日本集中治療医学会雑誌
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5 巻, 4 号
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  • Non-Renal Indicationを目指して
    平澤 博之, 松田 兼一, 菅井 桂雄, 織田 成人
    1998 年 5 巻 4 号 p. 345-355
    発行日: 1998/10/01
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    Continuous renal replacement therapy (CRRT)として普及してきた持続的血液浄化法の中でも,持続的血液濾過透析(CHDF)は現在本邦においてICUなどで盛んに施行されている。CHDFによるサイトカインの除去を介して,腎不全以外の疾患に対してもCHDFの有効性を期待するという適応,すなわちnon-renal indicationに関しては未だ賛否両論がある。しかし我々の検討では,サイトカインのCHDFによるクリアランスはその血中濃度が高いほど良好であり,かつ血中濃度が高い症例においては,CHDFによりその血中濃度は有意に低下し,その結果臓器障害の程度は軽減した。またCHDFによるサイトカイン除去に関しては,CHDF本来の物質除去原理である拡散や濾過以外にヘモフィルター膜への吸着が重要な要素となっており,その意味からはpolymethyl methacrylate(PMMA)膜からなるヘモフィルターを用いるのが適当であると考えられた。
  • 特に高サイトカイン血症に対する適応に関して
    篠崎 正博, 中 敏夫, 森永 俊彦
    1998 年 5 巻 4 号 p. 357-363
    発行日: 1998/10/01
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    急性血液浄化法が高サイトカイン血症に対して有効かどうかについて述べる。
    持続血液濾過/持続血液濾過透析(CHF/CHDF)によるサイトカインのクリアランスは小さく,その除去率は生体内での代謝除去率にくらべわずかであり,その膜刺激はサイトカインを産生することなどから,CHF/CHDFはサイトカインの除去に関しては有用な方法ではない。CHF/CHDFによるクリアランスはほとんどが膜への吸着によるので,膜吸着を増加させるカラム血流量の増加および膜面積の増加はサイトカインを低下させるかもしれない。しかし,大孔径膜によるサイトカイン濾過を増加する試みも,血中のサイトカイン濃度を低下させない。また,CHF/CHDFは炎症性サイトカインのみを選択的に除去するのではなく,抗炎症性サイトカインも除去する。血漿交換(PE)およびポリミキシンB固定化カラム(PMX)による血液浄化法も血中サイトカイン濃度を低下することは証明されていない。CHF/CHDF,PE,PMXは高サイトカイン療法に有用ではなく,これらの有用性を証明するには,多施設の無作為対照臨床試験が必要である。
  • 山内 順子, 丸川 征四郎, 尾崎 孝平, 藤田 啓起
    1998 年 5 巻 4 号 p. 365-372
    発行日: 1998/10/01
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    体位呼吸療法(腹臥位,前傾側臥位)を併用した非侵襲的陽圧呼吸法(NIPPV)を急性呼吸不全症例に適用し,改善した6例(成功群)と,経過中に挿管を要した6例(不成功群)を比較し,本法における予後影響因子を検討した。両群間で治療開始時の重症度スコア,PaO2/FIO2最低値に有意差はなかったが,成功群のほうがより発症後早期であった。不成功群では有意に呼吸回数が多く,PaCO2が低く(高度過換気),代謝性アシドーシスが強かった。挿管を要した理由は主に呼吸筋疲労,敗血症ショック,咳嗽時のPaO2低下などであった。本法では呼吸疲労がないこと,意識清明で咳嗽が安全に行えること,下側肺障害があり体位依存性に肺酸素化能が改善することなどが前提であるが,さらに,(1)代謝性アシドーシスが進行性でない,(2)発症後早期(3日以内)で肺障害が極端に高度でない,(3)原病態が制御可能,(4)呼吸数が40min-1以下で過換気が高度でない(PaCO2>30mmHg)などの条件が予後の良否を決定する。
  • 瀧 健治, 能見 光雄, 片野 光男, 加藤 博之, 吉田 聖妙, 川渕 久司
