためPAHのコントロールに難渋したが,PAH治療薬の多剤併用および厳重な鎮静・挿管・人工呼吸管理を行うことで,POD 21に抜管,POD 29にICUを退室,POD 101に退院となった。PADは非常に致死率の高い疾患であるが,早期の手術および厳重な術後管理により救命できた。
  • 鈴木 光洋, 横田 泰佑, 五明 佐也香, 佐伯 辰彦, 上笹貫 俊郎, 速水 宏樹, 杉木 大輔, 池上 敬一
    2016 年23 巻3 号 p. 324-327
    発行日: 2016/05/01
    公開日: 2016/05/02
    ジャーナル フリー
    64歳,女性。既往歴:気管支拡張症。突然大量に喀血し,当センターへ搬送された。気管挿管を施行し,気管支鏡を施行,来院時喀血は止まっており経過観察とした。第3病日大量に喀血し酸素化不良となり,veno venous extracorporeal membrane oxygenation(VV-ECMO)を開始した。血管造影検査にて右気管支動脈より出血を認め,中心循環系血管内塞栓促進用補綴材(セレスキュー®,アステラス製薬)による血管塞栓術にて止血を行った。酸素化は改善せず,気道内よりoozingを認めた。このためECMO施行中の抗凝固療法には強い制限があった。気道内には血餅が充満しており,気管支鏡にて慎重に血餅除去を行いながら人工呼吸管理を行った。徐々に肺の含気が得られ第15病日よりhigh frequency oscillatory ventilation(HFOV)を開始した。第32病日にECMOから離脱した。第95病日にリハビリテーション目的に転院となった。本症例では出血のリスクが高く,ECMO施行中の抗凝固薬使用には強い制限があった。しかし,血栓性の合併症は回路の交換1回のみであり,安全にECMOから離脱することができた。
  • 赤川 玄樹, 小野 富士恵, 柏 健一郎, 木村 康宏, 七尾 大観, 藤本 潤一, 西澤 英雄
    2016 年23 巻3 号 p. 328-332
    発行日: 2016/05/01
    公開日: 2016/05/02
    ジャーナル フリー
    症例は17歳,女性。意識障害を主訴に当院受診。てんかん重積状態(status epilepticus, SE)の診断で入院となり,第2病日に呼吸管理目的にてICU入室となった。SEの原因は入院中の精査で全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus, SLE)と判明した。原疾患の治療を行いつつ,SEのコントロール目的に抗痙攣薬を開始したがコントロールがつかず,静脈麻酔薬による全身麻酔療法を開始した。それでもSEのコントロールに難渋したため,第10病日より吸入麻酔薬のイソフルランを併用した。その使用期間は38日間に及んだが,経過中イソフルランの使用に伴う重篤な合併症はみられず,比較的長期間安全に管理することができた。静脈麻酔薬による全身麻酔療法でSEのコントロールに難渋する場合には,吸入麻酔薬を併用することも選択肢の一つと考えられた。
短 報
レター
調査報告
  • 下河邊 美香, 星 拓男, 柏 旦美, 上田 昌代, 吉田 千賀子, 吉良 淳子
    2016 年23 巻3 号 p. 359-363
    発行日: 2016/05/01
    公開日: 2016/05/02
    ジャーナル フリー
    看護師および患者家族にアンケート調査を行い,家族看護に対する看護師の自らの意識と行動の満足度と看護を受ける家族の満足度ならびに実際の面会状況を調査した。看護師24人と58人の家族から回答を得た。家族へのサポートや情報提供に関しては看護師,家族ともに高い満足度であった。面会に関しては,看護師は面会時間や面会者の制限をあまり守れていないと感じているのに対し,家族の満足度は高い結果となった。家族の面会は規定時間よりも長く滞在していた。一方,患者の傍に家族が落ち着ける場所がないと患者家族は感じており,インターホンでの対応までの時間の長さや,1回の面会時間が短すぎるなどの意見も聞かれた。この結果から今後介入策を考え,スタッフに教育的な介入ができるようにしたい。
委員会報告
  • 日本集中治療医学会CCU委員会
    2016 年23 巻3 号 p. 365-369
    発行日: 2016/05/01
    公開日: 2016/05/02
    ジャーナル フリー
    日本集中治療医学会では「CCU設置のための指針」を策定し当学会ホームページ上で公表しているが,平成26年度の診療報酬改定により新設された特定集中治療室管理料1の請求を行うために,スタッフ(医師や臨床工学技士など)の確保や入室基準の見直しなどの対応が求められている。そこで今回,わが国のCCUの現状を把握するために,日本循環器学会循環器救急医療委員会のご協力のもと,循環器専門医研修指定施設(1,330施設)を対象として,CCUの現状に関するアンケート調査を実施した。アンケートでは特定集中治療室管理料の請求とともに,CCUを担当する医師の現状などについて調査した。CCU担当の循環器専門医の確保は進んでいるが,専任医師の確保とともに特定集中治療室管理料1の請求は多くの施設で困難であった。CCUの現状を考慮した施設基準の見直しや診療体制の改善が求められ,さらに循環器専門医と集中治療専門医の連携の重要性が認識された。
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