日本集中治療医学会雑誌
Online ISSN : 1882-966X
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ISSN-L : 1340-7988
29 巻, 6 号
選択された号の論文の15件中1~15を表示しています
編集委員会より
今号のハイライト
症例報告
  • 濱田 郁子, 戸谷 和佳奈, 岩本 敏志, 沓澤 智子
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 29 巻 6 号 p. 575-579
    発行日: 2022/11/01
    公開日: 2022/11/01
    ジャーナル フリー

    陽・陰圧体外式人工呼吸器RTXレスピレータ(RTX®)のsecretion clearance mode (SCM)は,気道クリアランスの促進を目的とした設定である。SCMは胸腔内圧を変動させるため中枢の血行動態に影響する報告があるが,脳血流への影響は明らかではない。そこでSCMが脳血流に及ぼす影響を検討するために,近赤外分光法を用いて,SCM実施中の前頭葉の局所酸素飽和度(regional oxygen saturation, rSO2)を測定した。肺炎の改善を目的にSCM を実施した3症例において,SCM中のrSO2の変化量は,平均で-2.1~+5.1%で,rSO2の変化とMAP,SpO2,PaCO2とに一定の関係は認められなかった。この結果から,測定した3症例では,rSO2に異常な変化は認めなかったため,脳血流への影響は生じていないと考えられた。

  • 和田 健志郎, 岩元 悠輔, 中山 龍一, 柿崎 隆一郎, 文屋 尚史, 片山 洋一, 岸本 万寿実, 成松 英智
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 29 巻 6 号 p. 580-584
    発行日: 2022/11/01
    公開日: 2022/11/01
    ジャーナル フリー

    症例は58歳,男性。新型コロナウイルス感染症とARDSに対して人工呼吸,veno venous extracorporeal membrane oxygenation(VV-ECMO)管理となった。酸素化の改善が得られたものの,低コンプライアンスが改善せず,カテーテル関連血流感染の治療に難渋したため,来院第98病日に通常のVV-ECMOから透析用カテーテルと遠心ポンプを用いたextracorporeal CO2 removal(ECCO2R)に移行した。分時換気量の低下,食道内圧の変動の低下から,ECCO2Rによる二酸化炭素除去は呼吸努力を軽減し,肺保護換気戦略を可能にしたと考えられた。ECCO2Rは二酸化炭素の除去のみを目的とした体外循環であるが,本邦には専用のデバイスが存在しない。本症例では透析用カテーテルと遠心ポンプを併用した方法で安全に施行できた。また,ECCO2Rの適応は定まっていないが,長期ECMO後の離脱困難症例に対して有効な可能性がある。

  • 菅 敏晃, 坂口 高章, 數田 高生, 芳賀 大樹, 赤嶺 陽子, 山本 泰史, 大塚 康義, 宇城 敦司
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 29 巻 6 号 p. 585-589
    発行日: 2022/11/01
    公開日: 2022/11/01
    ジャーナル フリー

    小児心臓手術後の異所性接合部頻拍(junctional ectopic tachycardia, JET)は,しばしば治療に難渋する。症例は生後2か月の男児で, 無脾症と総肺静脈還流異常に対して総肺静脈還流異常修復術,共通房室弁形成術,肺動脈絞扼術を施行した。大動脈遮断解除後にJETが出現したため抗不整脈薬(アミオダロンとランジオロール)を開始し,PICU入室後は抗不整脈薬に加えて鎮静管理,電解質補正,体温管理,カテコラミン調整を行い,心房ペーシングによるオーバーペーシングも行った。しかし,JET rateの上昇に伴い,管理が困難となり循環動態が悪化した。これに対し,ペーシングモードをR波同期心房ペーシングに変更することで,心拍数の上昇を伴わずに房室同期を獲得することができ,循環動態のさらなる悪化を防ぐことができた。欧米では以前から報告されているペーシングモードであるが,本邦では一般的には行われておらず,難治性JETの管理におけるペーシングモードの選択肢の一つと考えられる。

短 報
レター
委員会報告
  • 日本版敗血症診療ガイドライン2020特別委員会アンケート調査班
    2022 年 29 巻 6 号 p. 609-619
    発行日: 2022/11/01
    公開日: 2022/11/01
    ジャーナル フリー

    日本版敗血症診療ガイドライン(The Japanese Clinical Practice Guidelines for Management of Sepsis and Septic Shock, J-SSCG)2020特別委員会は,J-SSCG2020の使用状況と認知度,および,今後の改善点を検討するために,オンラインアンケートを実施した。 J-SSCG2020を合同作成した日本集中治療医学会と日本救急医学会の2学会の会員には使用状況を調査するために最大22項目,J-SSCG2020を後援いただいた16学会の会員には認知度を調査するために最大10項目の質問を実施した。2学会会員を対象としたアンケートは450名より回答を得た。敗血症診療にJ-SSCG2020を参考にするとの回答は88%であった。敗血症患者の何%くらいでJ-SSCG2020に準じた診療が行われているかという質問には,75%程度であるとの回答が最多(54%)であった。J-SSCG2020で取り上げた22項目のうち特に遵守している項目に対する回答者数の割合は,3~62%と項目ごとに大きなばらつきがみられた。また,日本の敗血症診療におけるJ-SSCG2020の役割については,診療の標準化(87%),教育の向上(64%)の点で特に評価されていた。J-SSCG2016アンケート結果との比較では,J-SSCG2020 の方がより広く敗血症診療に利用されていた。16学会会員対象のアンケートは764名より回答を得た。J-SSCG2020の認知度は72%であった。認知している回答者のうち81%が敗血症診療に利用し,うち95%は役に立つとの回答であった。一方,J-SSCG2020の問題点としては,内容が多すぎるという意見が最多であった。日本医療機能評価機構EBM普及推進事業 (Minds)によるThe Appraisal of Guidelines for Research and Evaluation(AGREE Ⅱ)を用いた評価では,J-SSCG2020の全体評価は88%であった。以上から,集中治療医や救急医のみならず,一般臨床家を対象として幅広く敗血症診療を支援するというJ-SSCG2020の主要な目的はある程度達成されていることが示唆された。一方,領域や臨床疑問(clinical question, CQ)数の見直しなど今後の改訂に向けた課題も明らかになった。

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