日本集中治療医学会雑誌
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29 巻, 5 号
選択された号の論文の20件中1~20を表示しています
編集委員会より
提 言
  • 日本集中治療医学会理事会, 日本集中治療医学会集中治療部設置指針改訂タスクフォース
    2022 年 29 巻 5 号 p. 467-484
    発行日: 2022/09/01
    公開日: 2023/02/17
    ジャーナル フリー
  • 日本集中治療医学会理事会, 日本集中治療医学会レジリエンスの高い医療提供体制構築タスクフォース
    2022 年 29 巻 5 号 p. 485-492
    発行日: 2022/09/01
    公開日: 2023/02/17
    ジャーナル フリー

    我が国の集中治療医療提供体制を強靭化するために,以下の6つの項目について提言する。①有事の際に速やかに集中治療医療提供体制を確立できるように,診療報酬や人員配置の取り決めを事前に計画し,ICU使用状況のモニタリングデータに基づいた集中治療医療提供体制の弾力的な運用を行う。それには国家・行政による的確かつ迅速な対応と専門家との連携が必須である。②国家の危機管理として,集中治療医療の担い手の分布および整備の実態を把握することは,極めて重要であり,集中治療科を診療科として認め,政府による医療施設調査の対象科とすべきである。③平時より質の高い集中治療医療を提供し,有事における医療崩壊を防ぐためには,集中治療科専門医を国が認める専門医として計画的に養成することが重要である。また,いざという時の予備役として,平時には一般診療科医として働きながらも,一定レベルの人工呼吸管理などを含む重症患者管理を行うことができる医師を養成するシステム(認定制度など)の確立が必要である。④看護師および臨床工学技士の育成・認定プログラムを制定し,急激な集中治療医療の需要増加に備えるべきである。⑤集中治療科医による集中治療医療提供を効率的に行うため,平時より広域集中治療搬送システムとIT技術を駆使した遠隔ICUによる診療支援を推進する。⑥集中治療医療は,救急・周術期管理・重症病態の管理など守備範囲が広く,集中治療医療提供体制の充実と維持は,医療提供体制全般に関わる問題である。「集中治療医療対策室」を独立した組織として厚生労働省内に設置し,集中治療医療提供体制を充実させるための,ハコ・ヒト・モノに関わる様々な問題に対応し,計画的な整備を行っていく必要がある。

今号のハイライト
総 説
  • 對東 俊介
    原稿種別: 総説
    2022 年 29 巻 5 号 p. 503-509
    発行日: 2022/09/01
    公開日: 2022/09/01
    ジャーナル フリー

    重症患者に対するリハビリテーションの目的は,日常生活活動(activities of daily living, ADL)を維持,改善,再獲得することで,QOLを改善することである。重症患者に対するリハビリテーションはABCDEFバンドルの一つの要素として捉え,集中治療後症候群ost-intensive care syndrome, PICS)予防のために包括的な介入を行うべきである。重症患者においてリハビリテーションは死亡を改善しないが,身体機能やADLを改善するため,国内外のガイドラインで実施が推奨されている。近年はPICS予防のためのICU入室中のリハビリテーションだけでなく,ICU退室後のリハビリテーションやフォローアップが注目されている。臨床現場で遭遇する様々な障害や疾患に対するICU内およびICU退院後のリハビリテーションの最適な量,頻度,強度,期間,および種類を明らかにするために,さらなる研究が必要である。

  • 板垣 大雅, 大藤 純
    原稿種別: 総説
    2022 年 29 巻 5 号 p. 510-517
    発行日: 2022/09/01
    公開日: 2022/09/01
    ジャーナル フリー

    人工呼吸は肺のみならず横隔膜を傷害し,横隔膜機能障害は不良な転帰に関係する。 人工呼吸による横隔膜傷害の機序には,①過剰な補助による低活動,②不十分な補助による過剰活動,③呼気相における奇異性収縮,④高い呼気終末陽圧の急激な減量,が挙げられる。 人工呼吸中の横隔膜傷害を予防するためには,適切なレベルの横隔膜活動を維持することが重要であり,吸気努力のモニタリングと注意深い人工呼吸器設定,患者-人工呼吸器非同調の回避がこれを可能にする。敗血症などの重症病態は横隔膜傷害を加速させるため,横隔膜保護を意識した人工呼吸戦略はICU患者の予後改善のために考慮されるべきである。本稿では,横隔膜の基礎知識,人工呼吸に関連した横隔膜機能障害の臨床エビデンスと発生機序,横隔膜保護戦略の要点を概説する。

症例報告
  • 坂口 高章, 數田 高生, 管 敏晃, 大場 彦明, 芳賀 大樹, 赤嶺 陽子, 大塚 康義, 宇城 敦司
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 29 巻 5 号 p. 519-522
    発行日: 2022/09/01
    公開日: 2022/09/01
    ジャーナル フリー

