日本版敗血症診療ガイドライン(The Japanese Clinical Practice Guidelines for Management of Sepsis and Septic Shock, J-SSCG)2020特別委員会は,J-SSCG2020の使用状況と認知度,および,今後の改善点を検討するために,オンラインアンケートを実施した。 J-SSCG2020を合同作成した日本集中治療医学会と日本救急医学会の2学会の会員には使用状況を調査するために最大22項目,J-SSCG2020を後援いただいた16学会の会員には認知度を調査するために最大10項目の質問を実施した。2学会会員を対象としたアンケートは450名より回答を得た。敗血症診療にJ-SSCG2020を参考にするとの回答は88%であった。敗血症患者の何%くらいでJ-SSCG2020に準じた診療が行われているかという質問には,75%程度であるとの回答が最多(54%)であった。J-SSCG2020で取り上げた22項目のうち特に遵守している項目に対する回答者数の割合は,3~62%と項目ごとに大きなばらつきがみられた。また,日本の敗血症診療におけるJ-SSCG2020の役割については,診療の標準化(87%),教育の向上(64%)の点で特に評価されていた。J-SSCG2016アンケート結果との比較では,J-SSCG2020 の方がより広く敗血症診療に利用されていた。16学会会員対象のアンケートは764名より回答を得た。J-SSCG2020の認知度は72%であった。認知している回答者のうち81%が敗血症診療に利用し,うち95%は役に立つとの回答であった。一方,J-SSCG2020の問題点としては,内容が多すぎるという意見が最多であった。日本医療機能評価機構EBM普及推進事業 (Minds)によるThe Appraisal of Guidelines for Research and Evaluation(AGREE Ⅱ)を用いた評価では,J-SSCG2020の全体評価は88%であった。以上から,集中治療医や救急医のみならず,一般臨床家を対象として幅広く敗血症診療を支援するというJ-SSCG2020の主要な目的はある程度達成されていることが示唆された。一方,領域や臨床疑問(clinical question, CQ)数の見直しなど今後の改訂に向けた課題も明らかになった。
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