    1998 年 5 巻 4 号 p. 373-377
    発行日: 1998/10/01
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    [目的]炭酸脱水酵素が内呼吸で産生されたCO2の細胞内量を制御して,細胞内pH(pHi)とCa(Ca++i)を調節していることを実証する目的で,培養細胞のpHiとCa++iを測定した。
    [方法]ヒト胃癌細胞株(MK-1細胞)をアセタゾラマイド(acetazolamide,AZ)の添加した培養液と無添加培養液で培養し,pH用蛍光色素(BCECF)とCa++用蛍光色素(fura2)で各々の単一細胞内pHとCa++をmicrospectro fluorometerで測定した。
    [結果]細胞外pH(pHe)が7.35~7.45の範囲でpHeに対するpHiとCa++iの回帰直線を比較検討すると,AZを添加して培養したときにpHiとCa++iはAZ無添加培養時より低くなっていた。
    [結論]AZの添加培養はpHiを下げ,Ca++の細胞内取り込みを低下させることが確認され,炭酸脱水酵素は細胞内CO2量を調節してpHiとCa++iを制御し,細胞機能を制御していることが示唆された。
  • 入部 玄太郎, 山田 晴彦, 松永 明, 吉村 望
    1998 年 5 巻 4 号 p. 379-384
    発行日: 1998/10/01
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    近年になって新しいフォスフォジエステラーゼ(PDE)阻害薬のオルプリノンが登場し,集中治療領域でも使用されるようになってきたが,その腹部臓器血流に及ぼす影響はわかっていない。今回我々はオルプリノンの腹部臓器血流に及ぼす影響を,予定開心術後患者11例の肝静脈血酸素飽和度の推移より検討した。
    術後,循環動態および体温の安定した後,オルプリノン0.3μg・kg-1・min-1を持続投与し,その前後で各種血行動態値および動脈血,混合静脈血,肝静脈血の血液ガス分析を行った。さらにFickの式より腹部臓器血流の変化率を算出した。その結果,オルプリノンは心拍出量を増加させ,肝静脈血酸素飽和度を上昇させた。また,算出された腹部臓器血流の増加率は心拍出量のそれより有意に大きく,オルプリノンの選択的な腹部臓器血流増加作用が示唆されたが,結論づけるためには今後対象群を設定した研究が必要である。
  • 寺尾 嘉彰, 橋本 茂, 中村 治正, 長谷場 純敬, 矢野 捷介, 澄川 耕二
    1998 年 5 巻 4 号 p. 385-388
    発行日: 1998/10/01
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    II型フォスフォリパーゼA2(PLA2)は敗血症時に活性化されるので,持続的血液濾過透析(CHDF)によるPLA2の除去について検討した。対象は当院集中治療部で敗血症性腎不全に対してCHDFを行った6症例である。CHDFはポリアクリルニトリル(PAN)膜を使用し,血流量60~100ml・min-1,濾過流量・透析液流量500ml・hr-1,補液流量350~500ml・hr-1とした。採血はCHDF開始前,開始12時間後,開始24時間後に行った。動脈血PLA2活性のCHDF開始後の変化は有意でなかった。24時間後には,脱血側のPLA2活性が,送血側よりも有意に高値であった。濾過からみたクリアランスは12時間後で0.09±0.06ml・min-1,24時間後で0.15±0.15ml・min-1であった。血液からみたクリアランスは12時間後で27±29ml・min-1であり,24時間後で23±12ml・min-1であった。CHDFによって血中のPLA2はある程度除去されると推測されたが,血中の活性値は有意な変化を認めなかった。PLA2除去を血液浄化法によって行うためには,さらなる研究が必要である。
  • 山崎 光章, 中丸 勝人, 鈴木 衛, 榊原 年宏, 湖東 慶樹, 伊藤 祐輔
    1998 年 5 巻 4 号 p. 389-393
    発行日: 1998/10/01
