Posterior reversible encephalopathy syndrome (PRES)は,頭痛,痙攣,視覚障害,意識障害などの神経症状と大脳半球後部の白質を中心とした病変を呈する疾患である。通常は可逆性の疾患であるが,治療が遅れると重篤な後遺症を残すことがある。患者は6歳の女児で血球貪食症候群と診断され,シクロスポリンAとプレドニゾロンが投与されていた。化学療法開始38日目に血圧上昇(135/95mmHg)と意識障害〔JCS (Japan coma scale): 200〕が出現し,眼球右方偏位と眼振を認め,呼吸状態も悪化し気管挿管した。頭部MRI検査でPRESと診断し,シクロスポリンAとステロイドの投与を中止して,ニフェジピンで降圧治療を行った。2日目には意識状態は改善し,4日目に気管チューブを抜管した。神経症状と画像所見は消失した。その後,血球貪食症候群が再燃し,化学療法を再開したが,塩酸ニカルジピンで降圧治療を行い,PRES再発を防いだ。著者らは,シクロスポリンと高血圧が原因で小児に発症したPRESを後遺症を残さず完治させることができた。
抄録全体を表示