    乳児ボツリヌス症はボツリヌス菌の毒素により全身の神経麻痺を呈する疾患である。 脳神経麻痺や呼吸障害など頭蓋内疾患と似た症状を呈し,遭遇機会も少なく重症例や非典型例では見逃されている可能性がある。症例は7か月女児,発熱と活気不良を主訴に当院に紹介された。来院時より刺激にほぼ反応がない昏睡様症状を認め,無呼吸が頻発した。脳波上の徐波とノロウイルス抗原検査が陽性であったため,当初は急性脳症と診断しステロイド短期大量療法を含む神経集中治療を行ったが,鎮静薬中止後も脳神経麻痺や昏睡様症状が遷延した。頭部MRIや髄液検査は異常なく,脳波検査では日内変動や刺激への反応を認めたため,神経筋接合部疾患を鑑別に挙げた。マウス試験で血液・便からボツリヌス毒素が検出され,乳児ボツリヌス症と診断した。気管切開術を実施し,約1か月後に人工呼吸器を離脱した。原因不明の脳神経麻痺や昏睡様症状を呈す乳児では常に本疾患を鑑別すべきである。

  • 花見 洋太朗, 芦名 一茂, 菅 健敬, 滝田 順子, 松本 和久, 中島 大輔, 伊達 洋至, 大島 洋平
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 29 巻 5 号 p. 523-527
    発行日: 2022/09/01
    公開日: 2022/09/01
    ジャーナル フリー

    ICU-acquired weakness(ICU-AW)は重症患者に発症する急性びまん性の筋力低下の総称であり,critical illness polyneuropathy(CIP)やcritical illness myopathy(CIM)を包括した概念である。今回,重症呼吸不全の6歳児に対して肺移植を施行したが,多数のリスク因子が重なり術後にMedical Research Council(MRC)score 0点の極端なICU-AWを呈した。胸部CT検査で脊柱起立筋の筋断面積が維持されていたことから,ICU-AWの原因としてCIPを疑った。また,呼吸状態が不安定でリハビリテーションが進まず,脊柱起立筋の筋量に変化を認めない中でも筋力低下の順調な改善を認め,CIPを裏付ける臨床経過であった。CIMが数週〜月単位で回復するのに対して,CIPは年単位で障害を残すこともあり,長期予後を考える上で鑑別が重要である。CT検査を含めた画像検査は,重症小児におけるICU-AWの診断の一助となるだけでなく,病態の鑑別に有用な可能性がある。

  • 玉井 謙次, 真弓 健吾, 木村 慎一, 高橋 宏行
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 29 巻 5 号 p. 528-532
    発行日: 2022/09/01
    公開日: 2022/09/01
    ジャーナル フリー

    症例は58歳女性。発熱・感冒症状・呼吸困難を主訴に近医を受診し,抗菌薬投与が開始されたが,血痰が出現したため当院へ搬送された。N末端プロ脳性ナトリウム利尿ペプチド(N-terminal pro-brain natriuretic peptide, NT-proBNP)は上昇していたが,経胸壁心臓超音波検査での逆流所見はなく,胸部X線検査では右側優位の浸潤影であることから,うっ血性心不全は否定的と考え,プロカルシトニン(procalcitonin, PCT)の上昇から肺炎と診断し,挿管と抗菌薬治療を行った。入室3〜4日目にはNT-proBNPおよびPCTは低下したが,酸素化は改善しなかった。入室7日目にNT-proBNPの再上昇と血痰の持続から,心不全とびまん性肺胞出血を疑った。入室15日目の経食道心臓超音波検査で腱索断裂を伴う僧帽弁逸脱症と診断し,入室26日目に僧帽弁形成術を施行した。急性僧帽弁逆流症では片側性肺水腫と血痰を呈することがあり,肺炎と誤診しやすいため注意が必要である。

  • 潮見 祐樹, 青木 一憲, 黒澤 寛史
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 29 巻 5 号 p. 533-537
    発行日: 2022/09/01
    公開日: 2022/09/01
    ジャーナル フリー

    早期乳児の百日咳は重症化し体外式膜型人工肺(extracorporeal membrane oxygenation, ECMO)管理を要することがあり,死亡リスクが高い。また,ECMO管理中に血栓傾向を来たした場合には迅速な対応と原因検索が重要となる。症例は日齢46,男児。百日咳による無呼吸,呼吸不全,低酸素血症で当院に搬送され,ECMO管理を行うも,入院当初から逸脱酵素上昇と遊離ヘモグロビン,破砕赤血球を検出し,溶血と血栓傾向があると考えた。 ECMOの脱血管位置調整,回路交換でも溶血と血栓傾向は改善しなかった。血栓性微小血管症(thrombotic microangiopathy, TMA)の鑑別診断を進め,二次性TMAと判断した。集学的治療にもかかわらず患者は死亡した。早期乳児の百日咳でECMO管理を要した場合の血栓傾向では,二次性TMAも含め原因検索と早急な対応が重要である。

短 報
調査報告
  • 坂本 佳津子, 制野 勇介, 細川 つばさ, 植野 杏樹, 前田 佳子, 越後 尚子, 黒澤 寛史
    原稿種別: 調査報告
    2022 年 29 巻 5 号 p. 555-558
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/01
    [早期公開] 公開日: 2022/03/02
    ジャーナル フリー
    新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行に伴い,当院PICUでは面会制限と,その対策として遠隔面会を実施した。この影響について質問紙調査を実施し,PICU看護師60名中40名(回収率67%),患者家族51名中25名(回収率49%)から回答を得た。約90%の回答者が面会制限を肯定的に捉えていたが,家族は子どもと会えない不安を,看護師は看護ケアの不十分さを感じていた。遠隔面会は,視覚情報が得られたことや,普段は行えない両親以外の面会ができたことなどから有用であった。一方で,視覚情報の提示だけでは家族の不安軽減には不十分であり,さらなる工夫が必要と考えられた。
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