日本集中治療医学会雑誌
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21 巻, 2 号
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今号のハイライト
総説
  • 青山 和由, 青山 紘子, 大島 正行
    2014 年 21 巻 2 号 p. 137-146
    発行日: 2014/03/01
    公開日: 2014/03/19
    ジャーナル フリー
    妊産婦死亡が未だ少なからず存在する。1人の妊産婦死亡あたり,9人の重症妊産婦が発生している。しかし,通常ICUで妊産婦が占める割合は約1.5%と比較的稀である。稀な症例に対応するには,頻度の高い疾患(妊娠高血圧症候群,産科出血,産科関連敗血症)を把握しておく必要がある。一般的に,集中治療を要する重症妊産婦において,これら3疾患がICU入室理由の70%近くを占める。また,妊娠に伴う生理学的変化は,多臓器にわたって予備力を小さくし,非妊娠時に比べより重篤な状態に陥りやすくする。上記3疾患と生理学的変化の関連を理解することは,病態の把握に重要となる。そして,生理学的予備力の減少は胎児をも容易に危機的状況へと曝してしまう。集中治療医が重症妊産婦および胎児の予後改善に貢献するには,重症妊産婦の疫学と特有疾患を知り,妊娠に伴う多臓器の生理学的変化を把握し,胎児危機に陥る病態を早期に認識することである。
解説
  • 原田 大, 内野 滋彦, 瀧浪 將典
    2014 年 21 巻 2 号 p. 147-154
    発行日: 2014/03/01
    公開日: 2014/03/19
    ジャーナル フリー
    ICUでは一般病棟以上に積極的なチーム医療活動が必要不可欠であり,その一員を担う薬剤師の役割も重要となっている。また厚生労働省も,薬剤師は医薬品の管理責任者としてのみならず,処方内容を含めた治療計画への積極的な関与を行うよう指針を発表している。このような背景より,現在報告されている文献から情報収集し,ICUに薬剤師を常駐させる必要性について考察した。ICUにおける薬剤師の介入によって,医療費削減,薬剤関連エラーの減少,死亡率の減少などの効果が多くの文献において報告されており,薬剤師は医療経済への貢献だけでなく,安全な医療の提供や患者転帰にも大きな影響を与える可能性が示唆された。本邦においても,ICUに薬剤師を常駐させ,日々の診療に積極的に介入を行えば,その臨床的意義は大きいと考えられる。
原著
  • 松田 兼一, 平澤 博之, 織田 成人, 浅井 康文, 石坂 彰敏, 遠藤 重厚, 小谷 穣治, 坂本 照夫, 志馬 伸朗, 丹正 勝久, ...
    2014 年 21 巻 2 号 p. 155-163
    発行日: 2014/03/01
    公開日: 2014/03/19
    ジャーナル フリー
    エイコサペンタエン酸,γリノレン酸及び抗酸化物質を強化した免疫調節経腸栄養剤(immuno-modulating enteral diet, IMD)の日本人に対する有用性を検討した。10施設で人工呼吸管理が必要な重症敗血症/敗血症性ショック70症例を対象とし,割付封筒法にてIMD投与群と既存の経腸栄養剤投与群に分けた。これら両群で肺酸素化能及び臓器障害の変化,抗炎症作用,凝固系への影響,人工呼吸器装着日数及びICU入室日数の減少,救命率の向上等につき比較検討した。その結果,IMD投与群において14日目のC-reactive protein血中濃度の有意な減少が確認された。また,IMD投与群において4日目及び7日目のprothrombin time international normalized ratioの有意な延長を認めた。日本人に対する本IMDの有用性を確認するためには,より大規模な臨床試験が行われる必要がある。
症例報告
  • 堀 耕太郎, 竹田 健太, 井手 岳, 西 信一
    2014 年 21 巻 2 号 p. 165-168
    発行日: 2014/03/01
    公開日: 2014/03/19
    ジャーナル フリー
    ピルビン酸脱水素酵素複合体はエネルギー産生において非常に重要な酵素であり,その異常により高乳酸血症を呈する。今回,ピルビン酸脱水素酵素複合体異常症の難治性乳酸アシドーシスに対して,急性血液浄化が有用であった1例を経験したので報告する。症例は3歳,女児。入院時,原疾患の急性増悪による高度の乳酸アシドーシスのため意識障害を来しており,ただちに持続血液透析を導入した。しかし血液浄化導入後もアシドーシス改善がすぐにはみられなかったため,透析液流量を増量して対応したところ,改善傾向を認めた。高度の乳酸アシドーシスから回復した後は血液浄化からも離脱できたが,今回の病態の影響と思われる脳障害を認め意識回復はみられなかった。本症例の経過から透析液流量増量による急性血液浄化が難治性乳酸アシドーシス改善に有用である可能性が示唆された。血液浄化の際には,各症例の病態に応じた最適な操作条件を常に検討すべきである。
  • Osamu Ogawa, Yutaka Tsubata, Junya Ajiro, Takashi Ishida, Kyuma Ota, T ...