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    体外循環装置を用いた心臓手術患者32例を対象に,体外循環開始前,体外循環中,体外循環終了後およびICU在室第1,2病日における血管内連続ガス分析値と間欠的血液ガス分析値とのバイアス,プレシジョン,相関性について検討した。PHは,全測定相においてバイアス,プレシジョンとも±0.05以下であった。PaCO2は体外循環中および循環終了後はバイアス値が大きかったが,その他の相では±0.3以下であった。PaO2は,体外循環中および循環終了後はバイアス値がマイナスに大きかったが,その他の相では±3.4以下であった。血管内連続ガス分析装置による測定値はPaCO2の体外循環中以外では,間欠的血液ガス分析値とよく相関した。
  • 盛合 美光, 青木 英彦, 那須 雅孝, 鈴木 知己, 柴田 雅士, 椎名 祥隆, 川副 浩平, 平盛 勝彦
    1998 年 5 巻 4 号 p. 395-400
    発行日: 1998/10/01
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    症例は65歳の男性。就眠中に胸痛が出現し翌朝当科を受診した。収縮期血圧は90mmHg台と低下し,胸骨左縁第4肋間に全収縮期雑音と肺野に湿性ラ音を聴取した。心電図上II,III,aVFでST上昇があり,心エコー図検査で心室中隔穿孔を認めた。肺体血流比(Qp/Qs)は2.5,左右シャント率は62%であった。冠動脈造影では右冠動脈完全閉塞の一枝病変であった。大動脈内バルーンポンプを適用し,入室当日に心室中隔穿孔パッチ閉鎖術を行った。また術中所見で後乳頭筋部分断裂もあり,隣接の健常乳頭筋に腱索付き筋束を縫着した。術後第10病日に,さらに後乳頭筋の完全断裂をきたした。断裂部は初回手術でみた後乳頭筋束縫着部より根部であった。第11病日に僧帽弁形成術を行い,第39病日に退院した。心筋梗塞症に心室中隔穿孔と後乳頭筋完全断裂を合併した臨床例の報告は,調べ得た限り本邦では本例を含めて2例のみである。緊急手術による救命例は本例が初めてである。
  • 閉塞後長時間経過症例に対して
    市原 利彦, 石田 英樹, 朝倉 貞二, 酒井 喜正, 保浦 賢三
    1998 年 5 巻 4 号 p. 401-405
    発行日: 1998/10/01
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    急性下肢動脈閉塞症はその発症部位,発症からの時間により種々の病態を呈する。特に閉塞後長時間経過した症例は,閉塞動脈に再開通が得られても,myonephropathic metabolic syndrome (MNMS)を来し,しばしば致命的となる。著者らは急性閉塞後長時問経過した下肢動脈閉塞症の2症例に対し,下肢局所灌流法を施行した。1例は腹部大動脈瘤破裂の緊急手術後に発症した高位腹部大動脈閉塞,他例は右総腸骨完全閉塞の症例でいずれも発症から20時間以上経過し,細胞逸脱酵素,血清カリウムの上昇を術前より認めた。血行再建後に,下肢局所灌流法を施行した。1例は多臓器不全で失ったが,他例はMNMSを認めることなく救命,救肢できた。下肢局所灌流によってカリウム上昇,アシドーシスの進行は抑制されたので,急性動脈閉塞症の閉塞後長時間経過した症例に対して本法は有効であると考える。
  • 渡辺 博, 伊藤 洋, 沓名 理佳子, 三木 靖雄, 井上 保介, 野口 宏, 渡部 圭一朗, 小林 正
    1998 年 5 巻 4 号 p. 407-410
    発行日: 1998/10/01
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    大量メチルジゴキシン誤飲による急性中毒症例に対し,直接血液吸着法(DHP),血液透析(HD)および呼吸循環管理を集中治療室(ICU)で行い救命した。患者は46歳男性,薬物誤飲疑いにて来院。悪心,嘔吐,興奮状態に加え,心電図は完全房室ブロックであった。便の消臭薬をメチルジゴキシンと誤って誤飲(約50錠)したことが聴取され,急性大量ジゴキシン中毒と診断した。ICU入室時の血中ジゴキシン濃度は46.5ng・ml-1と高値であった。人工呼吸管理,ペースメーカなど循環管理を行う一方,DHPを開始,高K血症に対してはHDにて対処した。DHPはHDを挟んで5カラムを約20時間で施行(HDは約8時間施行)した。ICU入室後数時間で,血中ジゴキシン濃度は16.6ng・ml-1まで急速に低下した。急性大量ジゴキシン中毒では呼吸循環,高K血症対策に加え,血中ジゴキシン除去の補助手段として,早期のDHPが有効であると思われた。
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