    2014 年 21 巻 2 号 p. 169-171
    発行日: 2014/03/01
    公開日: 2014/03/19
    ジャーナル フリー
    A 50-year-old man with acute amphetamine intoxication was admitted to the ICU. Fourteen days following admission, the patient showed respiratory distress with diffuse pulmonary infiltration. A diagnosis of alveolar hemorrhage was made from bloody fluid collected by bronchoalveolar lavage. He recovered fully following 5-day administration of methylpredonisolone. Although there are many reports about vascular complications associated with amphetamine abuse, this may be the first case report about acute amphetamine intoxication complicated with alveolar hemorrhage. This report contains several discussions about possible vasculopathy associated with amphetamine intoxication.
短報
調査報告
  • 齋藤 敬太, 安井 豊, 内野 滋彦, 遠藤 新大, 岩井 健一, 鹿瀬 陽一, 讃井 將満, 瀧浪 將典
    2014 年 21 巻 2 号 p. 195-198
    発行日: 2014/03/01
    公開日: 2014/03/19
    ジャーナル フリー
    【目的】ICU専従医配置による集中治療体制の変化が患者予後に与える影響について検討した。【方法】2005年4月から2008年9月の間でICUに2日以上在室した18歳以上の患者を対象とし,患者情報をICUデータベースより抽出した。患者は専従医の有無により,2007年1月を境としてPeriod 1,Period 2に分類した。【結果】Period 1では512名,Period 2では563名が対象となり,多変量解析の結果,Period 2における病院死亡率は有意に低かった(オッズ比0.62,P=0.040)。【結論】ICU専従医の配置が患者予後の改善に貢献した可能性がある。
  • 木下 里美, 藤澤 大介, 中島 聡美, 伊藤 正哉, 宮下 光令
    2014 年 21 巻 2 号 p. 199-203
    発行日: 2014/03/01
    公開日: 2014/03/19
    ジャーナル フリー
    40~79歳の一般市民への質問紙調査から,救急外来とICUで過去10年以内に死別を体験した家族の複雑性悲嘆の有病率を「簡易版悲嘆質問票(brief grief questionnaire, BGQ)」で評価し,一般病棟と比較した。救急外来49名,ICU 156名,一般病棟432名を分析した結果,複雑性悲嘆は,救急外来3名(6%),ICU 5名(3%),一般病棟10名(2%),閾値下レベルの複雑性悲嘆は,救急外来11名(22%),ICU 37名(24%),一般病棟99名(23%)で,統計的な有意差はなかった。死別者の主要疾患,死の予測の有無において,救急外来,ICUともに,有意差があったが,これらは有病率に影響を与えていなかったことが推察された。
委員会報告
  • 日本集中治療医学会集中治療の労働力調査プロジェクトワーキンググループ, 日本集中治療医学会専門医制度委員会
    2014 年 21 巻 2 号 p. 205-212
    発行日: 2014/03/01
    公開日: 2014/03/19
    ジャーナル フリー
    【目的】集中治療専門医試験受験者において合否と関連ある要因を探索する。【方法】専門医試験(2008~2012年)の343人の出願書類から,受験者の合否・性別・年齢・所属(施設と部門)・他学会の専門医資格・研修分野と期間の情報を収集し,多重ロジスティック回帰分析により合否に関連する要因を探索した。【結果】試験合格率は90.2%で,合格者は男性91.8%,平均39.2(SD 6.2)歳,大学病院勤務53.8%,所属(集中治療27.1%,麻酔31.0%,救急32.3%),麻酔専門医43.0%,平均研修期間5.2年(集中治療1.9年,麻酔1.0年,救急2.0年)であった。合格オッズは研修した分野(集中治療・麻酔・救急)やその期間とは関連していなかった。外科系研修期間(OR=0.08,P=0.01)と外科系専門医資格(OR=0.12,P<0.01)は合格を遠ざける有意な因子であった。
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